インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

コロンビア、インフレ収束の見通し立たず中銀はタカ派姿勢維持

~同国初の左派政権は発足から1年経たない状況ながら、経済を巡る状況は極めて厳しい展開が続く~

西濵 徹

要旨
  • 南米コロンビアでは、昨年の大統領選を経て同国初の左派政権であるペトロ政権が誕生した。社会経済格差の縮小や反政府武装組織との和平実現を掲げて誕生した同政権だが、足下の同国経済は物価高と金利高の共存が国民生活を直撃する展開が続く。中銀による断続利上げにも拘らず、足下のインフレ率は20年超ぶりの高水準で推移して収束の見通しが立たない状況が続き、先月末も追加利上げを実施して政策金利は13.25%に達する。物価高と金利高の共存により家計部門のマインドは低下する一方、米国景気の底堅さを受けて企業マインドは底堅い対照的な動きが続くが、同国経済を取り巻く状況は一段と厳しさを増している。ペトロ政権は誕生から1年経たずの状況ではあるものの、極めて厳しい状況に直面している。

南米コロンビアでは、昨年6月の大統領選(決選投票)で左派のグスタボ・ペトロ氏が勝利し、同年8月に同国で初めてとなる左派政権が発足した。同国は伝統的に米国と関係が深く、過去に中南米諸国において『ピンクの潮流』と呼ばれる動きが広がった際にも右派政権が維持されてきた経緯がある。しかし、ここ数年の中南米諸国では再びピンクの潮流の動きが広がりをみせるなか、同国もいよいよその波に飲まれる格好となっている。その背景には、コロナ禍により同国経済が疲弊したことに加え、商品高によるインフレが国民生活を直撃しており、ペトロ氏が掲げる社会経済格差の解消を目指す政権公約が多くの国民を惹き付けることに繋がったと考えられる。さらに、ペトロ氏は同国最大の武装組織であるELN(民族解放軍)との和平交渉の再開を公約に掲げたことも支持拡大の動きを後押ししたとみられるが、政府とELNの和平交渉は一定の前進がみられるものの、依然としてその道筋は見通しが立たない状況が続いている。他方、同国経済を巡っては、感染一服による経済活動の正常化が進むとともに、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復も追い風に外需の底入れも重なり、昨年の経済成長率は+7.5%と前年(+11.0%)から伸びこそ鈍化するも2年連続で高い伸びを実現するなど、コロナ禍の克服が進んでいる。しかし、高成長を実現した背後には統計上のゲタが大きく影響したことに加え、四半期ごとの成長率やその内容をみると高揚感にはほど遠い状況にあることに留意する必要がある(注1)。昨年来の商品高を受けて食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレが加速するとともに、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ペソ安は輸入インフレを招いており、インフレ率は一時20年超ぶりの高水準となる事態に直面してきた。中銀は物価抑制のため一昨年10月に5年強ぶりとなる利上げ実施に舵を切るとともに、その後は物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げを余儀なくされる展開が続いており、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。昨年末以降の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出ているほか、主要産油国であるOPECプラスが追加的な自主減産を決定するなど原油価格の維持に動くなど、産油国である同国経済にとり追い風となることが期待される動きもみられるなか、ペソ相場は緩やかに底打ちしている。しかし、ペソ相場は依然として前年から大きく安値で推移する展開が続くなか、直近3月のインフレ率は前年比+13.34%と一段と伸びが加速して中銀目標を大きく上回る推移が続くとともに、収束の見通しが立たない状況にある。こうした事態を受けて、中銀は年明け以降も利上げ局面を維持しており、先月末の定例会合においても政策金利を25bp引き上げて13.25%とする一段の金融引き締めを迫られる状況が続いている。会合後に公表した声明文では、7人の政策委員のうち4人が25bpの利上げを主張する一方、2名が金利据え置きを主張するとともに、1名が50bpの利上げを主張するなど『タカ派』姿勢を維持していることが示されている。その上で、足下の経済活動は減速傾向を強めているにも拘らず想定に比べてブレーキが掛かっていないと認識するとともに、同行のビジャル総裁も今回の決定について「足下の利上げ局面で最後となるか断言出来ない」と述べるなど、難しい判断を迫られていることを吐露している。なお、物価高と金利高の共存が長期化するなかで家計部門のマインドは一段と下振れしているにも拘らず、企業部門については米国経済の底堅さや中国経済の回復を期待する形で底打ちが示唆されるなど対照的な動きをみせている。中銀は足下の景気の底堅さを反映して今年の経済成長率見通しを上方修正したものの(+0.84%→+1.00%)、今年の経済成長率のプラスのゲタが+1.0ptであることを勘案すれば、この見通しの前提は4四半期ほぼゼロ成長で推移することを意味する。ペトロ政権の誕生から1年も経たない状況ではあるものの、同国経済を取り巻く環境は極めて厳しい展開が待ち受けていることは間違いないと言える。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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