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2023.07.19
アジア経済
アジア金融政策
ニュージーランド経済
為替
ニュージーランド、インフレ鈍化も依然高水準、中銀は相当期間金利維持へ
~NZドル相場は米FRBの政策運営など外部環境に揺さぶられ、方向感の定まりにくい展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
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- 昨年来のニュージーランド経済はコロナ禍からの回復が進む一方、インフレに直面して中銀は断続、且つ大幅利上げを余儀なくされた。ただし、物価高と金利高が長期化するなかで足下の景気は頭打ちの動きを強めるなか、中銀は政策運営を巡って外部からの圧力に晒される状況に直面する。中銀は今月の定例会合で約2年に及んだ利上げ局面の停止に動く一方、足下の引き締めスタンスを向こう1年程度維持する見通しを示している。直近4-6月のインフレ率は前年比+6.0%、コアインフレ率も同+6.1%と伸びは鈍化しているが、依然インフレ目標を大きく上回り、インフレ圧力も燻ぶる展開が続く。不動産市況の上振れ懸念もくすぶるなか、中銀は想定通り相当期間に亘って現行のスタンスを維持せざるを得ない状況が続くと見込まれる。他方、NZドル相場は米FRBの政策運営など外部環境に左右される展開が続いており、当面は同様の動きが予想される上、日本円に対しても対米ドル相場の影響を受ける状況が続くと見込まれる。
昨年来のニュージーランド経済を巡っては、コロナ禍からの景気回復の動きが進む一方、商品高による生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安に伴う輸入インフレ、景気回復を追い風とする賃金インフレが重なり、インフレ率は約30年ぶりの水準に昂進した。さらに、中銀はコロナ禍対応を目的に利下げや量的緩和など異例の金融緩和に舵を切ったものの、景気回復やコロナ禍を経た生活様式の変化などを受けた住宅需要を反映して不動産価格は急上昇するなどバブル化が懸念される事態に見舞われた。こうしたことから、中銀は一昨年から段階的に金融政策の修正に動くとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げに追い込まれるなど難しい対応を迫られてきた。なお、中銀による断続利上げを受けて急上昇した不動産市況は一転して頭打ちの動きを強める一方、輸入インフレや賃金インフレが続いたことでインフレ率は高止まりするなどインフレ鎮静化にはほど遠い状況が続き、物価高と金利高の共存状態が長期化する事態となった。そして、年明け直後の同国には度重なる自然災害が直撃したことも重なり、昨年末から年明け直後にかけて2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど、足下の景気は頭打ちの様相を強めている(注1)。他方、同国では今年10月に次期総選挙の実施が予定されるなど『政治の季節』が近付くなか、インフレの長期化が幅広く国民生活に悪影響を与える懸念も高まるなかで中銀の政策運営に対して外部から様々な『注文』が付く動きがみられた。こうした事態を受けて、中銀と政府は先月に共同で金融政策に関連して新たな運営方針を公表し、政策目標の達成とその維持の重点化を改めて強調する姿勢をみせるとともに、政策委員による説明責任を通じた政策運営の透明性向上に取り組む方針が示された(注2)。なお、足下においては世界経済の不透明感が強まるなかで昨年来の商品高が一巡して調整に転じているほか、国際金融市場における米ドル高も一服するなど、インフレ圧力の後退に繋がる動きがみられるなか、中銀は今月12日に開催した定例会合において約2年に及んだ利上げ局面の停止を決定するとともに、しばらく現行の引き締めスタンスを維持することで様子見を図る姿勢をみせている(注3)。中銀が公表している最新の経済見通しにおいては、インフレ率が大きく鈍化することを前提に、来年半ばまで政策金利を現行水準で維持する見通しが示されており、上述のようにインフレを巡る環境に追い風が吹く動きがみられるなかで現実のインフレ率がどのような動きをみせるかに注目が集まっている。19日に統計局が公表した4-6月のインフレ率は前年同期比+6.0%と前期(同+6.7%)から鈍化しているものの、前期比は+1.1%とペースこそ鈍化するも依然上昇しており、生鮮品を中心とする食料品に加え、原油価格の調整にも拘らずエネルギー価格も上昇しており、引き続き生活必需品を中心にインフレが続いていることが確認されている。また、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も4-6月は前年同期比+6.1%と前期(同+6.5%)から鈍化しているものの、前期比は+0.9%と引き続き上昇している。中銀の大幅利上げにも拘らず住宅価格の上昇が続いているほか、賃金インフレを反映してサービス物価の上昇も続くなど、依然としてインフレの鎮静化にはほど遠い状況が続いていると判断出来る。さらに、インフレ率、コアインフレ率ともに中銀の定めるインフレ目標(2±1%)の上限を大きく上回る推移が続いている一方、最新の経済見通しと比較して早くインフレ鈍化の動きが進んでいる様子がうかがえる。そして、中銀の断続利上げを受けて一昨年末をピークに頭打ちに転じた不動産価格は、年明け直後を境に再び底打ちする動きをみせているものの、足下では上値の重い展開が続いている。ただし、大幅利上げの影響で供給が細っている一方、国境再開を受けた移民流入の底入れが続くなど需要拡大に繋がる動きがみられ、先行きは需給のひっ迫が不動産価格を押し上げる懸念はくすぶる。上述のように中銀は来年半ばまで現行の引き締め姿勢を維持する姿勢をみせているものの、その前提となるインフレ率は来年半ば時点でインフレ目標の上限近傍に達する一方、目標域の中央値(2%)に達するのは再来年半ばとインフレ鎮静化には相当期間を要する状況は変わっていない。足下の通貨NZドル相場を巡っては、米ドルに対しては米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀による政策運営に対する見方が定まらない状況を反映して大きく上下双方に振れる展開が続いており、当面は方向感の定まりにくい展開となることが予想される。一方、日本円に対しては金融市場において日本銀行の政策運営に対する見方が変化していることが上値を抑える要因となっているなか、当面は対米ドル相場の動きに連動した状況が続くと見込まれる。



注1 6月15日付レポート「ニュージーランドは物価高と金利高、自然災害も重なり「テクニカル・リセッション」入り」
注2 6月27日付レポート「ニュージーランド中銀と政府が金融政策の「新たな運営方針」を公表」
注3 7月12日付レポート「NZ中銀、前回会合での示唆通り、約2年ぶりに利上げ局面の停止を決定」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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