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2023.10.04
アジア経済
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ニュージーランド経済
為替
ニュージーランド中銀、引き締め長期化を改めて強調しているが
~NZドル相場は米FRBの政策運営や米長期金利など「米国次第」の様相を強める展開が続く~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランドでは、商品高、米ドル高、雇用回復を受けた賃金インフレが重なる形でインフレが上振れする展開が続いている。中銀は一昨年以降に金融引き締めに舵を切ったが、物価高と金利高の共存が長期化するなかで景気に不透明感が強まる展開が続く。年明け以降のインフレは頭打ちに転じるも、足下ではインフレ要因が再燃する動きが顕在化している上、インフレが長期化するなかで総選挙に向けて中銀の政策運営が「政争の道具」となるなど難しい対応が迫られている。こうしたなか、中銀は4日の定例会合で政策金利を3会合連続で5.50%に据え置いた。短期的には景気と物価の上振れを警戒しつつ、中期的な景気減速を警戒し、長期に亘って現行の政策スタンスを維持する考えを改めて強調している。足下のNZドル相場は米FRBの政策運営に加え、米長期金利の上振れが意識されるなかで調整圧力がくすぶる状況が続いており、当面の間は引き続き「米国次第」の様相を強める展開となることは避けられないと予想される。
ニュージーランドにおいては、一昨年半ば以降のインフレ率が中銀(NZ準備銀行)の定めるインフレ目標を上回る推移が続いている。この背景には、商品高による生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安に伴う輸入インフレ、コロナ禍の一巡を受けた経済活動の正常化の進展と雇用回復による賃金インフレが重なったことがある。また、中銀はコロナ禍対応を目的に利下げや量的緩和といった異例の金融緩和に舵を切ったものの、コロナ禍の一巡や生活様式の変化も追い風にした住宅需要の高まりを受けて不動産市況は急騰してバブル化が懸念される事態となった。こうしたことから、中銀は一昨年から断続的に金融政策の正常化に動くとともに、その後は物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げに舵を切ったものの、インフレが長期化するなかで物価高と金利高が共存して景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。さらに、中銀による利上げを受けて不動産市況は頭打ちに転じたことで、家計部門にとってはバランスシート調整圧力のみならず、物価高と金利高の共存が実質購買力の重石となる事態に直面した。そして、年明け直後の同国では記録的豪雨や巨大サイクロンの接近といった自然災害が頻発したことも重なり、昨年末から年明け直後にかけて2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど、スタグフレーションに見舞われた。なお、昨年末以降は商品高と米ドル高の動きが一巡するなどインフレ要因が後退したことも追い風に、年明け以降のインフレ率は依然高水準で推移するも頭打ちの動きを強めているほか、自然災害からの緊急復興対策の効果発現も重なり、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+3.46%と3四半期ぶりのプラス成長に転じるなど、テクニカル・リセッションを脱している(注1)。しかし、同国経済を取り巻く状況を巡っては、国内・外双方に不透明要因が山積するなかで企業マインドは製造業を中心に下振れする展開が続いており、再度の景気減速が意識されやすい状況にある。さらに、足下では主要産油国による自主減産の延長、異常気象の頻発を受けた生産農業国による農産物の禁輸、輸出制限の動きなどを反映して商品市況は再び底入れの動きを強めているほか、国際金融市場においては米ドル高の動きも再び強まるなど、インフレ圧力に繋がる動きが顕在化している。また、同国では今月14日に総選挙が予定されるなか、物価高が長期化していることを受けて中銀による政策運営が『政争の道具』となっている上(注2)、足下の世論調査では最大野党・国民党の支持率が上昇する一方で与党・労働党の支持率は低下に歯止めが掛からず、政権交代が実現する可能性が高まっている(注3)。こうしたなか、中銀は4日に開催した定例会合において政策金利(OCR)を3会合連続で5.50%に据え置く決定を行った。会合後に公表した声明文では、足下の金利水準について「想定通り経済活動の抑制とインフレ圧力の低下に繋がっている」との認識を示すとともに、足下の景気動向について「需要の伸びは鈍化しており、4-6月のGDP成長率は想定を上回るも先行きの見通しは低調に推移する」との見方を示している。さらに、「需給の不均衡状態は緩和し続けているが、インフレ圧力の軽減には長期に亘る経済活動の抑制が必要」としつつ、「短期的には景気とインフレが減速しないリスクがあり、中長期的には中国の景気減速に伴う商品価格の調整が外需の重石となる可能性がある」との認識を示している。その上で、先行きの政策運営について、引き続き「金利をしばらく抑制的な水準に留めることでインフレ率は目標域に回帰すると確信する」との考えを改めて示している。なお、8月の定例会合に併せて公表した最新の経済見通しでは、政策金利を2024年末まで現行水準で据え置くとともに、短期的には一段の利上げに含みを持たせる見通しが示されたが(注4)、上述のように短期的な景気とインフレの上振れリスクへの警戒を滲ませたことはこの見通しを維持したものと捉えられる。足下のNZドル相場を巡っては、米FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げが意識されるとともに、米国の長期金利が高止まりするなかで米ドルに対して上値が抑えられる展開が続いており、当面は全米自動車労働組合(UAW)によるストライキの長期化、歳出法案の動向に左右されるであろう。よって、NZドル相場については『米国次第』の様相を強める展開が続くことは避けられないと見込まれる。



注1 9月21日付レポート「ニュージーランド景気はリセッションを脱するも、景気・物価に不透明要因山積」
注2 8月30日付レポート「総選挙に向けて「政争の道具」になりつつあるニュージーランド中銀」
注3 9月8日付レポート「ニュージーランド総選挙の火ぶたが切られるも、混戦必至の情勢」
注4 8月16日付レポート「ニュージーランド中銀、金利据え置きに加えて利下げ開始時期を先延ばし」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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