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2023.11.14
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ペルー中銀、3会合連続の利下げも、引き続き「利下げサイクル入り」は否定
~インフレ鈍化も目標を上回るなかで慎重姿勢を維持、商品市況の動きもソル相場の重石となる展開~
西濵 徹
- 要旨
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- ペルー中銀は9日に開催した定例会合において、3会合連続の利下げ実施を決定した。ここ数年の同国では大干ばつに加え、商品高と米ドル高が重なりインフレが大きく上振れし、中銀は大幅利上げを余儀なくされた。ただし、昨年末以降は商品高と米ドル高の一巡を受けてインフレは頭打ちに転じている。他方、昨年末以降はボルアルテ政権発足を巡るドタバタを理由に反政府デモが激化し、年明け以降もエルニーニョ現象による豪雨も重なり、景気低迷が続く。よって、中銀は9月に利下げに舵を切り、その後のインフレ鈍化を受けて一段の利下げに動くも、中銀は「利下げサイクル入り」を否定するなど慎重姿勢を崩していない。なお、通貨ソル相場はインフレ鈍化による実質金利のプラス幅拡大を受けて堅調に推移したが、足下では断続利下げに加え、中国経済の減速懸念に伴う商品市況の低迷も重なり頭打ちしている。総選挙の前倒しが見込まれるも、経済・政治共に不透明感がくすぶるなかでソル相場も見通しの立ちにくい展開が続こう。
ペルー中銀は9日に開催した定例会合において、政策金利を3会合連続で25bp引き下げて7.00%とする決定を行った。ここ数年の同国においては、電源構成の半分弱を水力発電が占めるなかで異常気象の頻発を受けた歴史的大干ばつを理由に火力発電の再稼働を余儀なくされたほか、商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ソル安に伴う輸入インフレも重なり、インフレが大きく上振れする事態に見舞われた。よって、中銀は物価と為替の安定を目的に一昨年8月に利上げに舵を切るとともに、今年1月まで18会合連続の利上げを実施するなど難しい舵取りを余儀なくされた。ただし、昨年末以降は商品高と米ドル高の動きが一巡するなどインフレ要因が後退したことを受けて、一時は25年ぶりとなる高水準となったインフレも年明け以降は頭打ちの動きを強めている。他方、同国では昨年末にカスティジョ前大統領に対する弾劾が成立し、副大統領であったボルアルテ氏が大統領に昇格して同国初となる女性大統領が誕生するも、その際のドタバタ劇を巡ってカスティジョ氏や同政権を支えた急進左派政党のPL(自由ペルー)支持者によるデモが激化して一部が暴徒化した。さらに、今年はエルニーニョ現象により一転して集中豪雨が発生する事態となり、経済の柱のひとつである観光産業に深刻な悪影響が出たほか、散発的にデモが継続するなかで一部の鉱山が稼働停止を余儀なくされるなど、幅広い経済活動の足を引っ張る展開が続いている。結果、年明け以降はインフレが頭打ちの動きを強めているにも拘らず、年前半の実質GDP成長率は前年比ベースで2四半期連続となるマイナス成長で推移するなど厳しい状況に直面している。こうした事態を受けて、中銀は今年9月に利下げを決定するなど一転して景気下支えに舵を切る動きをみせたほか(注1)、先月にも2会合連続の利下げに動くなど景気下支えに向けた動きを強めている。さらに、足下のインフレは一段と鈍化して2年ぶりの低水準となっていることを受けて、中銀は3会合連続の利下げにより低迷が続く景気のテコ入れに向けた姿勢を強めているものと捉えられる。ただし、会合後に公表した声明文においては、3会合連続の利下げ実施にも拘らず、過去2会合と同様に「継続的な利下げサイクル入りを示すものではない」と強調するなど慎重姿勢を維持する考えを示している。その上で、先行きの政策運営についても引き続き「インフレ動向に関する新たな情報とその決定要素を条件に判断する」との考えを示しており、足下のインフレは頭打ちの動きを強めるも、依然として中銀目標を上回る推移が続いていることを警戒しているものと捉えられる。他方、通貨ソル相場を巡っては、昨年末以降に米ドル高の動きが一巡したことに加え、インフレが鈍化しているにも拘らず中銀が高金利を維持したことに伴い実質金利のプラス幅が拡大して投資妙味が向上したことも追い風に底入れする展開をみせてきた。しかし、中銀が利下げに転じて以降は一転して頭打ちしており、米ドル高の再燃に加え、中国経済を巡る不透明感を理由に主力の輸出財である銅をはじめとする商品市況の調整圧力が強まったこともソル相場の重石になっている。ボルアルテ政権を巡っては、今月初めにボルアルテ氏が経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)首脳会合への出席を目的に訪米した際、バイデン米大統領との首脳会談が開催されなかったことを理由にヘルバシ前外相に対する批判が強まり、結果的に辞任に追い込まれるドタバタ劇も露呈している。後任の外相には国際法学者のゴンザレス=オラエチェア氏が就任することで事態収束が図られているものの、景気低迷の長期化を受けて政権支持率は『低空飛行』で推移しており、次期総選挙の前倒し実施が見込まれるなかで政権運営は難しい舵取りを迫られる展開が続くことは避けられそうにない。


注1 9月20日付レポート「ペルー中銀、インフレ鈍化を好感して利下げ実施も、追加利下げには慎重」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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