FRBは利上げ継続も利上げ停止に向け声明文を変更 (23年1月31日、2月1日FOMC)

~2月FOMCで25bpに利上げ幅を縮小しFFレート誘導目標は4.50-4.75%~

桂畑 誠治

23年1月31日、2月1日に開催されたFOMCで、FRBは予想通り利上げ幅を25bpに縮小し、政策金利であるFFレート誘導目標レンジを4.50~4.75%に引き上げることを全会一致で決定した。FRBは、労働市場の過熱が続いているものの、インフレが低下し始めたこと、政策金利の大幅な引き上げの効果にタイムラグがあること、消費、生産活動が鈍化していることを受け利上げ幅を縮小した。

今後の利上げに関して、声明文では前回同様「委員会はインフレ率を徐々に2%に戻すのに十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、目標レンジの引き上げを継続することが適切だとみている」とFFレート誘導目標レンジは4.50~4.75%まで引き上げられたが、引き続き利上げが必要であるとの見方を維持した。

パウエルFRB議長は「財や住宅の分野では価格上昇圧力は緩和しているか、あるいは間もなく緩和する見通しである」との見方を示したが、「食料、エネルギー、住宅を除いたインフレは根強い」と依然インフレ圧力が強いことを指摘した。そのため、「勝利宣言やもう安心との考えは極めて時期尚早」であり、「仕事は完全に終わっていない」とインフレについて慎重な見方を示した。また、パウエルFRB議長は、まだ政策金利が十分に景気抑制的ではないため「今は利上げを停止する時ではない」との見方を示した。一方で、「引き締め過ぎは望んでいないし、その動機もない」と過度な利上げを行わないことを強調した。

ターミナルレートついて、パウエル議長は「22年12月時点のFF金利のターミナルレート予想の中間値は5.00〜5.25%だった」と、12月のFOMC参加者予想に基づき「FOMC、景気抑制水準へあと2回ほどの利上げを協議中」と現時点での見方を示した。もっとも、3月公表予定の新しい予想では、3月までのデータを踏まえ、必要ならその水準をさらに引き上げたり、引き下げたりする可能性があると3月のFOMCまでの経済指標次第でターミナルレートが変わるとの認識を示した。実際、12月のインフレはFOMC見通しを若干下振れており、1、2月も小幅下振れるとみられ、3月公表予定のFOMC参加者のターミナルレート予想は、5.00%に下方シフトすると予想される。

金融政策のフォワードガイダンスに関する声明文では、今回「将来の目標レンジの引き上げの程度を判断するうえで、委員会は累積した金融政策引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす遅行効果、経済・金融の動向を考慮する」と前回「将来の目標レンジの引き上げペースを決定する際に、委員会は累積した金融引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす効果の遅行性、経済・金融の動向を考慮する」と、“利上げ幅”から“政策金利の水準”に文言が変更された。インフレが目標に達していない中で、これまでの大幅利上げの累積的な効果、経済活動やインフレに遅れて顕在化する影響、景気動向や金融環境の引き締まりなどを考慮して利上げを停止する方針を示した。インフレの下振れなど経済情勢次第では、3月のFOMC参加者の経済・金利予想で利上げ打ち止めの見通しが公表され、5月のFOMCにかけてインフレの低下が続いていれば、5月FOMCで政策金利を据え置き、様子見に転じる可能性が高まった。

利下げの可能性に関して、FRB議長は「経済成長が予想通りなら、年内の利下げは適切でない」との認識を示し、「時期尚早な金融緩和への切り替えを控えるべきなのは過去の例を見れば明白」との見方を示した。3月のFOMC参加者の金利予想でインフレ予想の小幅の下方シフトを受け、ターミナルレートが5.00%に下方シフトしても、プラスの経済成長が持続するとの予想が維持されるとみられ、23年の利下げは予想されず、金融市場と異なる見方が続こう。

バランスシートの縮小策について、以前に発表した計画通り保有証券の圧縮を月間上限額950億ドルで継続する方針が確認された。内訳は、米国債の上限が600億ドル、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限が350億ドル。

FOMC声明文の景気判断は、前回同様「最近の経済指標は消費や生産の緩やかな伸びを示している」と、米経済の緩やかな成長を指摘した。雇用情勢についての判断は前回同様「ここ数カ月の雇用の伸びは堅調で、失業率は低水準にとどまっている」と労働市場が逼迫しているとの認識を維持した。同様に、パウエル議長も労働市場が逼迫したままであるとの認識を示した。

インフレについて声明文で今回「インフレは幾分緩和したが、高止まりしている」と前回「パンデミックに絡む需給の不均衡、食品とエネルギー価格の上昇、幅広い物価圧力を反映し、インフレ率は高止まりしている」からインフレの低下を指摘した。

ロシアのウクライナ侵略戦争の影響に関して、声明文で前回同様「ロシアの対ウクライナ戦争は甚大な人的・経済的な苦しみをもたらしている」としたうえで、今回「世界的な不透明感の高まりを招いている」と前回の「侵攻と関連事象がインフレ押し上げの一因となっており、世界の経済活動の重しになる可能性が高い」から、足元での世界景気の持ち直し、インフレの低下を受け、ロシアの侵略戦争の悪影響が小さくなっていると判断された。ただし、西側諸国によるウクライナへの軍事支援の拡大、ロシアの継続的な民間人殺害などもあり、世界的な不透明感の高まりを招いているとの表現を残した。

リスクとして、前回同様「委員会はインフレリスクを注意深く観察している」とFRBがインフレ動向を注視していることを強調した。

適切な金融政策スタンスの評価に関して「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と金融政策を柔軟に運営する方針であることを強調した。そのうえで、金融政策の決定について今回「委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する」と前回の「委員会の評価は、公衆衛生、労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する」から、公衆衛生との文言を削除した。議長は、新型コロナウイルスが米国経済のリスクではなくなったとの判断を示した。

【FOMC参加者による経済・金利予測:22年12月】

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、22年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+0.5%と前回9月の+0.2%から上方修正された。一方、23年+0.5%(前回+1.2%)、24年+1.6%(前回+1.7%)と引き下げられた。ただし、四半期でマイナス成長が予想されていないように、パウエル議長は「GDP予測はリセッションにあたらない」との考えを強調した。

失業率の予測(10-12月期の平均値)は、22年が3.7%(前回3.8%)と小幅下方修正されたが、23年以降では、23年4.6%(前回4.4%)、24年4.6%(前回4.4%)、25年4.5%(前回4.3%)と労働市場の若干の悪化を予想している。

インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)では、PCEデフレーターが22年+5.6%(前回+5.4%)、23年+3.1%(前回+2.8%)、24年+2.5%(前回+2.3%)、25年+2.1%(前回+2.0%)と上方修正され、25年まで目標の+2%を上回り続けると予想されている。PCEコアデフレーターは22年+4.8%(前回+4.5%)、23年+3.5%(前回+3.1%)、24年は+2.5%(前回+2.3%)と上方修正された。25年は+2.1%(前回+2.1%)と変更されなかった。ともに、インフレの緩やかな低下が予想されている。

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、23年5.125%(前回4.625%)、24年4.125%(前回3.875%)、25年3.125%(前回2.875%)と予測期間を通じて上方シフトした。23年にかけて利上げを継続した後、24、25年に利下げが適切になると予想された。ただし、25年でも3.125%と中立金利(2.5%)を上回る金融引締め水準が適切とされた。また、長期は2.5%(前回2.5%)と中立金利の見方に変化はなかった。

図表1
図表1

図表2
図表2

桂畑 誠治


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ