出生数減少が止まらない

~現実味を帯びてきた70万人割れ~

星野 卓也

要旨
  • 2023年の出生数は73万人程度、合計特殊出生率は1.21程度まで低下の見込み。2024年1~3月の出生数(速報値)も前年同月から減っており、24年も減少する可能性が高い。通年の減少率が1~3月と同等であれば24年の出生数は70万人を割れる。

  • 24年の出生数が足元ペースで減少する場合、24年出生数は社人研の将来推計人口(昨年公表)における「出生低位仮定」に近くなる。実質的に政府のメインシナリオとして扱われている「出生中位仮定」からは既に乖離が進んでしまっている。

  • 目下、この将来推計人口を用いて作成される年金財政検証の議論が進んでいる。今夏にも公表される財政検証で主に示される数値は出生中位仮定をベースにしたものになる。結果を一段割り引いてみる必要が高まっているのではないか。

目次

2023年の合計特殊出生率は戦後最低水準まで低下へ

出生数の減少に歯止めがかからない。現在公表済みの統計などをもとにすると、6月にも公表される2023年出生数(確定値、日本人)は73.1万人程度へと減少する見込みだ。併せて公表される合計特殊出生率も1.21程度と、1947年の統計開始以来最低の水準へと切り下がることになる見込みである。

資料1.出生数(確定値ベース)と合計特殊出生率の推移と2023 年見込値
資料1.出生数(確定値ベース)と合計特殊出生率の推移と2023 年見込値

70万人割れに現実味、悲観シナリオに近づく可能性が高くなっている

さらに深刻であるのは、2024年も減少傾向が続きそうな点である。人口動態統計の速報では既に2024年1~3月の出生数が公表されているが、前年同時期に比べて6%減っている。2024年も減少に歯止めはかかっていない。年間の減少率が1~3月と同等になると2024年出生数は68.4万人になる。2016年に100万人を割った出生数は2019年には90万人割れ、2022年には80万人を割った。足もと、2024年の70万人割れも視野に入る状況にある。このところの少子化加速はあまりに著しい。

2024年の出生数がこの通りに減少すると、昨年リバイズされた国立社会保障人口問題研究所の将来推計人口、その中心シナリオである出生中位仮定の出生数を明確に下回り、悲観シナリオである出生低位仮定に近づくことになる。社人研推計は2024年の出生数増加を想定しており、乖離が広がる構図だ。

出生中位推計からの下振れは、社人研推計のある種の読み違えに起因すると考えている。以前のレポート(「新・将来推計人口がまさかの上方修正に」(2023年4月)、「子どもを持つ選択は「ぜいたく」になったのか?」(2022年12月))でも指摘した点だが、社人研の推計はここ数年の出生数減少の理由の多くを「コロナ禍による一時的要因」に求めている。2024年に出生数が増える形になっているのはその顕れだ。しかし、実際に合計特殊出生率低下や出生数減少が加速し始めたのはコロナの関係しない2019年からだ。もちろんコロナ禍は下押しには効いていると考えられるが、減少のうちどれほどがコロナで説明できるかは判然としない。足元の出生数の減少は、若年層の価値観の変化や金銭面・キャリア面などにおける将来不安など、より構造的な要因に根差しているのが自然だと考えている。

資料2.出生数(確定数ベース)の実績・見込値と前提別社人研将来推計値
資料2.出生数(確定数ベース)の実績・見込値と前提別社人研将来推計値

年金の財政検証は出生中位仮定が中心シナリオ

将来の人口は経済・社会保障など様々な将来図に影響を与える。政策シミュレーションの前提としても頻繁に用いられており、その一つが今年実施される公的年金の財政検証だ。これは5年に1度行われる年金制度の健康診断のようなものであり、年金財政を維持するためには年金の水準調整(マクロ経済スライド)をいつまで続けることになるか、その際の年金水準(所得代替率)、などを様々な前提の下でシミュレーションする。2024年の財政検証は今夏にも公表される見込みだ。

すでに公表されている社会保障審議会・年金部会などにおける議論の経緯をみていくと、多くのシミュレーションにおいて人口前提は社人研の出生中位の値が用いられることになる。実際の出生数が出生低位仮定に近づく可能性が高まっている点を踏まえると、ヘッドラインとして示される結果については、割り引いてみる必要が高まっているのではないか。なお、2019年の財政検証時には出生率の前提が悪化した際の試算も併せて示され、出生数低下がマクロ経済スライド調整期間の長期化や所得代替率の低下に直結することも示されている。今回もこうした出生前提が変わった際のシミュレーションなどが必要であろう。

資料3.2019年財政検証で示された出生/死亡仮定の変化による年金財政への影響
資料3.2019年財政検証で示された出生/死亡仮定の変化による年金財政への影響

以上

星野 卓也


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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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