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2026.05.01
日本経済
物価
物価指標(日本)
消費者物価指数(東京都区部・2026年4月)
~期初の値上げは限定的。それでも先行き不透明感は極めて強い~
新家 義貴
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期初の値上げは限定的か。4月段階で物価の加速はみられず
本日総務省から発表された26年4月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+1.5%と、前月の+1.7%から上昇率が縮小し、市場予想の+1.8%を大きく下回った。保育所保育料(前年比寄与度:3月▲0.31%Pt → 4月▲0.51%Pt)が統計作成上のテクニカルな要因で大きく下振れたこと(後述)でコンセンサス下振れの多くが説明できるが、それを除いてもやや弱めな結果である。4月は年度替わりで価格改定のタイミングであるため、いわゆる「期初の値上げ」による上振れが警戒されていた。だが、今回の結果を見る限りそうした動きは想定ほど出なかった模様で、逆に前年の高い伸びの裏が出る形で上昇率が押し下げられる方向に働いたようだ。
4月については、電気・ガス代の補助が縮小されたこと(電気・都市ガス代の前年比寄与度:3月▲0.40%Pt → 4月▲0.20%Pt)や鉄道運賃(JR)の値上げ(前年比寄与度:3月0.00%Pt → 4月+0.07%Pt)などが前月からの押し上げ要因になった一方、①保育所保育料の下振れ(前年比寄与度:3月▲0.31%Pt → 4月▲0.51%Pt)、②ガソリン補助再開(石油製品の前年比寄与度:3月0.00%Pt → 4月▲0.06%Pt)、③食料品(生鮮除く)価格の鈍化(前年比寄与度:3月+1.21%Pt → 4月+1.13%Pt)、④家賃の鈍化(前年比寄与度:3月+0.33%Pt → 4月+0.23%Pt)などの下押しがそれ以上に大きく、CPIコア全体では上昇率が鈍化した形だ。②と③は事前に想定されていたが、①と④が市場予想の下振れに寄与したとみられる。①は統計作成上の技術的要因(後述)、④は東京都区部で昨年4月に大幅に上昇していた裏が出た形。家賃については、4月の年度替わりのタイミングで昨年同様に都市部で大幅引き上げが生じる可能性があるとみていたが、特段そうした動きは確認できなかった。
また、エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+1.9%(3月:+2.3%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)が前年比+0.9%(3月:+1.4%)とそれぞれ大幅に鈍化している。保育所保育料の下振れによるところも大きいが、その要因を除いても日銀版コアが3月+2.6% → 4月+2.4%、米国型コアが3月+1.9% → 4月+1.7%と、公表値ほどではないが伸びが鈍化している。期初の値上げが想定ほどにはみられなかったことで、昨年の高い伸びの裏が出る形で上昇率が縮小したとみられる。イラン情勢悪化による物価上振れが懸念される状況ではあるが、少なくとも4月の段階で物価の加速はみられていない。
保育所保育料の下振れは統計作成上のテクニカルな要因が大きい
今月の予想下振れの一因となった保育所保育料の下落は、東京都の保育料無償化政策の影響によるものである。指数水準は4月にゼロ(3月は39.3)となり、前年比では▲100%になった。東京都では25年9月から第1子の保育料等無償化を開始し、所得制限なしで保育料等無償化を行っているが、これが26年4月から消費者物価指数上でもフルに反映されたことが影響している。
なお、無償化は25年9月からであり、26年4月に新たな政策が開始されたわけではない。ではなぜ26年4月に指数水準が大幅に低下し、ゼロになったのか。これは統計作成上の技術的な要因によるところが大きい。
消費者物価指数の「保育所保育料」を算出するにあたっては、月額の実際の支払額ではなく、1年間(年度)の支払額がもとになっている。このように、「保育所保育料」は算出単位が「1か年」となっており、年度ベースの料金を扱うモデルであることが話を難しくしている。
25年度については9月以降に無償化されたが、それ以前の4~8月は有料だったため、年度合計では負担はゼロにはならない。25年度全体としての年間負担はまだ残るため、25年9月以降の指数は(実際には無償化で支払っていないにもかかわらず)ゼロにはならなかった(年度の支払額が減ったため9月以降の指数水準は低下)。一方、26年度については、4月から年度を通じて無償化が反映されるため、モデル上の保育料もゼロになったということである。無償化政策が25年9月に始まったにも関わらず、25年9月と26年4月の二回に分けて消費者物価指数上で影響が出たのはこうした技術的な要因が影響している。筆者を含め、この点が織り込まれていなかったとみられることが、今回のコンセンサス下振れの一因と思われる。
なお、この政策は東京都独自のものであるため、4月分の全国CPIでは影響は限定的なものにとどまるとみて良いだろう。
特殊要因を除いてもコアコアが鈍化
電気・ガス代は前月からマイナス寄与が縮小した(電気・都市ガス代の前年比寄与度:3月▲0.40%Pt → 4月▲0.20%Pt)。電気・ガス代補助は4月請求分も続いていたが、補助額は2、3月対比で縮小されていたため、押し下げ寄与が縮小している。
ガソリン価格は前年比▲9.9%(3月:▲1.0%)と下落幅が拡大した。政府が上限の目安を定める形での補助金支給を開始したことにより、ガソリン価格は足元で170円/ℓ程度まで低下していることから、4月分では前月比▲7.7%と下落、前年比の下落幅も大きく拡大した。価格高騰前の150円台後半と比べると、なお10円以上高い水準にあるものの、ガソリン・灯油価格の急騰により物価が一段と押し上げられるといった事態は回避されるだろう。
食料品(生鮮除く)は前年比+4.6%(前年比寄与度:+1.13%Pt)と前月の+4.9%(同寄与度:+1.21%Pt)から鈍化した。引き続き高い伸びだが、前年比でみればピークアウト感が鮮明となっている状況は変わらない。なお、食料品(生鮮除く)の前月比は+0.4%と上昇が続いているが、昨年ほどの勢いはみられない。前年に積極的な値上げが実施されていたことの裏が出る関係で、この先も食料品価格は伸びが鈍化しやすい状況が続くだろう。
エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり日銀版コア、米国型コアとも大幅鈍化、保育所保育料を除いても鈍化している。鉄道運賃(JR)の値上げ等はあったものの、「期初の値上げが集中して上振れ」といった状況にはなっていない。品目では、家賃、外国パック旅行、ルームエアコンなどの下振れが目立つ。少なくとも4月の段階では物価の加速はみられず、これまでの鈍化傾向が持続していたということになる。
先行きの不透明感は強い
先行きの物価については不透明感が非常に強い。ガソリン・灯油価格については、政府が補助金支給により極端な価格上昇を抑制しており、ガソリン・灯油主導で物価が大きく上振れるという事態は当面回避される。電気・ガス代についても、上昇するのはまだ先である上、政府が再び補助金投入・拡充で価格上昇を抑える可能性もある。昨年同様、夏場に補助を行うことは既定路線だろうが、補助が夏で終了せず、秋以降も継続・拡充される可能性は高いとみておきたい。補助金による抑制効果はかなり大きいため、原油価格の高騰がすぐに物価の上振れに繋がるわけではない。
もっとも、足元ではイラン情勢に関連した調達難等により価格が上昇するものも一部に見られ始めている。現在は企業間取引の段階での価格上昇にとどまるが、事態が長期化するようであれば、価格上昇が川下に波及することで、いずれ消費者物価の上振れに繋がる可能性がある。
また、イラン情勢に直接関係がない品目についても不透明感は強い。足元の原油価格高騰は今後の値上げの格好の材料となり得る。かつてと異なり企業が値上げをためらわなくなっている現在、資源高と円安を理由として、今後値上げに踏み切る企業が増える可能性があるだろう。前述のとおり、前年の高い伸びの裏が出ることで、先行きの日銀版コアは鈍化しやすい状況にあるが、仮に円安・資源高を理由とした値上げが積極化した場合にはその限りではない。この場合、CPIが再び+2%台に戻る展開も十分考えられるだろう。
政府の対応次第の面があることも悩ましい。電気代・ガス代については、資源価格上昇の影響が遅れて波及することで秋以降に上昇することが予想される。仮に資源価格の高止まりが続くようなら、冬場の電気・ガス代の上昇はかなりのものになるだろう。現在の政府のスタンスから考えると、上昇分のうちかなりの部分を補助の大幅拡充によって抑え込む可能性が高いように思われるが、現時点で明確な見通しを示すことは難しい。
このように、原油高や調達難がいつまで続くかが分からないこと、円安・資源高を理由にした値上げを企業がどの程度実施するかが読めないこと、政府の対応(ガソリン補助金が現在の形で続けられるか、電気・ガス代補助金をどうするか)によって大きく動くこと、など物価を巡る不透明感は非常に強い状況にある。先行きは決め打ちせず、状況変化に応じて見通しを柔軟に見直す必要があるだろう。

新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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