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2023.07.12
アジア経済
アジア金融政策
ニュージーランド経済
為替
NZ中銀、前回会合での示唆通り、約2年ぶりに利上げ局面の停止を決定
~当面は現行の政策を維持する可能性大の一方、NZドル相場は外部環境に影響される展開が続こう~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド経済は内・外需双方でコロナ禍から回復を遂げる一方、昨年は商品高やNZドル安に伴う輸入インフレ、景気回復による賃金インフレが重なる形でのインフレ昂進に直面してきた。結果、中銀は一昨年以降、物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを迫られた。インフレ率は頭打ちに転じるも、雇用は堅調に推移するなかでインフレ目標を大きく上回る一方、物価高と金利高の共存長期化も影響して景気は頭打ちの動きを強めている。中銀は5月の定例会合で利上げ局面の終了が近いことを示唆する一方、インフレが長期化するなかで政界を中心に中銀への「外圧」が強まるなど難しい状況に見舞われている。こうしたなか、中銀は12日の定例会合で約2年に及んだ利上げ局面の停止を決定し、しばらくは現行の政策を維持する可能性は高いと見込まれる。ただし、NZドルは主要国中銀の政策運営への見方が定まらないなかで方向感の乏しい状況が続いており、日本円に対しても対米ドル相場が影響する展開が見込まれる。
ニュージーランドにおいては、感染一服を受けた経済活動の正常化や国境再開の動きに加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復も追い風に、コロナ禍により疲弊した経済の底入れが内・外需双方で進む展開が続いてきた。その一方、昨年来の商品高に伴う生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安進行による輸入インフレ、そして、景気回復を受けた雇用改善を追い風とする賃金インフレが重なる形で幅広くインフレ圧力が強まる事態に直面してきた。さらに、コロナ禍対応を目的に、中銀(NZ準備銀行)は利下げや量的緩和など異例の金融緩和に動いたものの、その後の景気回復やコロナ禍を経た生活様式の変化による住宅需要の拡大を追い風に市況は高騰するなど、バブルが顕在化する事態を招いた。中銀は一昨年以降、住宅ローン規制の再導入や金融政策の正常化を迫られるとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを余儀なくされるなど難しい対応を迫られた。インフレ率は昨年半ばを境に頭打ちに転じているものの、今年1-3月のインフレ率は前年比+6.7%、コアインフレ率も同+6.5%とともに中銀目標(1~3%)を大きく上回っている上、堅調な推移が続く雇用環境を追い風にインフレ圧力がくすぶる展開が続いている。一方、物価高と金利高の共存状態が長期化していることに加え、年明け直後には度重なる自然災害に見舞われたことも重なり、実質GDP成長率は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど、足下の景気は頭打ちの様相を強めている(注1)。こうした状況にも拘らず、足下の雇用はサービス業を中心に底堅い推移が続いており、家計部門のマインドは底入れしている一方、利上げの累積効果が顕在化する形で企業マインドは幅広く弱含む展開が続くなど対照的な動きをみせており、景気を巡って好悪双方の材料が混在している。なお、上述のようにインフレ率は依然高止まりしているものの、商品高の動きは一巡している上、足下では世界経済の減速懸念を追い風に頭打ちの動きを強めているほか、国際金融市場における米ドル高の動きも一服しており、供給要因に基づくインフレ圧力は後退することが期待される。こうした状況を反映して、中銀は5月の定例会合で12会合連続となる利上げ実施を決定する一方、政策委員の間で見解が割れたことを理由に初めて票決が行われるとともに、同時に公表した最新の経済見通しでは利上げ局面の終了が示唆された(注2)。他方、同国では今年10月に次期総選挙の実施が予定される一方、政界を中心にインフレが長期化するなかで中銀の政策運営に対する批判が高まる動きがみられるなか、先月末に中銀と政府が共同で政策運営を巡って『微調整』を行う方針を公表するなど、対応を迫られる動きも顕在化している(注3)。このように中銀を巡る『外圧』が強まる動きもみられるなか、12日に開催した定例会合において政策金利(OCR)を13会合ぶりに5.50%で据え置く決定を行っている。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「金利水準は想定通り支出とインフレ圧力の抑制を招いている」とした上で、「最大限の持続可能な雇用を支えつつインフレ率を目標域に戻すことを確実にすべく、今後しばらくは抑制的な水準に維持する必要があることで合意した」との考えを示した。また、足下の世界経済ついて「景気は依然弱く、インフレ圧力は緩和している」とする一方、同国経済について「インフレ率はピークアウトしており、インフレ期待の低下も見込まれるほか、雇用は持続可能な水準を上回る推移が続くが、労働需給に緩みが生じる兆しがうかがえる」との認識を示した。その上で、「家計消費は鈍化し、住宅投資も減少しているが、住宅価格は持続可能な水準に回復する一方、企業部門の需要は低迷している」としつつ、「移民流入を受けて労働需給は緩和しつつあるが、全体的な影響は不透明」との見方も示した。他方、先行きについて「復興需要の発現が経済活動を下支えする」とした上で、「政策金利をしばらく抑制的な水準に維持することでインフレ率は目標域に回帰すると確信している」との認識を示すなど、前回会合後に公表した経済見通しで来年半ばまで政策金利を現行水準で据え置く姿勢を示したことを勘案すれば、しばらくは様子見姿勢を維持する可能性は高いと見込まれる。足下の国際金融市場においては、米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀の政策運営への見方が定まらない展開が続いており、こうした見方を反映して通貨NZドル相場は方向感に乏しい動きをみせているが、先行きについても同様の動きが続く可能性は高いと見込まれる。さらに、日本円に対しても日銀の政策運営に対する見方が変わるなかで対米ドル相場の動きが影響を与える展開が続くと予想される。



注1 6月15日付レポート「ニュージーランドは物価高と金利高、自然災害も重なり「テクニカル・リセッション」入り」
注2 5月24日付レポート「ニュージーランド中銀、12 会合連続の利上げ決定と利上げ局面の打ち止めを示唆」
注3 6月27日付レポート「ニュージーランド中銀と政府が金融政策の「新たな運営方針」を公表」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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