インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

トルコ中銀は我慢の時期に直面、リラ相場にとっても辛抱が続く

~潮目は変われど米ドル高には勝てず、当面はエルドアン大統領が忍耐を維持できるかに掛かる~

西濵 徹

要旨
  • ここ数年のトルコリラ相場は無茶苦茶な政策運営を背景に調整の動きが止まらない展開が続いた。しかし、昨年の大統領選後の内閣改造を経て経済チームが正統的な政策運営に舵を切り、金融市場からの評価も着実に変化してきた。結果、リラ安に歯止めが掛かるなど潮目が変わる動きがみられたが、足下では米ドル高が再燃してリラ相場は上値が抑えられる我慢の時期に直面している。こうしたなか、中銀は27日の定例会合で政策金利を3会合連続で50%に据え置き、先行きも引き締め姿勢を断固維持する考えを示している。先行きのインフレは鈍化に転じる可能性が見込まれるなど、リラ相場の追い風となり得る材料は揃いつつあるなか、当面は中銀や政府、なによりエルドアン大統領が忍耐を維持できるかに掛かっている。

ここ数年のトルコリラ相場を巡っては、インフレが高止まりするなかでも『金利の敵』を自任するエルドアン大統領による「高金利がインフレを招く」という因果が倒錯した主張にしたがって中銀は利下げを迫られ、インフレが一段と昂進するとともにリラ安の動きに歯止めが掛からない展開が続いてきた。しかし、昨年の大統領選後に実施した内閣改造では経済チーム(財務相と中銀総裁)に正統的な政策運営を志向する陣容で固めたほか、その後の中銀は累計4150bpもの大幅利上げを、政府もリラ安阻止を目的に導入した保護預金制度の解除や包括的な財政緊縮策を公表するなど(注1)、着実に正統的な政策に舵を切る動きをみせてきた。こうした経済チームによる政策運営も追い風に、主要格付機関は相次いで同国に付与する外貨建長期信用格付の格上げを実施するとともに、国際金融市場においても機関投資家を中心に同国に対する評価が向上する動きがみられた。こうした動きにも拘らず、過去数年に亘るリラ安に加え、インフレ昂進が続くなかで中銀の大幅利上げにも拘らず実質金利(政策金利-インフレ率)は依然として大幅マイナスの展開が続くなど価値保蔵手段に対する不透明感がくすぶるなかでリラ相場はジリ安の展開が続いてきた。しかし、その後も経済チームは辛抱強く引き締め姿勢を堅持する考えを示してきたことを受けて、先月以降は下げ止まりに転じる動きが確認されるなどリラ相場を巡る『潮目』がいよいよ変化する兆候がうかがわれた(注2)。その後も5月のインフレ率は一段と加速して1年半ぶりの伸びとなる展開が続く一方、コアインフレ率はわずかに頭打ちするなどインフレ動向に変化の兆しが出ているほか(注3)、2018年にエルドアン政権が公布した大統領令(中銀総裁と副総裁の任命と解任権を大統領に付与するもの)を巡って憲法裁判所が無効とする判断を下すなど、エルドアン大統領が人事権を盾に中銀に圧力を掛けること難しくなった(注4)。このようにリラ相場の追い風となり得る材料は揃いつつあるものの、足下の国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ時期の後ズレが意識されるなかで米ドル高の動きが再燃しており、リラ相場は上値が抑えられて最安値圏で推移する『我慢の時期』に直面している。こうしたなか、中銀は27日の定例会合において政策金利(1週間物レポ金利)を3会合連続で50%に据え置いている。会合後に公表した声明文では、今回の決定について前回会合同様に「利上げの効果発現に時間を要する点を考慮して現状維持を決定した」とする上で、先行きについて「インフレリスクに細心の注意を払いつつ、インフレ基調が大幅かつ持続的な低下が確認され、インフレ期待が予想通り収束するまで引き締め姿勢を維持する」との考えをあらためて強調している。その上で「信用や預金市場で予想外の動きが起こった場合は追加的なマクロプルーデンス措置を通じて金融政策の伝達メカニズムを支援する」とするなど、引き締め効果を断固として維持する方針を強調した格好である。先行きのインフレ率は前年の7月以降に加速に転じた反動により頭打ちに転じやすい環境にあるほか、リラ相場が底打ちに転じるなど潮目が変わる動きを反映して輸入インフレ圧力も後退しており、インフレ鈍化が確認されればリラ相場を取り巻く環境が変化することも期待される。その意味では、中銀や政府、なによりエルドアン大統領が我慢の時期を耐えられるか否かにかかっていることは変わらないと捉えられる。

図1 リラ相場(対ドル)の推移
図1 リラ相場(対ドル)の推移

図2 インフレ率の推移
図2 インフレ率の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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