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2022.04.06
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ロシアのデフォルトリスク再浮上
~米政府が4日の元利払いの履行を認めず~
田中 理
- 要旨
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- 米国政府はロシア向けの金融制裁の運営を強化し、ロシアが米国の金融機関に保有するドル資金を使ってドル建て国債の支払いを行うことを禁止した。4日に期限を迎えた元利払いは履行されなかった模様で、30日の猶予期間中にロシアが手元のドル資金で返済を履行しない限り、1998年以来の国債デフォルトとなる。仮に返済を履行した場合も、ロシアの債務返済は綱渡りが続く。特例措置が期限を迎える5月25日以降に、米国の金融機関がロシアの債務返済に関連した業務を継続できるかが次の焦点となる。
ロイター通信などは5日、米財務省広報官の談話として、ロシアが米国の金融機関の口座に保有するドル資金を用いて、ドル建て国債の元利払いを履行することを禁止したと報じている。筆者は1日付けレポート「ロシアのXデーを通過」において、ロシアが4日に返済期限を迎えるドル建て国債の元本の約7割を買い戻し、残額をドル建てで支払う意向を示唆したことを受け、年内最大の債務返済を乗り切り、当面のデフォルトリスクが後退した可能性があると指摘した。だが、ロシア軍によるウクライナ市民虐殺の疑いが発覚したことなどを受け、米国政府はロシア制裁の実効性を一段と強めることを決断した模様だ。
ロシアによるウクライナ進攻後、米国はロシアが米国の金融機関に保管する外貨準備を凍結したが、こうした資金をドル建て国債の元利払いの履行に用いることを完全には禁止せず、ケース・バイ・ケースで承認してきたとされる。今後はロシアが米国の金融機関に保有する口座を通じて、ドル建ての債務返済を履行することを禁止すると同広報官は伝えている。こうした米国政府の方針転換を受け、ロシアのドル建て国債の支払いを仲介する米国の金融機関は、4日に返済期限を迎えた5億5240万ドルの元本返済と8400万ドルの利払いの手続きを行わなかった模様だ。30日間の猶予期間中にロシア政府が凍結されていない手元のドル資金や資源輸出などから新たに得られる外貨収入を用いて返済しない限り、1998年以来(外貨建てとしては1918年以来)の国債デフォルトとなる。
4日に返済期限を迎えた元利払いをロシアが猶予期間中にドルで支払い、デフォルトを回避したとしても、米国政府の制裁方針次第で、ロシアの債務返済は綱渡りの状況が続くことになる。米国政府は経済制裁の一環で、米国の金融機関がロシア政府や関連機関と金融取引を行うことを禁じている。元利払いを受け取るのに必要な業務は制裁の対象外としているが、5月25日以降も元利払いを受け取るには関連の免許が必要としている。5月27日には7100万ドルのドル建て利払いを控えており、特例措置が延長されない限り、ロシアは新たなデフォルトリスクに直面する。
田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

