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2024.06.03
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メキシコ初の女性大統領誕生へ、メキシコペソ相場はどうなる?
~経済政策は不変も景気頭打ちで中銀は変化を迫られるか、米大統領選の行方など外部環境にも注意~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコで2日に実施された大統領選では与党MORENAから出馬したシェインバウム氏が勝利し、同国初の女性大統領が誕生する。世論調査では現職ロペス=オブラドール大統領の高い国民人気を追い風に一貫してシェインバウム氏がトップを走るなど優位に選挙戦を進めてきた。10月に誕生する次期政権は現政権の経済政策を継続すると見込まれる一方、足下の景気は頭打ちの動きを強めており、中銀は政策転換を迫られる可能性はある。米大統領選の行方は同国への対応に影響を与えるなど、ペソ相場を揺さぶる可能性はくすぶる。当面のペソ相場は外部環境に左右されやすい展開が続くことは避けられないであろう。
メキシコでは2日に大統領選挙が実施され、現職のロペス=オブラドール大統領の『腹心』として知られ、与党MORENA(国民再生運動)から出馬したシェインバウム前メキシコシティ市長が勝利し、同国初の女性大統領が誕生することとなった。大統領選にはシェインバウム氏のほか、中道右派PAN(制度的革命党)所属で野党統一候補のガルベス前上院議員、中道左派MC(市民運動)所属のマイネス前下院議員の計3名が出馬したものの、シェインバウム氏とガルベス氏の女性2名による事実上の一騎打ちによる選挙戦が展開された。事前の世論調査においては、現職のロペス=オブラドール大統領が依然として国民から高い人気を得ていることも追い風にシェインバウム氏の支持率は一貫してトップで推移するとともに、ガルベス氏、マイネス氏を大きく引き離す展開が続いてきた。大統領選はシェインバウム氏の勝利が確実視されるなかで、どれだけの得票率で勝利を収めるかに注目が集まってきた。なお、メディアによる出口調査の結果ではシェインバウム氏の得票率は50%を上回るとともに、ガルベス氏を30pt近く上回るなど事前の世論調査の流れを受け継ぐ形で勝利を収めたものと捉えられる。ただし、大統領選と同時に実施された議会上下院選のほか、州知事選挙、市町村長選、地方議会選などを巡っては、選挙戦の最中に多数の候補者が殺害される暴力事件が相次ぐなど民主主義に対する脅威が顕在化する動きがみられた。この背景には、同国では長らく『麻薬戦争』と称される政府と麻薬組織との武力衝突が続いているが、ロペス=オブラドール政権下では法改正により麻薬の所持や使用を刑事罰の対象外とする一方で薬物対策費用を取り締まりから薬物依存症治療などに回すなど方針転換が図られたものの、現実には組織犯罪などによる治安問題が拡大してきたことも影響している。よって、大統領選では治安対策が争点の一つとなる一方、ロペス=オブラドール政権下での年金拡充や最低賃金引き上げをはじめとするポピュリズム色の強い政策は同氏に対する高い国民人気の源泉となってきたため、ロペス=オブラドール氏は大統領選への『置き土産』として憲法改正を争点に掲げるとともにシェインバウム氏や与党MORENAを後押しする姿勢をみせてきた(注1)。こうした経緯も影響して、大統領選の結果とともに議会上下院選の行方にも注目が集まっているが、出口調査によればMORENAは半数を上回る議席を獲得する勝利を収めたとみられるものの、与党連合でも憲法改正を進められる水準(3分の2)には届かない見通しとなっている。10月に発足するシェインバウム次期政権を巡っては、ロペス=オブラドール現政権から大幅な政策転換が図られる可能性は低く、選挙戦においても歴代政権が志向した新自由主義色の強い経済政策を批判する動きをみせてきたことを勘案すれば、左派色の強い政策運営を継続すると見込まれる。他方、同国経済を巡っては財輸出の8割を米国向けが占めるほか、GDPの4%相当に及ぶ移民送金の大宗を米国からの流入が占めるなど米国経済との連動性が高いほか、ここ数年の米中摩擦などを受けたサプライチェーンのニアショアリングやフレンドショアリングを追い風にした対内直接投資の流入活発化の動きが景気を押し上げてきた。ただし、物価高と金利高の共存状態が長期化するなかで足下の景気は頭打ちの動きを強めるなど勢いに陰りが出ているものの、生活必需品を中心とする物価上昇をはじめとするインフレ懸念がくすぶるなかで中銀は3月にコロナ禍後初の利下げに動くも、先月は再び様子見姿勢に転じるなど慎重姿勢を維持する難しい対応を迫られている(注2)。シェインバウム次期政権による経済政策の大幅な転換は見通しにくいと捉えられる一方、上述のように足下の景気が頭打ちの様相を強めるなかで先行きは中銀が景気下支えに向けた金融緩和を迫られるなど、これまで中銀によるタカ派姿勢が下支えしてきたペソ相場を取り巻く環境が変化する可能性はある。さらに、今年11月の米国大統領選の行方は過去の経緯をみても同国への対応に大きく影響を与えるなどペソ相場を揺さぶる可能性にも留意する必要があり、当面は外部環境の動向に揺さぶられる展開が続くことは避けられないであろう。
注1 2月7日付レポート「メキシコ大統領が改憲案提出、選挙への「追い風」にしたいとの思惑か」
注2 5月28日付レポート「メキシコ景気は一段の頭打ち確認、メキシコペソ相場の行方は」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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