インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド中銀、サイクロン被害の短期的影響を注視も、追加利上げに含み

~リセッションを警戒も物価抑制へ一段の利上げに含み、NZドル相場の底堅い展開が予想される~

西濵 徹

要旨
  • 先月末以降のニュージーランドでは、記録的豪雨に加えてサイクロン(ガブリエル)の接近も重なり、先月発足したヒプキンス政権は船出早々から荒波に直面している。政府は一連の被害総額がGDP比4%弱に達する可能性を示唆するとともに、緊急対策(3億NZドル)の実施を決定している。他方、足下のインフレは高止まりしている上、復興の本格化も新たなインフレ要因となることが懸念されるなか、中銀は22日の定例会合で10会合連続の利上げ実施を決定した。利上げ幅は50bpに縮小するも、会合では75bpの大幅利上げも検討されたほか、先行きのリセッションを警戒するも、インフレ抑制に向けて一段の利上げに含みを持たせる姿勢をみせた。NZドル相場は底入れの動きに一服感が出ているが、当面は底堅い推移が続くと予想される。

先月末以降のニュージーランドでは、最大都市であるオークランド周辺が記録的豪雨に見舞われ、多数の浸水被害や土砂崩れのほか、停電や断水が発生して同市が非常事態を宣言する事態に直面したほか、今月にもサイクロン(ガブリエル)が同国北島に接近して幅広い地域で洪水や土砂崩れ、高波などが発生してヒプキンス政権は同国全土を対象とする国家非常事態を宣言する事態に追い込まれた(注1)。なお、同国では先月にアーダーン前首相が突然辞任を発表し(注2)、直後に行われた与党・労働党の党首選に前政権で教育相や公共相、警察相を務めたヒプキンス氏のみが立候補して無投票で選出され、首相に就任するなど新政権が発足したばかりである(注3)。ヒプキンス新政権にとっては船出から荒波に対峙する格好である上、今年10月に予定される次期総選挙に向けた党勢立て直しが急務となるなか、国家非常事態宣言の発令により早期の事態収拾を図りたいとの思惑がうかがえる。なお、同国政府は今月20日にサイクロンによる被害額について、2011年に南島クライストチャーチにおいて発生した大地震(135億NZドル(GDP比3.6%))を上回る可能性を示唆した上で、緊急復興対策として3億NZドルの財政出動を行う方針を明らかにしている。緊急復興対策の内訳としては、2.5億NZドル相当を被災地における幹線道路の復旧費用に、0.5億NZドルをサイクロン被害に見舞われた企業や農畜産業従事者を対象とする支援に振り向けるとしている。他方、一昨年半ばの同国では商品高による生活必需品を中心とするインフレに加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安に伴う輸入インフレも重なり、インフレ率は中銀(NZ準備銀行)の定めるインフレ目標を大きく上回る水準に加速してきた。こうしたことから、中銀は一昨年10月に物価抑制を目的に7年強ぶりの利上げに動くとともに、その後も物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅な利上げを余儀なくされる展開が続いてきた。しかし、中銀によるタカ派傾斜にも拘らず、足下のインフレ率は依然としてインフレ目標を大きく上回るとともに30年強ぶりの高水準で推移するなど、インフレ収束の見通しが立たない状況が続いているほか、昨年末以降の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出ているにも拘らず、足下のNZドル相場はサイクロンからの復興予算が財政の圧迫要因になることを警戒して頭打ちの動きを強めるなど、輸入インフレ圧力が再燃することも懸念される。さらに、上述のように被災額が巨額に及ぶなかで復興の進展は新たなインフレ圧力となることも懸念されるなど、中銀にとっては難しい対応が迫られることは避けられそうにない。こうしたなか、中銀は22日に開催した定例会合において政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を10会合連続で引き上げる一方、利上げ幅を50bpに縮小して4.75%とする決定を行った。今回の決定に伴いOCRの水準は2008年12月以来、14年強ぶりとなる。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「昨年11月の前回会合で示したように、インフレ期待が高止まりして雇用も堅調ななかで追加利上げが必要と判断した」とする一方、「サイクロン被害の短期的な生産活動と物価への影響を注視する必要がある」として利上げ幅を縮小したとみられる。他方、影響が一巡した後について「インフレ圧力に拍車が掛かる可能性がある」として「労働力不足を理由に賃金上昇圧力が強まる」との見通しを示した上で、「インフレ率を目標域に回帰させるためには一段の引き締めを実施する必要があり、金融政策の目標実現に向けて改めて強い意志を共有している」とする考えを示した。なお、今回の決定については「利上げ幅(50bpと75bp)を検討した」とさらなる大幅利上げの可能性も検討されたとしており、同行内ではインフレ抑制が重視される状況は変わっていないと判断出来る。また、同時に公表した四半期ごとの金融政策報告において、先行きのOCRについて「今年10-12月に5.50%に達する」との見通しを示すなど、昨年11月時点(今年7-9月に5.50%)から1四半期後ろ倒しされるも高水準になるとの見方を維持するとともに、同国経済について「今年半ばから数四半期に亘ってリセッション(景気後退)に陥る可能性があるが、その期間については極めて不確実性が高い」と改めて警戒感を示した。NZドル相場を巡っては、足下では米FRB(連邦準備制度理事会)の金利高止まりが意識される形で米ドル高圧力が再燃する動きがみられるものの、改めて中銀のタカ派傾斜が確認されたことで底堅い展開が続くと見込まれる。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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