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カタルーニャ州議会選とスペイン政局

~独立は遠退いたが、国政運営に波紋も~

田中 理

要旨
  • スペインのカタルーニャ州で週末に行われた州議会選挙は、中央政府を率いる社会労働党が勝利。強硬独立派の地域政党が第二党となったが、分離独立派全体の得票率・獲得議席は何れも過半に届かなかった。社会労働党と分離独立派ともに政権発足に必要な議席確保が困難な状況にあり、再選挙となる可能性も残る。州政府運営を巡る社会労働党と分離独立派の争いは、国政運営にも波紋を広げる恐れがある。分離独立派は国政運営での協力と引き換えに、2017年の住民投票後に国外逃亡生活を続けるプッチダモン氏の州首相就任を要求する可能性や、社会労働党主導の州政府誕生を容認する見返りに新たな要求を突き付けることも考えられる。

12日に投開票が行われたスペインのカタルーニャ州の議会選挙は、中央政府を率いる中道左派の「社会労働党(PSOE)」が住宅、医療、教育、インフラなどの社会政策を選挙戦の争点とすることに成功し、最多票を獲得した(表)。カタルーニャ州でのPSOEの勝利は、国民党(PP)政権時代のようにカタルーニャの独立支持派を締め付けるのではなく、対話や融和を通じて解決策を模索するサンチェス首相の方針がカタルーニャの有権者に受け入れられたことを意味する。カタルーニャのスペインからの独立運動が先鋭化する可能性は一段と遠退いた。

(表)スペイン・カタルーニャ州議会選挙の結果
(表)スペイン・カタルーニャ州議会選挙の結果

カタルーニャの分離独立派にとっては厳しい選挙結果となった。2017年の住民投票で国家反逆罪を問われ、国外逃亡生活を続けるプッチダモン元州首相が率いる強硬独立派の右派系地域政党「ともにカタルーニャのために(Junts)」は、独立を支持する有権者の票を集めて二番手につけた。2022年にJuntsとの連立が崩壊した後、州政府を率いてきた穏健独立派の左派系地域政党「カタルーニャ共和主義左翼(ERC)」は、政権運営の失敗や長引く干ばつへの対応の責任を問われ、議席を大きく減らした。この結果、分離独立を支持する地域政党全体では、2021年の前回の州議会選から10万票以上を失い、約40年振りに議席(61議席、過半数は68議席)・得票率(43.2%)ともに過半に届かなかった。

同州でPSOEを率いるイジャ元保健相は、州首相就任に意欲をみせるが、単独では過半数には届かない。PSOEの国政運営に協力してきた左派ポピュリスト・ポデモスが源流の「スマール(Sumar)」と独立派のERCの左派2党が協力すれば過半数に届くが、低調な結果に終わったERCが下野して党勢を回復することを優先し、PSOE主導の州政府誕生への協力を否定している。第二党に終わったJuntsも、プッチダモン党首が首相就任を果たせなければ政界を引退する意向を表明しており、独立派の支持結集を促すとともに、PSOEに州首相信任投票での棄権を呼び掛けている。中道右派の「国民党(PP)」や極右政党「ボックス(Vox)」などの右派勢力の過半数確保も困難な状況だ。州政府の発足が出来ずに再選挙となる可能性も残る。

州首相の座を巡るPSOEとJuntsの争いは、国政運営にも波紋を広げる恐れがある。中央政府を率いるサンチェス政権は、昨年9月の総選挙でPPに第一党の座を明け渡し、複数の地域政党の協力で難しい議会運営を迫られている。先日も政権基盤の強化を狙って、サンチェス首相が捨て身の辞任示唆を行ったばかりだ(4月26日付けレポート「スペイン首相が辞意示唆、週明けまでに決断」、5月1日付けレポート「スペイン首相の辞任騒動、その結末は?」)。政権維持に必要なカタルーニャの分離独立派の協力の見返りに、2017年に同州の独立の是非を問う住民投票を主導し、国家反逆罪を問われた党指導者に恩赦を与えることを約束し、3月に下院で関連法を可決した。国政運営での協力継続と引き換えに、Juntsはプッチダモン氏の州首相就任を要求する可能性がある。他方、恩赦法は上院に送られた後、審議が行き詰まっており、恩赦が実行されるのは当面先となりそうだ。恩赦法の成立とプッチダモン氏のカタルーニャ帰還を優先する場合、イジャ氏の州首相就任を認める代わりに、サンチェス首相に新たな要求を突き付けることも考えられる。カタルーニャの独立は遠退いたが、バルセロナ(カタルーニャの州都)とマドリード(スペインの首都)の不安定な政治環境が続きそうだ。

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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