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2023.06.27
アジア経済
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為替
ニュージーランド中銀と政府が金融政策の「新たな運営方針」を公表
~インフレ対応への批判が高まるなかで目標の達成・維持に注力、NZ ドル相場に影響が出る可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド経済はコロナ禍からの回復を遂げる一方、商品高やNZドル安に伴う輸入インフレ、景気回復による賃金インフレも重なり、インフレは高止まりしている。他方、中銀は物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅な利上げを余儀なくされたものの、足下の景気は物価高と金利高の共存に加え、自然災害の頻発も重なり景気減速に陥っている。こうしたなか、27日に中銀と政府は共同で声明を発表し、インフレ目標の達成・維持とともに、持続可能な雇用の最大化を図るべく金融政策の運営方針の「微調整」を公表した。この動きは、インフレが長期化するなかで政界を中心に中銀への批判が強まっていることに対応したものと考えられる。なお、今後は政策委員が金融市場にメッセージを出す機会が増えることも予想され、そうした動きによってNZドル相場が影響を受ける可能性が高まることにも注意する必要があると捉えられる。
昨年来のニュージーランド経済は、感染一服による経済活動の正常化や国境再開に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復の動きも追い風にコロナ禍で疲弊した景気の底入れの動きを強めてきた。しかし、昨年来の商品高に伴う生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安に伴う輸入インフレ、景気底入れによる雇用回復を反映した賃金インフレが重なり、幅広くインフレ圧力が強まる事態に直面している。さらに、コロナ禍対応を目的に中銀(NZ準備銀行)は利下げや量的緩和など異例の金融緩和を実施した結果、その後の景気回復やコロナ禍を経た生活様式の変化を反映した不動産需要の拡大を追い風に市況が急騰するなど、バブルが顕在化する事態を招いた。よって、中銀は一昨年以降に住宅ローン規制の再導入や金融政策の正常化を迫られたほか、その後も物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅な利上げを余儀なくされる難しい対応を迫られた。なお、インフレ率は昨年半ばを境に頭打ちに転じているほか、昨年末以降は商品高の動きが一巡するとともに、国際金融市場における米ドル高の一服も重なり、頭打ちの動きを強める展開をみせている。しかし、インフレ率は依然として中銀目標を大きく上回る推移が続いているほか、賃金インフレが続くなかでコアインフレ率は高止まりしており、インフレの鎮静化にはほど遠い状況が続いている。このように物価高と金利高の共存状態が長期化している上、年明け直後には自然災害が頻発して幅広い経済活動に悪影響が出たことも重なり、足下の実質GDP成長率は2四半期連続のマイナス成長となるなど、同国経済はテクニカル・リセッションに陥っている(注1)。なお、中銀は先月の定例会合において12会合連続の利上げ実施を決定する一方、インフレが高止まりしているにも拘らず、景気低迷の動きが顕在化していることを受けて1年半に及んだ利上げ局面の打ち止めを示唆するなど難しい対応を迫られている様子がうかがえる(注2)。こうしたなか、27日に中銀と政府は共同で声明を発表し、金融政策委員会の運営方針を巡って「インフレ率を中期的に目標の中央値(2%)に照準を合わせつつ目標域(1~3%)に維持するとともに、最大限の持続可能な雇用を支える」として、目標の達成とその維持を重点化する考えを明らかにしている。この決定について声明文では、理事会のニール・クイグリー議長により「政策運営の目的をより明確にするための若干の変更を加えつつ、概ね現行の政策体系を継続するもの」と説明されている。また、中銀と政府の間で金融政策委員会に関する協定を更新し、政策決定プロセスを巡って「可能な限りコンセンサスを重視すべきだが、コンセンサスが得られない場合には委員による投票実施も選択肢に維持する」としており、5月の前回会合において委員間の意見が割れて初めて票決が行われたことを是認した格好である。その上で、「政策委員による金融政策に関する公の場での発言に際して期待を明確化するほか、決定に際しての考慮事項など決定プロセスに関するコミュニケーションを明確にすることを盛り込んだ」とするなど、政策委員による説明を通じた透明性向上を求めている模様である。なお、オセアニア地域においては、豪州でも4月に中銀(豪州準備銀行)の金融政策の決定過程の透明性、及び専門性の向上を目的とする提言が公表されており(注3)、その背景にはインフレが長期化して中銀がその抑制に手間取るなか、政府内で中銀に対する不信感が高まっていることが挙げられる。同国においてもインフレが長期化するなかで政界を中心に中銀への批判が高まる動きがみられる上、今年は10月に次期総選挙の実施が予定されるなど『政治の季節』が近付いていることも重なり、中銀は何らかの対応を迫られたと捉えることが出来る。とはいえ、今後は中銀が金融市場に対してメッセージを出すタイミングが増えることも予想され、その度にNZドル相場が左右される可能性も高まることが考えられる。


注1 6月15日付レポート「ニュージーランドは物価高と金利高、自然災害も重なり「テクニカル・リセッション」入り」
注2 5月24日付レポート「ニュージーランド中銀、12 会合連続の利上げ決定と利上げ局面の打ち止めを示唆」
注3 4月20日付レポート「豪準備銀・改革案、金融政策の決定過程の透明化を求める提言公表」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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