インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

豪準備銀、6会合連続の利上げも、景気の不確実性に配慮し利上げ幅を縮小

~豪ドルの対米ドル相場は上値が抑えられるが、対照的に対日本円相場は底堅い展開が見込まれる~

西濵 徹

要旨
  • 足下の世界経済は全体的に減速が意識されつつある。他方、米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜は世界的なマネーフローに影響を与えている。豪州では商品高に加え、米ドル高による豪ドル相場の調整もインフレ昂進を招いている。また、低金利政策の長期化やコロナ禍を受けた生活様式の変化は不動産市況の上昇を招いた。よって、豪中銀は5月以降断続的な利上げに動いた。物価高と金利高の共存は景気に冷や水を浴びせると懸念されるが、足下の景気は堅調な雇用と外需が下支えする展開が続く。一方、不動産市況が一転して頭打ちの動きを強めることで幅広い経済活動への悪影響が懸念される。こうしたことから、中銀は4日の定例会合で6会合連続の利上げを決定するも、利上げ幅を25bpに縮小した。先行きも追加利上げに含みを持たせたが、景気への不透明感から小幅利上げに留める可能性が高い。豪ドルの対米ドル相場はタカ派度合いの差が重石になると見込まれるが、政策の方向性の違いは対日本円相場の底堅さに繋がるであろう。

足下の世界経済を巡っては、中国による『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥が中国景気のみならず、サプライチェーンを通じて世界経済の足かせとなっている上、商品市況の上振れによる世界的なインフレを受けた米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀のタカ派傾斜により欧米など主要国景気も頭打ちの様相を強めるなど、全体的に景気減速が警戒されている。他方、米FRBなど主要国中銀によるタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えており、多くの国が資金流出に直面しているほか、米ドル高を反映して通貨安が進むなどの動きもみられる。豪州においては、商品市況の上振れに加え、米ドル高を受けた豪ドル安を反映した輸入物価の押し上げがインフレ圧力を招くなか、コロナ禍対応を目的とする財政及び金融政策の総動員による景気回復の進展も重なり、直近4-6月のインフレ率は中銀(豪準備銀)の定めるインフレ目標を大きく上回り約21年ぶりの水準に加速している。また、コロナ禍対応を目的とする金融緩和による金融市場のカネ余りが長期化した結果、コロナ禍を受けた生活様式の変化に伴う住宅需要も重なり不動産市況は大きく上振れするなど、その副作用が顕在化してきた。よって、中銀は今年5月に約11年半ぶりの利上げを決定したほか(注1)、その後も断続的な利上げに加え、大幅利上げに動くなどタカ派傾斜の動きを強めている(注2)。しかし、国際金融市場においては米FRBなど主要国中銀との『タカ派度合い』の違いを理由に豪ドルの対米ドル相場は調整の動きを強める展開が続いている。なお、物価高や中銀による断続的な利上げが景気に冷や水を浴びせることが懸念されるものの、足下の景気は堅調な雇用と経済活動の正常化を受けたペントアップ・ディマンドの発現が家計消費を押し上げるとともに、商品高による資源輸出の拡大や豪ドル安も追い風とする外国人観光客の順調な流入の動きが下支えする展開が続いている(注3)。ただし、上昇の動きを強めた不動産市況は中銀による断続的な利上げ実施のほか、当局による規制強化の動きも重なりシドニーやメルボルンなど都市部を中心に一転して頭打ちの動きを強めており、前年比ベースの伸びもマイナスに転じるなど市場を取り巻く環境は一変している。同国の銀行セクターは資産の約3分の2を住宅ローンが占めるなど不動産市況に左右されやすいなか、市況悪化による逆資産効果は家計消費のみならず、銀行セクターの貸出態度の悪化を通じて幅広く経済活動に悪影響を与えることが懸念される。他方、上述のように金融市場における米ドル高圧力が豪ドル相場の重石となっている上、インフレも高止まりしていることを受け、中銀は4日の定例会合において6会合連続の利上げを決定するも、利上げ幅を前回まで4会合連続の50bpから25bpに縮小させ、政策金利は2.60%、為替決済残高の適用金利も2.50%としている。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「インフレ率を長期的に目標域に戻すことを目的とする」とした上で「今後もさらなる引き上げが必要になる可能性がある」としつつ、「これまで短期間のうちに大幅に引き上げられたことから25bpの利上げとした」との考えを示した。ただし、物価動向について「他国同様に高過ぎる」としつつ「世界的な要因に拠るところが大きいが、国内需要が供給能力に対して強いことも一因になっている」として、先行きは「今後数ヶ月は一段の上振れが見込まれるが、その後は目標域に低下する」とし、インフレ見通しは「メインシナリオでは今年は+7.75%前後、来年は+4%強、再来年は+3%前後になる」との前回見通しを据え置いている。また、景気動向は「交易条件の改善が国民所得を押し上げ、極めてタイトな労働需給も追い風に家計消費は堅調な推移が続いている」としつつ、先行きは「景気の鈍化を受けて雇用環境はある程度悪化が見込まれる」ほか「賃金上昇率は回復するも他の新興国と比べて低水準に留まっている」とし、「労働コストと企業部門の価格設定行動を注視する」とした。その上で、先行きの景気を巡る不確実性について「足下で悪化が続く世界経済の見通し」と「金融引き締めの家計消費への影響」を挙げつつ、「不動産市況は調整しているものの、労働需給のひっ迫が続いており、家計部門の貯蓄率も依然コロナ禍前を上回っている」として、物価高と金利高の共存による影響を注視する考えを示した。一方、今回の利上げについて「持続可能な需給バランスの醸成に不可欠」とした上で、先行きは「追加引き上げが見込まれるが、世界経済や家計消費、賃金及び物価動向を注視しつつ、その規模やタイミングはデータ次第」とする考えを示した。今回利上げ幅を縮小させたのは同行が経済の不確実性が高まっていると判断したと捉えられる一方、米FRBのタカ派傾斜が続いている上(注4)、景気を巡る不透明感が意識されることも豪ドルの対米ドル相場の重石となる。他方、対照的に金融政策の方向感の違いを反映して豪ドルは日本円に対しては引き続き堅調な推移が見込まれる。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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