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2023.08.16
アジア経済
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為替
ニュージーランド中銀、金利据え置きに加えて利下げ開始時期を先延ばし
~NZドルは米ドルに対して上値が重い展開が続く一方、日本円に対しては底堅い展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
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- 16日、ニュージーランド中銀は定例会合を開催して政策金利を2会合連続で5.50%に据え置く決定を行った。同国では商品高に米ドル高によるNZドル安を受けた輸入インフレ、景気回復を受けた賃金インフレも重なりインフレ率は大きく上振れした。中銀は物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを実施してきたが、インフレの頭打ちが確認されたことで中銀は7月の定例会合で約2年に及んだ利上げ局面の休止に動いた。足下のインフレ率は一段と鈍化する一方、インフレ目標を大きく上回る推移が続くなか、中銀は改めて長期に亘り現行の抑制的な水準で政策金利を据え置く考えを示した。さらに、同時に公表した最新の経済見通しでは、利下げ開始時期を「2025年以降」に先延ばしするとの見通しを示すなど、一段と長期に亘り政策金利を維持する考えをみせた。NZドルの対米ドル相場は中国の景気減速が意識される形で上値が抑えられる一方、日本円に対しては金融政策の方向性の違いを理由に底堅い動きが続いているが、当面については双方に対して同じような動きをみせる展開が続く可能性が高いと予想される。
ニュージーランドでは、コロナ禍からの景気回復が進む一方、商品高を受けた生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場での米ドル高に伴う通貨NZドル安による輸入インフレ、景気回復による雇用改善を追い風とする賃金インフレが重なり、インフレ率は一時約30年ぶりの高水準に達した。コロナ禍に際して、中銀は利下げや量的緩和といった異例の金融緩和に動いたものの、景気回復が進むとともに、コロナ禍を経た生活様式の変化を受けた住宅需要の高まりも重なり不動産市況は急騰してバブル化が懸念される事態に発展した。よって、中銀は一昨年以降に段階的に金融緩和の修正に動いたほか、その後は物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅な利上げ実施に動いたものの、その後もインフレは昂進が続いて物価高と金利高が共存する難しい状況に追い込まれた。さらに、中銀の断続利上げを受けて不動産市況は一転して頭打ちの動きを強めたことで家計部門はバランスシート調整圧力に晒される一方、物価高と金利高の共存が実質購買力の重石となる事態に直面した。そして、年明け直後の同国は度重なる自然災害に見舞われるなどの不運も重なり、昨年末以降は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど景気は頭打ちの動きを強めている。その一方、同国においては今年10月に次期総選挙が予定されるなど『政治の季節』が近付いており、インフレの長期化を受けて幅広く国民生活に悪影響が出るなかで、国民の間や政治の場面で中銀の政策運営に対する『注文』が付く動きがみられた。結果、中銀と政府は共同で6月に金融政策に関する新たな運営方針を公表しており、政策決定を巡って政策委員による説明責任の向上を図ることを通じて透明性の向上に取り組む姿勢が示された(注1)。こうしたなか、足下では商品高の一巡に加え、米ドル高も一服するなどインフレ圧力の後退に繋がる動きがみられるなか、直近4-6月のインフレ率は前年同期比+6.0%、コアインフレ率も同+6.1%とともに中銀目標(1~3%)を大きく上回る推移が続くも頭打ちしていることが確認されている(注2)。なお、これは昨年に大幅に加速した反動が影響している一方、生活必需品を中心とする物価上昇の動きは続いているほか、大幅利上げにも拘らず不動産価格は年明け直後を境に底打ちしている上、賃金インフレ圧力もくすぶるなど、インフレ鎮静化にはほど遠い状況にある。ただし、中銀は先月の定例会合において約2年ぶりに利上げ局面の停止を決定するとともに、インフレ鈍化を前提に来年半ばまで政策金利を据え置く見通しを示したが(注3)、足下のインフレ率は想定を上回るペースで鈍化している様子が確認されている。こうしたなか、中銀は16日に開催した定例会合において政策金利(OCR)を2会合連続で5.50%に据え置く決定を行っている。ただし、会合後に公表した声明文では、今回の決定について「足下の金利水準は想定通り支出とインフレ圧力を抑制している」との見方を示すとともに、「最大限の持続可能な雇用を支援しつつ、インフレ率の目標域への回帰を確実にすべく、政策金利を当面抑制的な水準に留める必要があることに合意した」と前回会合と同様の考えを示している。その上で、同国経済について「概ね想定通り、金利高の影響を受けやすい分野で減速しているが、インフレとインフレ期待は頭打ちする一方、コアインフレは依然高過ぎる」との認識を示すとともに、世界経済について「潜在成長率を下回るなかで大宗の国でインフレは鈍化する一方、コアインフレは高止まりしているが、世界経済の鈍化は同国経済にとり交易条件の悪化を招いている」との見方を示している。なお、先行きの景気と物価の見通しについて「需給不均衡が緩和されつつあるが、インフレ圧力の軽減には支出抑制の長期化が必要である」との見方を示した上で、「短期的には景気とインフレが想定ほど鈍化しないリスクはあるが、中期的には世界経済、なかでも中国の需要鈍化が商品市況や輸出の重石になる」として「金利をしばらく抑制的な水準に留めることでインフレ率は目標域に回帰すると確信する」との考えをみせた。声明文そのものは前回会合から大きな変更はなかったものの、同時に公表した最新の経済見通しでは政策金利を2024年末まで現行水準で据え置くとの見通しを示すなど、5月時点(2024年6月まで)から半年ほど先延ばしするとともに、短期的には一段の利上げに含みを持たせる考えが示されている。足下の国際金融市場においては、中国の景気減速が意識されるなかで中国経済への依存度が高い同国経済の足を引っ張るとの思惑がNZドルの対米ドル相場を下押しする展開が続く一方、日本円に対しては金融政策の方向性の違いを理由に底堅い動きをみせている。先行きについては米FRB(連邦準備制度理事会)が追加利上げに動くとの見方もくすぶる一方、NZ中銀は現行の政策スタンスを長期間に亘って維持するとの見方が示されたほか、日本銀行は大幅な政策修正に動く可能性が低いと見込まれることを勘案すれば、引き続き同様の展開で推移するものと予想される。




注1 6月27日付レポート「ニュージーランド中銀と政府が金融政策の「新たな運営方針」を公表」
注2 7月19日付レポート「ニュージーランド、インフレ鈍化も依然高水準、中銀は相当期間金利維持へ」
注3 7月12日付レポート「NZ中銀、前回会合での示唆通り、約2年ぶりに利上げ局面の停止を決定」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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