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2024.07.10
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ニュージーランド中銀はタカ派姿勢を後退、NZドル相場の行方は
~「タカ派」堅持のオーストラリアと対照的、先行きのNZドルの対日本円相場は方向感の乏しい展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド中銀は10日の定例会合において政策金利を8会合連続で5.50%に据え置いた。足下のインフレ率は依然中銀目標を上回る推移が続くが、中銀は足下の抑制的な政策スタンスがインフレ鈍化に繋がっていることを好感するとともに、年後半には目標域に回帰するとの見通しを示している。その上で、先行きの政策運営を巡って「抑制度合いは時間を掛けて緩和される」として、5月の前回会合ではより長期に亘って抑制的なスタンスを維持するとした考えからタカ派姿勢を後退させた。高金利通貨として注目を集めるオセアニア通貨を巡ってオーストラリアがタカ派姿勢を堅持しており、NZドルと豪ドルの力関係に差が生じることは避けられない。日本円に対しては大きく強含みする展開が続いたがその勢いの変化は避けられない一方、先行きは日銀の「次の手」も見出せないなかで方向感の乏しい動きが続く可能性も予想される。
ニュージーランドにおいては過去3年以上に亘ってインフレ率が中銀目標を上回る推移が続いている。コロナ禍一巡による経済活動の活発化に加え、商品高や国際金融市場における米ドル高を反映した通貨NZドル安に伴う輸入インフレの動きが重なりインフレが上振れしたため、中銀は物価と為替の安定を目的に累計525bpもの利上げを迫られた。昨年以降のインフレは頭打ちの動きを強めるも依然高止まりしており、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる懸念が高まっている。事実、昨年後半の同国経済は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど急ブレーキが掛かり、今年1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.71%と3四半期ぶりのプラス成長に転じたものの、中期的な基調を示す前年同期比の成長率も+0.3%とゼロ近傍に留まるなど力強さを欠く推移が続く。そして、直近1-3月のインフレ率も前年同期比+4.0%、コアインフレ率も同+4.1%とともに中銀目標(1~3%)を上回る推移が続いている。足下では食料品やエネルギーなど生活必需品のみならず、非貿易財やサービス物価に上昇圧力がくすぶるなどインフレの粘着度の高さを示唆する動きが確認されている。こうしたなか、中銀は10日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利(OCR)を8会合連続で5.50%に据え置く決定を行っている。会合後に公表した声明文では、物価動向について「抑制的な政策がインフレの著しい低下を招いており、年後半にはインフレ率が目標域に回帰すると期待される」との見通しを示した上で、足下の物価動向について「国内における物価上昇圧力の後退と輸入インフレ圧力の後退、労働市場のひっ迫度合いの後退」を挙げている。他方、「政府支出の抑制は経済活動の足かせとなる一方、減税が民間消費に与える影響は不確実」とした上で、「国内要因に伴うインフレ圧力は依然として根強い」としつつ「供給制約や企業部門による価格決定行動の変化によるインフレの粘着度に後退の兆しがみられる」と改善を期待する向きもみられる。その上で、現時点においては「引き続き抑制的なスタンスを維持することが必要」としつつ、先行きについて「抑制度合いについては予想されるインフレ圧力の低下に合わせて時間を掛けて緩和される」しており、5月の前回会合では「より長期に亘って抑制的な水準に維持する必要がある」との認識を共有したことと比べてタカ派姿勢が後退していると捉えられる(注1)。さらに、同時に公表された議事要旨でも、一部の政策委員が「短期的には内生的なインフレ圧力が高まるリスクに注意を払う必要がある」と提起する動きをみせる一方、「適切なスタンスについて議論するなかで足下のスタンスが需要を抑制しているとの確信は変わらず、継続的なインフレ鈍化を下支えする」との認識が共有された模様である。よって、上述のように中銀は5月時点では長期に亘って抑制的なスタンスを維持する可能性に言及していたものの、今回は一転して利下げ時期の前倒しなどタカ派姿勢の後退を示唆する動きをみせている。このところの同国と隣国オーストラリアの通貨(オセアニア通貨)を巡っては、いわゆる『高金利通貨』として注目を集めてきたが、オーストラリア中銀は先月の定例会合後に同行のブロック総裁が利上げ検討に言及するなどタカ派姿勢を強調する一方(注2)、今回ニュージーランド中銀がタカ派姿勢の後退を示唆する動きをみせたことにより、両通貨を巡る綱引きの動きに変化が生じることは避けられない。他方、足下では米FRB(連邦準備制度理事会)によるタカ派姿勢後退が意識されるなかで米ドル高の動きに一服感が出ているものの、中銀のタカ派姿勢後退を反映してNZドルの上値が抑えられることも予想される。そして、日本円に対しては政策スタンスの違いが上昇ペースの加速を招いてきたことを勘案すれば、その勢いに陰りが出ることは間違いない一方、その後は日本銀行による『次の手』が見通せない状況が続くなかで方向感を見出しにくい展開となることも考えられる。


注1 5月22日付レポート「ニュージーランド中銀、タカ派姿勢強調でNZドル相場はどうなる」
注2 6月18日付レポート「オーストラリア中銀はタカ派姿勢堅持、豪ドルの底堅さを促すか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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