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2023.07.07
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スリランカ、経済危機からの脱却の動きは着実に進みつつある模様
~インフレ鈍化で中銀は金融緩和、債務再編協議も前進するなか、当面はその内容に注目が集まる~
西濵 徹
- 要旨
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スリランカでは昨年、外貨不足に伴いデフォルトに陥るとともに、インフレ昂進に伴う国民生活の悪化が政情不安を招いて政権交代に発展した。ウィクラマシンハ政権の下でIMFからの支援受け入れのほか、債務再編協議が進められている。同政権は年内の債務再編実現を目指す姿勢をみせるが、現時点においてその行方は不透明な状況が続く。他方、昨年大きく上振れしたインフレ率は足下で大きく低下しており、中銀は先月と今月と相次いで利下げに動くなど経済を取り巻く状況は改善に向かいつつある。議会は国内債務の再編計画を承認するなど着実に取り組みを前進させており、当面は債務再編協議の行方に注目が集まろう。
スリランカでは、ラジャパクサ一族(マヒンダ元大統領、ゴタバヤ元大統領)の下での度重なる失政に加え、コロナ禍による主力産業である観光業の壊滅的打撃も重なる形で外貨不足に陥るとともに、エネルギー資源や肥料、穀物、医療品などで幅広く輸入が滞るとともに、インフレ昂進も重なり国民生活に深刻な悪影響が出たほか、対外債務が支払い不能となり債務不履行(デフォルト)に陥った。さらに、国民生活の混乱をきっかけとする反政府デモの活発化を受けて政情不安が深刻化したほか、最終的に当時のゴタバヤ大統領が海外逃亡の末に辞任に追い込まれ、その後に誕生したウィクラマシンハ政権の下で経済の立て直しが図られている。また、ウィクラマシンハ大統領は、財務相を兼務してIMF(国際通貨基金)からの支援受け入れの窓口となるなど、円滑な支援受け入れを通じた経済立て直しを目指す姿勢を前面に打ち出してきた。IMFは昨年9月に拡大信用供与ファシリティー(EEF)に基づく総額22億SDR(約29億ドル)規模の金融支援を行うことを実務者レベルで合意したものの、同国はパリクラブ(主要債権国会議)に属さない中国やインドに多額の債務を負うなか、これらの国々との債務再編協議が難航して支援実施が遅れてきた。しかし、年明け以降にインドと中国が相次いで債務再編に向けた交渉が前進したことを受けて、IMFは今年3月に開催した理事会においてEEFに基づく総額22.86億SDR(約30億ドル)規模の支援実施を承認したほか、この決定に基づく形で直ちに2.54億SDR(約3.3億ドル)相当の財政支援が実施されている。そして、翌4月には日本、フランス、インドが主導する形で同国に関する債権国会合の発足が公表されたほか(注1)、ラジャパクサ政権は年内のうちに債務再編の実現を目指す方針を示しており、今後は具体的な債務再編の内容を巡って詰めの協議が行われる見通しである。他方、同国にとっては二国間融資を巡って最大の債権国である中国は様子見姿勢を維持しており、現時点においては債務再編交渉の行方には不透明なところが少なくないのが実情である。なお、IMFからの支援プログラムを巡っては、2032年までに公的債務残高をGDP比で95%以下に引き下げるとの目標が示されており、その実現に向けて同国議会は今月1日に公的債務のうち国内債務を対象に債務再編を行う計画を承認している。具体的には、国内債務の再編計画の一環として政府短期証券を長期債に切り替える方針のほか、ドル建債の保有者を対象に①3割の元本削減の上、満期6年、金利4%に変更(ソブリン債と同条件)、②元本削減なしで満期15年(猶予期間9年)、金利1.5%に変更(二国間のドル建債権者と同条件)、③スリランカルピー建で元本削減なしで満期10年、金利はスリランカ常設貸出ファシリティー金利(SLFR)+100bp、という3つの選択肢を提示するとしている。債権者がこうした条件を受け入れるかは不透明であるものの、①及び②については他の債権者と平仄を併せた内容となっていることを勘案すれば、最終的に受け入れに向けた協議が進む可能性は高いと見込まれる。また、政権交代を招く一因となったインフレを巡っては、昨年後半にかけて大幅に昂進したものの、その後は一転頭打ちの動きを強めており、最大都市コロンボでは今年6月のインフレ率は前年比+12.0%、コアインフレ率も同+9.8%と落ち着きを取り戻している。こうした事態を受けて、中銀は先月の定例会合で政策金利を250bp引き下げるとともに、今月6日の定例会合でも200bpの追加利下げを実施しており、昨年来のインフレ昂進を受けた金融引き締めの動きは大きく転換している。中銀が金融緩和に舵を切っている背景には、昨年以降大きく下振れした通貨ルピー相場がIMFによる支援合意などを受けて落ち着きを取り戻すとともに、足下では緩やかに底入れするなど輸入インフレ圧力が和らぐとの期待も影響しているとみられる。よって、スリランカ経済を取り巻く状況は改善に向かっていると捉えられ、当面は債務再編協議の行方に注目が集まると見込まれる。



注1 4月14日付レポート「スリランカ債務再編へ日印仏の新枠組発足、中所得国債務問題に「光」か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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