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2021.06.03
新興国経済
新型コロナ(経済)
原油
産油国経済
OPECプラスは7月までの協調減産の段階的縮小を維持
~8月以降の協調減産枠はイラン核合意を見定める姿勢、当面の原油価格は高値圏での推移を予想~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の世界経済は、欧米や中国など主要国で新型コロナウイルスの感染収束やワクチン接種により景気回復が進む一方、新興国で変異株による感染再拡大を受けて行動制限が再強化されるなど好悪双方の材料が混在する。ただし、国際金融市場は引き続き活況を呈するなか、OPECプラスの協調減産は段階的に縮小する一方、世界経済の回復期待による需要拡大見通しを反映して国際原油価格は上昇傾向を強めている。
- OPECプラスは4月会合で5月から7月までを対象に協調減産枠を段階的に縮小する決定を行う一方、足下で原油価格は底入れしたことで減産枠の行方に注目が集まったが、1日の閣僚級会合では7月までの段階的縮小を維持した。なお、来月の次回会合では8月以降の協調減産枠を決定する一方、イラン核合意の行方は決定に影響を与えることは必至である。当面の原油価格は高値圏での推移が続くと予想される。
足下の世界経済を巡っては、欧米や中国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染収束が進み、ワクチン接種が広がるなど景気回復を促す動きがみられる一方、アジアをはじめとする新興国で感染力の強い変異株による感染再拡大を受けて行動制限が再強化される動きもみられるなど、好悪双方の材料が混在する状態となっている。国際金融市場においては、引き続き全世界的な金融緩和を背景に『カネ余り』の状況が続く一方、春先以降は米国景気の回復やインフレ懸念をきっかけに米長期金利が上昇傾向を強めるなど米FRB(連邦準備制度理事会)の動きに注目が集まるなど動揺が懸念されたものの、長期に亘り現行の緩和政策を維持する「市場との対話」に動いたことで落ち着きを取り戻している。結果、米長期金利の上昇に歩を併せる形で上昇圧力を強めた米ドル相場は一転調整しているほか、上述のように主要国を中心に景気回復が見込まれていることも追い風に、株式をはじめとする資産価格は上昇傾向を強める展開をみせている。さらに、米長期金利の上昇一服を受けて投資家の間にはより高い収益を求めて新興国に回帰する動きがみられるほか、米ドル高の一服の動きは米ドル建資産とみなされる原油をはじめとする商品市況の押し上げ圧力に繋がるなど、幅広い資産価格の上昇を促している。国際原油価格を巡っては、昨年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けた世界経済の減速による需要低迷が懸念されたことに加え、過去数年に亘り協調減産による共同歩調を採ってきたサウジアラビアをはじめとする石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非OPEC加盟国(OPECプラス)による枠組が瓦解し 1、その後に一時マイナスとなる異常事態に見舞われた。しかし、そうした異常事態を経てOPECプラスは過去最大水準の協調減産を実施することで合意したほか、枠外の国々も減産の動きに呼応するとともに、主要国は戦略備蓄を積み増すなど価格安定に向けた取り組みを強化させた。こうした動きに加え、主要国を中心とする世界経済の回復による需要拡大の動きを反映してその後の国際原油価格は底入れの動きを強めたほか、OPECプラス内で協調減産実施による『遺失利益』を嫌うロシアなどが増産に向けた意欲を強める動きをみせた。よって、昨年8月以降はOPECプラスによる協調減産枠を縮小する一方で減産順守率の低い国に追加減産を求めるなど実質的な減産強化が図られたほか2 、年明け以降は協調減産幅が一段と小幅縮小された3 。また、5月から7月にかけては、世界的に感染再拡大が懸念されたにも拘らず、OPECプラスによる協業減産の枠組を段階的に縮小するとともに、サウジアラビアが実施した自主的な追加減産も段階的に縮小するなど大きく減産を進める決定がなされた4 。なお、OPECプラスによる段階的な協調減産の縮小を決定した背景には、世界経済の回復期待を追い風に国際原油価格が急激に上昇傾向を強めたため、政権交代を受けて誕生した米バイデン政権にとって景気回復が至上命題となるなかで原油高が景気回復に冷や水を浴びせることを警戒して、OPECの盟主であるサウジアラビアに『圧力』を掛けたとの思惑もみられた。ただし、現実には協調減産の縮小は小幅なものに留まる一方、上述のように世界経済は主要国を中心に回復の度合いを強めるなど需要拡大期待が高まっており、足下の国際原油価格はWTIベースで1バレル=70ドルをうかがう水準となっている。

こうしたなか、1日のOPECプラスによる閣僚級会合前に開催された合同技術委員会(JTC)では、今年の世界の原油需要の伸びは約600万バレルとする従来見通しを据え置くなど、4月会合において決定された7月までを対象とする協調減産枠の段階的縮小は維持されるとの見方が強まった。事実、1日のOPECプラスの閣僚級会合においては、OPECプラスの枠組による7月までを対象とする協調減産枠の段階的縮小を維持することを決定した。ただし、国際的な原油供給を巡っては、世界で第8位の産油量を誇るイランにおいて今月18日に次期大統領選が予定されるなか、それを前にイラン核合意の再構築を目指す交渉が関係国の間で進展しており、仮に交渉がまとまる事態となれば米国のイランに対する経済制裁が緩和されるなど、原油供給が大幅に拡大して需給が緩む可能性がある。こうしたことから、足下の国際原油価格は上述のように世界経済の回復期待を反映して上昇ペースを強める動きをみせているにも拘らず、OPECプラスの枠組での協調減産を一段と縮小するなど踏み込んだ対応に『二の足』を踏んだと考えられる。なお、次回のOPECプラスによる閣僚級会合は7月1日に開催が予定されており、同会合ではイラン核合意を巡る状況などを踏まえて8月以降の協調減産枠に関する決定を行うことが確認された。当面の国際原油価格は供給拡大が緩やかに進む一方、世界経済の回復による需要拡大への期待が高まると見込まれ、高値圏での推移が続く可能性が高まっていると予想され、イラン核合意などの外部要因を除けば8月以降も段階的な協調減産枠の縮小が図られるであろう。
1 2020年3月9日付レポート「ロシアの「強情」とサウジの「逆切れ」でOPECプラスが瓦解」
2 2020年6月8日付レポート「OPECプラスは減産延長も実効性に疑問 シェールの動向にも懸念」
3 2020年12月4日付レポート「OPECプラス、来年1月から協調減産の小幅縮小(日量50万バレル)で合意」
4 4月2日付レポート「OPECプラス、5月以降は予想外の協調減産の段階的縮小へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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