インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

南ア中銀、景気低迷が続くも物価抑制へ予想外の大幅利上げ断行

~タカ派姿勢はランド相場を下支えも、先行きも外部環境に揺さぶられやすい展開が続くことは不可避~

西濵 徹

要旨
  • ここ数年の南ア経済は慢性的な電力不足が足かせとなっている上、昨年末にかけては物価高と金利高の共存に加え、外需を巡る不透明感が強まった。昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲4.92%と2四半期ぶりのマイナス成長に転じており、通年の経済成長率も+2.0%に留まった。政府は電力不足解消を目指す方針を示しているが、足下のインフレ率は電力不足による供給懸念がインフレ圧力を招く懸念はくすぶる。こうした事態を受けて、中銀は先月の定例会合で9会合連続の利上げ、且つ利上げ幅を50bpに拡大させてタカ派姿勢を強める動きをみせた。この決定を受けてランド相場は底打ちしているが、当面のランド相場は国際金融市場を取り巻く環境など外部要因に左右される展開が続くことは避けられないであろう。

ここ数年の南アフリカ経済を巡っては、慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなる状況が続いてきたが、昨年以降の商品高を受けた石炭の国際価格の上振れの動きは火力発電所の故障が相次いだことも重なり電力不足を深刻化させており、全土で計画停電が実施される事態となっている。さらに、商品高による食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレに加え、コロナ禍の一服による経済活動の正常化を目指す動きのほか、国際金融市場での米ドル高を受けた通貨ランド安による輸入インフレも重なり、インフレ率は中銀(南ア準備銀行)の定めるインフレ目標を上回る推移が続いている。こうした事態を受けて、中銀は一昨年11月に3年ぶりとなる利上げ実施に舵を切るとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続的な利上げ実施を余儀なくされており、物価高と金利高の共存が家計消費をはじめとする内需の重石となることが懸念される。さらに、昨年末にかけては輸出の2割強を占めるEU(欧州連合)景気の減速懸念が強まり、同国経済にとっては内・外需双方に下押し圧力が掛かる動きが顕在化した。事実、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲4.92%と前期(同+7.48%)から2四半期ぶりのマイナス成長に転じており、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+0.92%と前期(同+4.23%)から伸びが鈍化するとともに、実質GDPの規模も再びコロナ禍前を下回る水準に転じるなど厳しい状況が続いている。2022年通年の経済成長率は+2.0%となり、コロナ禍の影響で下振れした反動で大きく上振れした21年(+4.9%)から伸びが鈍化している。なお、ラマポーザ政権は電力不足の打開を目指すべく、先月に実施した内閣改造において担当相を新設するとともに、今月からの新年度予算においてデフォルト(債務不履行)が懸念される国営電力公社(ESKOM)が抱える債務の約6割(2540億ランド(GDP比3.8%))を政府が引き受けることで財務健全性の向上を図るとともに、電力の安定供給を目指す方針を示している(注1)。他方、足下の企業マインドについては深刻な状況が続く電力不足が製造業を中心に足かせとなる動きが確認されるなど、引き続き景気は勢いを欠く展開が続いていると判断出来る。このように足下の景気は弱含む展開が続いているにも拘らず、インフレ率は昨年8月をピークに頭打ちする動きがみられたものの、直近の2月は前年比+7.04%と1月(同+6.89%)から再び加速に転じるなどインフレの鎮静化にほど遠い状況にある。こうしたなか、中銀は先月30日に開催した定例会合において政策金利であるレポ金利を9会合連続で引き上げるとともに、利上げ幅を50bpに拡大させており、レポ金利は7.75%と約14年ぶりの水準となる上、一昨年11月以降の利上げ局面における利上げ幅は425bpとなる。なお、会合後に公表された声明文では、今回の決定については「3(50bpの利上げ)対2(25bpの利上げ)」と政策委員間で利上げ実施は共有される一方、その利上げ幅について意見が割れていることが明らかにされた。その上で、経済成長率見通しについて「今年は+0.2%」と1月時点(+0.3%)からわずかに下方修正する一方、先行きについて「来年は+1.0%、再来年は+1.1%」と1月時点(来年は+0.7%、再来年は+1.0%)からわずかに上方修正するも景気動向について「当面は脆弱な状況が続くとともに、不確実な展開が予想される」としている。また、インフレ見通しについて「今年は+6.0%」と1月時点(+5.4%)から上方修正する一方、先行きは「来年は+4.9%、再来年は+4.5%」とする1月時点の見通しを据え置いているが、物価を巡るリスクについて「上向きに傾いている」と警戒感を滲ませている。よって、事前においては今回の利上げ実施により一昨年11月以来の利上げ局面が休止するとの見方が強まっていたものの、中銀が予想外のタカ派姿勢を示したことにより、その行方は不透明になっていると判断出来るとともに、そうした見方を反映して足下の通貨ランド相場は底打ちしている。しかし、上述のように実体経済は力強さを欠く展開が続いている上、その不透明感も極めて高い状況を勘案すれば、中長期資金が安定的に流入しているとは見做しがたく、国際金融市場を取り巻く環境如何で大きく変化するリスクはくすぶる。その意味では、当面のランド相場については、内生的な要因以上に米ドル相場の行方やその背景となる国際金融市場を取り巻く環境、国際商品市況に大きな影響を与える中国経済の動向に揺さぶられやすい展開が続くと予想されるなど、引き続き不安定な動きが続くことは避けられないと予想される。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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