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2024.07.16
日本経済
金融政策・日銀
物価
経済統計
基調的なインフレ予想の試算結果(6月調査)
~「家計」「企業」の中長期的なインフレ予想が再上昇~
大柴 千智
- 要旨
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- 将来のインフレ動向を把握するために極めて重要な「インフレ予想(期待インフレ率)」について、直近の各種アンケート調査(6月調査)の結果を反映して、インフレ予想の基調判断に有用な「合成予想物価上昇率」をアップデートした。各種アンケート調査では、「家計」「企業」「専門家」いずれの経済主体も中長期的なインフレ予想は前回から上昇した。これを反映して、合成予想物価上昇率も上昇が加速した。
- 日本銀行は基調的なインフレ率が2%を持続することを目標として金融政策の判断を行っているが、今回の結果から、国内におけるインフレ予想も上昇傾向を継続していることが読み取れる。今後は徐々に賃上げの影響が足元の物価上昇や消費にも反映され始めるとみられ、それがインフレ予想に与える影響について、引き続き丁寧な基調判断が求められる。
将来のインフレ動向を把握するために極めて重要な「インフレ予想(注釈1)」について、7月1日に「日銀短観」、7月12日に「生活意識に関するアンケート調査」の最新結果が公表されたことで、各経済主体の直近のインフレ予想がアップデートされた。以下からは、これらアンケート調査に基づく経済主体のインフレ予想の動向と、それに基づいて試算される総合的なインフレ予想指標である「合成予想物価上昇率」の試算結果を確認していく。
(注釈1)インフレ予想とは、文字通り将来の物価上昇に対する人々の期待を表す概念である。マクロ経済学上では、物価上昇率は最終的にこの期待インフレ率に収束することになるため、期待インフレ率を把握することは適切な金融政策を実施するための重要な課題となる。
各経済主体のインフレ予想の動向
各種アンケート調査によると、最新の結果(いずれも6月調査)で「家計」「企業」「専門家」ともに、中長期的なインフレ予想は前回から上昇した(家計・企業は四半期調査、専門家のみ半期調査)。特に、「家計」「企業」は、5年先のインフレ予想について、23年以降は上昇一服感がみられていたが、ここにきて再び上昇した。「家計」は他の経済主体と比較しても水準感が高く、極端な動きをとることが多いものの、過去と比較しても急加速した印象を受ける。足元の円安や実質賃金の目減りによって、身の回りでも再び物価高への意識が高まっていることを反映していると考えられる。「企業」についても、円安を背景にした輸入物価の再上昇を背景に、販売価格の上昇を通じて将来への物価上昇を予想する姿勢が強まっている様子だ。

合成予想物価上昇率の試算結果
上記のような各種アンケート調査は、各経済主体で水準感に差異があることや、調査特有のバイアスがあることで知られている。こうした課題を解決し、インフレ予想の基調的な動向を読み解くために、主成分分析を用いた「合成予想物価上昇率」を試算した(詳細は「インフレ予想の統計的推定の展開①~合成予想物価上昇率の有用性~」を参照)。
結果として、6月調査では「家計」「企業」「専門家」の各経済主体がともに上昇したことで、「合成予想物価上昇率」も上昇した。上昇幅は前回から比較して+0.05%ptの拡大と、直近4四半期の平均(+0.02%pt)と比較しても大きく、インフレ予想は上昇傾向が加速していることが窺える。

日本銀行は「賃金と物価の好循環」として、基調的なインフレ率が2%を持続することを目標として金融政策の判断を行っているが、今回の結果から、国内におけるインフレ予想も基調的に上昇傾向を継続していることが読み取れる。一方で、例えば「生活意識に関するアンケート調査」では、「家計」部門が将来物価が上昇すると予想する理由としては「最近(身の回りの)物価が上がっているから」の回答が8割を占めており、「長い目で見て、景気が良くなると思うから」という回答は1割にも満たない状況だ。賃金上昇や需要拡大に対する期待を反映しているわけではない点に懸念が残るのも事実だろう。今後は徐々に賃上げの影響が足元の物価上昇や消費にも反映され始めるとみられ、それらがインフレ予想に与える影響について、引き続き丁寧な基調判断が求められる。
大柴 千智
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。