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2022.05.30
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コロンビア大統領選、「左派」と「右派ポピュリズム」による決選投票へ
~政策の方向性の大転換は不可避、中南米での「左派ドミノ」は同国にも及びつつある~
西濵 徹
- 要旨
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- 南米コロンビアでは29日に大統領選(第1回投票)が実施された。同国政界では伝統政党が政権運営を担ってきたが、ここ数年は景気低迷やコロナ禍対応を巡って反政府デモが度々激化しており、世論調査では元ゲリラで左派のペトロ氏が一貫して首位を走ってきた。ドゥケ現政権の政策継承を謳うグティエレス氏がペトロ氏を追う展開が続いたが、最終盤では右派ポピュリズムのエルナンデス氏が猛追する動きもみられた。選挙結果はペトロ氏が首位に、エルナンデス氏が2位に付けるなど伝統政党の候補者が脱落した。決選投票は左派と右派ポピュリズムという対照的な2名だが、中南米での「左派ドミノ」の波は同国にも及びつつある。
南米コロンビアでは29日、4年に一度の大統領選挙(第1回投票)が実施された。大統領選には計8人の候補が立候補するなど4年前の前回選挙と同様に乱戦となり(1名は最終盤で撤退)、第1回投票において半数を上回る票を得る候補は現れず、上位2名により来月19日の決選投票に持ち越されることとなった。同国政界では1958年に軍事政権が崩壊して以降、2002年まで基本的に二大政党(保守党、自由党)による政治体制が継続し、2002年に誕生したウリベ元大統領、その後を継いだサントス前大統領はともに自由党出身、現職のドゥケ大統領も保守政党出身であるなど、伝統政党が政権運営を担ってきた経緯がある。しかし、事前の世論調査においては、2018年の前回大統領選で決選投票に残るも惜敗したゲリラ出身で左派連合が推す元ボゴタ市長のグスタポ・ペトロ氏(上院議員)が一貫して首位を走る展開が続いた。2位にはドゥケ現政権の路線を継ぐ中道右派連合が推す前メジデン市長のフェデリコ・グティエレス氏が付けてきたが、終盤にかけては独立系政党が推す実業家でポピュリズム的な色合いが強いとされる前ブカラマンガ市長のロドルフォ・エルナンデス氏が猛追する動きがみられた。こうした選挙戦が展開された背景には、ここ数年の同国の政治情勢を取り巻く環境変化が大きく影響している。南米諸国では、2019年に国際商品市況の低迷長期化をきっかけとする雇用、所得環境の悪化を受けて反政府デモの動きが広がり、ボリビアでは当時の大統領が辞任、亡命に追い込まれたほか、エクアドルやチリでも反政府デモが激化するなど政治が『液状化』する動きがみられ、同国にもその影響が及んだ経緯がある(注1)。さらに、一昨年来のコロナ禍に際しては度々感染拡大が直撃して景気に下押し圧力が掛かるなか、昨年に政府が財政健全化や低所得者支援に向けた財源確保を目的とする増税策を発表したことを機に反政府デモが再燃する事態に発展した(注2)。また、昨年後半以降の中南米諸国ではコロナ禍対応が一巡する一方、国際商品市況の底入れも追い風にインフレが顕在化しており、国際金融市場での米ドル高圧力を受けて通貨安が進み、物価と通貨の安定を目的に中銀は利上げ実施を迫られる動きがみられた(注3)。コロンビアにおいても、インフレの上振れや通貨ペソ安懸念を理由に中銀は昨年9月以降6会合連続の利上げ実施に追い込まれており、物価高と金利高の共存が実体経済に悪影響を与えることが懸念されてきた。なお、大統領選での争点は、ここ数年の反政府デモの活発化に加え、コロナ禍を経た景気減速を受けて貧困層が増えたことも影響して社会経済格差の問題が最も注目を集めるとともに、汚職対策や長年に亘る政府とゲリラとの間の内戦状態を受けた和平プロセスの方法及び治安対策の行方も注目された。なかでもペトロ氏は、年金の再分配や公立大学の無償化、失業者を国が雇用することなどを公約に掲げるなど社会経済格差の縮小を政策の柱に置くとともに、同国最大の武装組織であるELN(民族解放軍)との和平交渉を進める考えをみせる一方、原油及び天然ガスの新規開発をすべて停止するといった政策を掲げた。一方、上述のようにグティエレス氏はドゥケ現政権の路線を継承しており、財政健全化を図るとともに、コカイン対策としてドゥケ現政権が再開を提案した農薬の空中散布の実施、シェール原油及びガス開発を進める一方、ELNとの和平交渉には前向きの姿勢をみせた。こうしたなか、エルナンデス氏はSNSを駆使する選挙戦を展開して、既存政治や役人支配を否定する反汚職を訴えるとともに、緊縮財政(倹約)を図る一方でシェール原油及びガス開発の推進を図るほか、医療用麻薬の合法化を訴えるなどポピュリズム的な手法により最終盤で支持を拡大させた。こうしたことを受けて、第1回投票ではペトロ氏が40.33%の票を得て首位となり、2位には最終盤で猛追したエルナンデス氏が28.15%の票を得る一方、グティエレス氏の得票率は23.92%に留まりエルナンデス氏に抜かれたため、伝統政党を経ていない2名による決選投票に持ち込まれる。決選投票は左派(ペトロ氏)と右派ポピュリズム(エルナンデス氏)という両極端な選択肢となるが、エルナンデス氏は反汚職を掲げているものの、同氏はブカラマンガ市長時代の汚職容疑で捜査対象となるなど自縄自縛状態となるリスクがあり、ペトロ氏が勝利する可能性が高いと見込まれる。ただし、いずれの候補が勝利した場合においても政策の方向性は大きく変わる可能性が高い上、伝統的に親米路線を維持してきた外交政策にも影響を与えることは必至と見込まれる。ここ数年の中南米諸国では『左派ドミノ』とも呼べる動きが広がりをみせてきたが、コロンビアにもその『波』が及ぶ可能性は着実に高まっていると捉えられる。

注1 2019年11月22日付レポート「南米で広がる政治の「液状化」の動きがいよいよコロンビアに」
注2 2021年5月14日付レポート「コロンビア、感染収束の見通しが立たず反政府デモで事態悪化懸念」
注3 2021年9月10日付レポート「中南米諸国、新型コロナの影響一服の背後でインフレ対応を迫られる」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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