FRBは8会合連続で据え置きも9月利下げ視野 (24年7月30、31日FOMC)

~FRBは労働市場悪化への警戒をより強め利下げに前向きに~

桂畑 誠治

目次

8会合連続で政策金利を5.25~5.50%に据え置きもFRB議長は9月利下げの可能性を示す

24年7月30、31日に開催されたFOMCで、FRBは予想通り政策金利であるFFレート誘導目標レンジを5.25~5.50%に8会合連続で据え置くことを全会一致で決定した。また、バランスシートの縮小を継続する方針が示された。

声明文では、経済の堅調が続くもと、雇用やインフレの若干の鈍化によって、リスクバランスの改善が続いたとの判断が示された。経済の堅調が持続していること、インフレが目標を依然上回っており、まだインフレ目標への低下に向けての確信を持てないことを理由に、FRBは政策金利の据え置きを決定した。

声明文、パウエル議長の記者会見では、ここ数か月のインフレ低下を評価したうえで、労働市場逼迫の大幅な緩和が指摘された。パウエル議長の記者会見では、9月の利下げの可能性が指摘されるなど、早期利下げが視野に入っていることが示された。

景気判断が維持されたものの、雇用判断、インフレ判断は下方修正

FOMC声明文で、景気判断は変更されなかった一方、雇用判断、インフレ判断が下方修正された。景気判断は、前回同様「経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」と経済は堅調との見方が維持された。

一方、雇用情勢について声明文では、今回「雇用の伸びは穏やかとなり、失業率は上昇したが低いまま」と前回「雇用は依然として堅調、失業率は低いまま」から、雇用判断を引き下げた。パウエル議長は「広範な指標は、労働市場が堅調なものの過度に過熱していないことを示している」と調整が進展し、過熱感が大幅に弱まったとの見方を示した。

インフレについて声明文では、今回「インフレは過去1年で低下したが、依然としてやや高止まりしている」と前回「インフレは過去1年で低下したが、依然として高止まりしている」から下方修正されたが、インフレが依然やや高いとの認識を示した。そのうえで、今回「ここ数カ月間、委員会の2%のインフレ目標に向けての一定の更なる進展がみられた」と前回「ここ数カ月間、委員会の2%のインフレ目標に向けての緩やかな更なる進展がみられた」からインフレ判断が下方修正された。4、5、6月にインフレの上昇モメンタムが弱まったことが評価された。ただし、パウエル議長は「インフレに関して着実な進展があり、2%への道筋への自信が高まっている」と評価したものの、「一段の確信を得るために、良好なデータがさらに必要」と現時点では不十分との見方を示した。

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FRBの目標達成に向けたリスクは良いバランスに移行も、雇用悪化のリスクを注視

リスクについて声明文で、今回「委員会は、雇用とインフレの目標達成に対するリスクが引き続きより良いバランスへ移行していると判断している」と前回「委員会は、雇用とインフレの目標達成に対するリスクが過去1年間でバランスが改善されたと判断している」とリスクバランス改善の動きが継続しているとの判断を示した。同様に、FRB議長は、「労働市場の鎮静化に伴い、インフレ率は低下し、リスクは引き続きより良いバランスに移行している」と労働市場の逼迫が大幅に緩和したことを強調した。

そして、声明文で今回「経済見通しは不確かであり、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」と前回「経済見通しは不確かであり、委員会は引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている」とこれまでのインフレリスク一辺倒から、インフレに加えて、労働市場悪化のリスクも注視し始めたことを示した。FRB議長は「雇用の責務の下方リスクは今や現実的」と労働市場悪化への警戒感を強めていることを強調した。

FRBのスタンスに関する声明文は変更されなかったが、議長は9月利下げの可能性を指摘

FRBの金融政策スタンスを示すFOMC声明文は、前回同様「FF金利の目標レンジの調整を検討する際、委員会は今後のデータ、今後の見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」と上下どちらも含む「調整」との文言が維持された。そのうえで、声明文で前回同様「委員会はインフレが持続的に2%に向かっているとの確信を深めるまでは、目標レンジの引き下げが適切ではないと考えている」と利下げの条件を維持した。

もっとも、パウエルFRB議長は、「インフレに関して着実な進展があり、2%への道筋への自信が高まっている」との見解を示し、「インフレが急速に低下、あるいは予想通りに推移し、成長が適度に堅調で労働市場が現状と一致すれば、9月に利下げが検討される可能性がある」と景気、雇用、インフレが現在のような状態を維持すれば、9月に利下げが決定される可能性があることを示した。ただし、50bpの利下げに関しての質問については、「現時点で考えていない」と急激な労働市場の悪化による大幅利下げは想定していないことを指摘した。

バランスシートの縮小継続

バランスシートの縮小は継続する。6月1日から保有証券の圧縮は月間上限額600億ドル(950億ドル)に減額された。米国債の上限額を250億ドル(600億ドル)に減額した。一方、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限額は350億ドルに維持したうえ、これを上回る額を国債に再投資する。

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FF先物市場は9月FOMCでの50bp利下げの織り込みを強めた

金融市場では、声明文発表直後は、金利は上昇し、ドルが主要通貨に対して強含んだ。しかし、パウエル議長のハト派的な発言を受け、市場金利は低下し、ドルは主要通貨に対して弱含んだ。株価は水準を切り上げた後、下落したが、前日終値から上昇して取引を終えた。

FF金利先物市場では、9月FOMCでの25bpの利下げが完全に織り込まれている。9月FOMCで50bpの利下げの可能性が19.8%(前日13.2%)に上昇した。さらに、12月のFOMCまでに100bpの利下げの可能性は52.7%(前日43.8%)と上昇した。

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FRBは9、12月にそれぞれ25bpの利下げを実施すると予想

今後のFRBの金融政策についてみると、FRBは目先政策金利の据え置きを継続するが、PCEコアデフレーターが財価格の下落やサービスコアの緩やかな伸び鈍化により、前年比+2%に向けて緩やかに低下するとみられ、実質FF金利の上昇による景気下振れリスクへの警戒が徐々に強まろう。

また、6月のFOMC参加者の経済・金利予測で示されたPCEコアデフレーターの予測値は24年10-12月期前年比+2.8%、失業率の予測値は4.0%となっているが、6月のPCEコアデフレーターは前年比+2.6%と予測を下回っているほか、失業率は6月4.1%と予測を上回っている。今後、景気が減速するなかで、PCEコアデフレーターは前年比+2.6%程度で推移するほか、失業率は上昇する可能性がある。このような環境のもと、FRBは9月のFOMCで漸進的な利下げを開始、12月に25bpの追加利下げを実施するとの予想を維持する。

【参考】FOMC参加者による経済・金利予測(24年6月)

FOMC参加者の最新の経済・金利予測で、24年は潜在成長率を上回る成長が続き、失業率が自然失業率を下回るなかで、コアインフレ率が低下しないと見込んでいる。それでも、24年に1回の利下げが適切と予想している。25年以降は、インフレの低下に合わせて、25年4回、26年4回の利下げが適切とFOMC参加者は予想した。

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FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は24年+2.1%(前回+2.1%)、25年+2.0%(前回+2.0%)、26年+2.0%(前回+2.0%)と前回と変わらず、潜在成長率を上回る成長が続くと予想されている。

失業率予測(10-12月期の平均値)は、24年4.0%と前回4.0%から変わらず。25年4.2%(前回4.1%)、26年4.1%(前回4.0%)と小幅上方シフトしたが、労働市場が良好な状況を維持すると予想されている。

インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)は、PCEデフレーターが24年+2.6%(前回+2.4%)、25年+2.3%(前回+2.2%)と上方シフトした。26年+2.0%(前回+2.0%)と変わらず。また、PCEコアデフレーターは24年+2.8%(前回+2.6%)、25年+2.3%(前回+2.2%)と上方シフトした。26年+2.0%(前回+2.0%)と変わらずとなった。

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、24年5.125%(前回4.625%)、25年4.125%(前回3.875%)と上方シフトした。26年は3.125%(前回3.125%)と前回と変わらず。利下げ回数は、24年が1回(前回3回)に減少したが、25、26年はともに3回から4回に増加した。26年末までに合計9回の利下げは前回と変わらず。

FFレート誘導目標レンジの中央値は、FOMC参加者が中立金利と推測する2.75%を上回る金融引締め水準が適切とされた。なお、長期は、2.750%(前回2.625%)と上方シフトしており、中立金利が上昇したと考える参加者が増加したことが示された。

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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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