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2026.04.24
日本経済
物価
物価指標(日本)
消費者物価指数(全国・2026年3月)
~3月段階で基調の変化なし、それでも拭えない先行き不透明感~
新家 義貴

ガソリン・灯油価格上昇によりCPIコアは上昇率が拡大
本日総務省から発表された26年3月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+1.8%と、前月の+1.6%から上昇率が拡大した。市場予想通りの結果でサプライズはなかった。前年の高い伸びの裏が出たことで食料品価格の上昇率が鈍化した一方、原油価格高騰によってガソリン、灯油価格が大幅に上昇したことが、CPIコアの上昇率拡大につながった。
ガソリンが前月比+11.2%、灯油が前月比+10.0%とそれぞれ大幅に上昇し、前年比でもマイナス幅が縮小した。ガソリンと灯油を合わせた前年比寄与度は▲0.09%Ptと、2月(▲0.37%Pt)対比で+0.28%Ptの押し上げ要因となっている。一方、食料品(生鮮除く)は前年比+5.2%と、2月の+5.7%からはっきり鈍化している。前月比では上昇が続いているものの、昨年の伸びが非常に高かったことから前年比でみるとピークアウト感が鮮明である。
また、エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+2.4%(2月:+2.5%)とやや鈍化、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)が前年比+1.4%(2月:+1.4%)と変わらずとなっている。日銀版コアについては食料品鈍化の影響が大きい。米国型コアは前年比で+1%台半ばのレンジ内で安定的な上昇が続いている。
このように、3月はガソリン・灯油価格の急上昇により上振れたものの、①食料品の鈍化基調が継続、②エネルギー、食料以外では安定的な上昇、といった点についてはこれまでと変わらない。少なくとも3月時点では、物価の基調に変化はうかがえない。
なお、3月のCPIコアについては、東京都区部では2月対比で伸びが鈍化、全国では伸びが拡大という形になったが、これはガソリンと灯油のウェイトの違いによるところが大きい。東京都区部では使用頻度の低さからガソリンや灯油のウェイトが小さく、3月の価格上昇がCPIコアに与えた影響はそれほど大きくなかったが、全国でのウェイトは都区部の3倍以上あるため、押し上げ寄与もその分大きくなった形だ。
ガソリン、灯油については政府による補助金支給が実施されている。3月のCPIでは調査日の関係で補助金支給が始まる前の価格であるため大幅に上昇したが、4月には補助金により価格は低下、前年比の寄与も再び縮小する見込みである。補助金が現在の形でいつまで続けられるかという問題は残るが、当面は、ガソリン・灯油価格主導で物価が大きく上振れる展開は回避される可能性が高い。
コアコアの基調に大きな変化はみられず
電気・ガス代は前月からほぼ変化がなかった(電気・都市ガス代の前年比寄与度は2、3月とも▲0.38%Pt)。引き続き電気・ガス代補助により押し下げられている。補助自体は昨年も同時期に実施されたが、昨年対比で補助額が大きいため、前年比でも大きな下押しとなっている。ただし、補助の額は2月、3月で変わっておらず、押し下げ度合いに変化はない。なお、この補助は2月~4月請求分の期間限定であり、かつ4月には補助が縮小される。補助金による押し下げ寄与が4月にはっきり縮小することに注意しておきたい。
ガソリン価格は前年比▲5.4%(2月:▲14.9%)、灯油価格が+6.3%(2月:▲3.5%)となった。前月比ではガソリンが+11.2%、灯油が+10.0%とそれぞれ二桁の伸びとなるなど、原油価格高騰によりそれぞれ価格が大幅に切り上がっている。一方、政府が上限の目安を定める形での補助金支給を開始していることにより、ガソリン価格は足元で170円/ℓ程度まで低下、灯油価格も一時期より下落しているため、4月分では前月比でマイナス、前年比でもガソリンの下落幅拡大や灯油の上昇幅縮小を通じて、押し上げ寄与は弱まるだろう。価格高騰前の150円台後半と比べると、なお10円以上高い水準にあるものの、ガソリン・灯油価格の急騰により物価が一段と押し上げられるといった事態は回避されるだろう。
食料品(生鮮除く)は前年比+5.2%(前年比寄与度:+1.34%Pt)と前月の+5.7%(同寄与度:+1.47%Pt)から鈍化した。引き続き非常に高い伸びだが、前年比でみればピークアウト感が鮮明となっている状況は変わらない。昨年の急上昇の裏が出たことで米類(前年比:2月+17.1%→3月+6.8%)が鈍化していることが目立つ。前年に積極的な値上げが実施されていたことの裏が出る関係で、この先も食料品価格は伸びが鈍化しやすい状況が続くだろう。
エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり日銀版コアが鈍化、米国型コアが変わらずとなった。日銀版コアは食料品価格鈍化によるところが大きい。米国型コアについてはこれまで通り前年比+1%台半ばでの安定的な推移が続いていると見て良いだろう。物価の基調に変化はみられない。
先行きの不透明感は強い
先行きの物価については不透明感が非常に強い。ガソリン・灯油価格については、政府が補助金支給により極端な価格上昇を抑制する方針を示しており、ガソリン・灯油主導で物価が大きく上振れるという事態は当面回避される。電気・ガス代についても、上昇するのはまだ先である上、政府が再び補助金投入・拡充で秋以降の価格上昇を抑える可能性もある。補助金による抑制効果はかなり大きいため、原油価格の高騰がすぐに物価の上振れに繋がるわけではない。
もっとも、足元ではイラン情勢に関連した調達難等により価格が上昇するものも一部に見られ始めている。現在は企業間取引の段階での価格上昇にとどまるが、事態が長期化するようであれば、価格上昇が川下に波及することで、いずれ消費者物価の上振れに繋がる可能性がある。
また、イラン情勢に直接関係がない品目についても不透明感は強い。足元の原油価格高騰と円安の進行は今後の値上げの格好の材料となり得る。かつてと異なり企業が値上げをためらわなくなっている現在、円安と資源高を理由として、今後値上げに踏み切る企業が増える可能性があるだろう。前述のとおり、前年の高い伸びの裏が出ることで、先行きの日銀版コアは鈍化しやすい状況にあるが、仮に円安・資源高を理由とした値上げが積極化した場合にはその限りではない。この場合、CPIが再び+2%台に戻る展開も十分考えられるだろう。
政府の対応次第の面があることも悩ましい。電気代・ガス代については、資源価格上昇の影響が遅れて波及することで秋以降に上昇することが予想される。仮に資源価格の高止まりが続くようなら、冬場の電気・ガス代の上昇はかなりのものになるだろう。現在の政府のスタンスから考えると、上昇分のうちかなりの部分を補助の大幅拡充によって抑え込む可能性が高いように思われるが、現時点で明確な見通しを示すことは難しい。
このように、原油高や調達難がいつまで続くかが分からないこと、円安・資源高を理由にした値上げを企業がどの程度実施するかが読めないこと、政府の対応(ガソリン補助金が現在の形で続けられるか、電気・ガス代補助金を秋以降どうするか)によって大きく動くこと、など物価を巡る不透明感は非常に強い状況にある。先行きは決め打ちせず、状況変化に応じて見通しを柔軟に見直す必要があるだろう。

新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。