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- 自動車など業況悪化は継続
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6月調査の業況判断DI(大企業製造業)は、前回比▲1ポイントの悪化が予想される。自動車メーカーの検査不正が発覚して、それが出荷停止に響くことが大きい。すでに3月調査でも、別のメーカーの不正で輸出・生産が一時的に落ち込む影響があった。日銀は、追加利上げによって、今度はもっと広範囲の影響があるとみており、6月調査で企業活動はどのくらい底堅いのかを確認したいと考えているだろう。
自動車は悪化
7月1日に発表される日銀短観6月調査は、大企業・製造業の業況判断DIが▲1ポイント悪化する見通しである(3月調査11→6月予測10、図表1、2)。非製造業の方は、+2ポイント改善する見通しである(3月調査34→6月予測36)。


大企業・製造業は、追加的に発覚した自動車メーカーの検査不正による出荷停止が響くとみられる。3月調査でも、別のメーカーの不正で落ち込んだ経緯がある。4月までの実質輸出、鉱工業生産指数でも、その影響が窺える(図表3、4)。従って、業況判断にも悪影響が表れると予想する。参考となる月次のロイター短観も、一進一退の推移になっている。


その一方で、非製造業は、好調さを維持する見通しである。インバウンド消費は2024年に入って加速している。円安基調も4・5月と継続し、追い風になっている。その好影響は、小売(特に百貨店)、宿泊・飲食サービス、個人サービス、運輸・郵便と裾野は広い。すでに1991年以来の高水準の業況判断はさらに上積みされるとみる。
追加利上げの材料
日銀は、政府との円安阻止に協調した行動を採ろうとしている。そのため、追加利上げに向けた材料を探していると考えられる。製造業の業況判断は必ずしも追い風ではないが、自動車の検査不正の悪影響は長引いたとしても、一時的とみるだろう。むしろ、細かい変化として需給判断DIが引き締まるかどうかや、仕入・販売価格DIの上向きの変化がどのくらい継続しているかに注目するとみられる。
植田総裁は、従来から基調的なインフレ率の動向には注意を払っている。有力なのは需給ギャップの推計であるが、短観の各種データも基調的インフレを観察する材料のひとつである。
設備投資の堅調さ
従来から、短観の設備投資計画が強いことは、景気拡大の基調の底堅さを反映していると考えられてきた。6月調査でもその傾向は続くとみられる(図表5)。大企業・製造業の2024年度計画は、3月調査で前年比8.5%と高い発射台で始まった。これは6月調査ではさらに上方修正すると予想される。

中小企業・製造業も、2024年度計画は、3月調査で前年比3.6%と初回調査にしてはやや強めの数字であった。こちらも上方修正されて、今回も「設備投資の基調は強い」と日銀に自信を深めさせると考えられる。
金融指標にも目配り
3月19日にはマイナス金利が解除されて、その影響はほとんど目立ったものがなかった。長期金利に限っては、一時1.1%くらいまで上昇することがあった。もっとも、企業金融では、3月の解除では短期プライムレートの引き上げが見送られたから、ネガティブなインパクトはほとんどみられていない。
とはいえ、今後の追加利上げで政策金利を0.1%から0.25%へと引き上げると、そうはうまく行かないと思う。今度は、短期プライムレートは改定され、企業の資金繰りにもいくらかインパクトがあるに違いない。
日銀は、6月調査では、資金繰り判断DIと金融機関の貸出態度判断DIには、ことさらに注意を払うだろう。次回の追加利上げでどのくらい悪影響が表れるかを知るために、3月比でどのくらい動くのかを凝視すると思う。筆者はそこまで大きな悪影響はないと考えるが、久々の本格的な金融引き締めになるので、予断は許されない。
日銀にすれば、政府の要請もあって、円安阻止の色彩が強い政策判断になると思われるが、いずれそれが中小企業の景気悪化というジレンマに発展していくことは避けられない。だからこそ、日銀は6月時点ではそうした図式にはないことを確認したいと思うのだろう。
追加利上げは7月?
追加利上げの可能性は、今後の円安次第であろう。6月の定例記者会見では、植田総裁は7月会合での利上げも否定しなかった。これは、一見、教科書通りの答えであるが、筆者は為替次第で十分にあるとみる。ドル円レートは、6月中旬にかけてじりじりと1ドル160円に接近してきている。7月会合は30・31日と1か月以上も先である。また、160円に為替が再接近して、現在よりも日銀が動きそうだという観測は高まっていくと予想される。
熊野 英生
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