OPECプラス、5月以降は予想外の協調減産の段階的縮小へ

~協調減産縮小は相場の重石となる一方、当面の行方は金融市場環境が左右する展開が続こう~

西濵 徹

要旨
  • 世界経済は新型コロナウイルスのパンデミックによる景気減速から底入れの動きを強めてきたが、欧州での感染再拡大による行動規制の再強化や一部の新興国での感染再拡大など不透明感がくすぶる。OPECプラスは年明け以降、世界経済に対する楽観姿勢をみせるも協調減産を維持しており、サウジによる自主減産で減産が強化された結果、金融市場の動揺にも拘らず国際原油価格は比較的底堅い推移をみせてきた。
  • 一方、足下では感染再拡大が世界経済の回復に冷や水を浴びせる懸念が高まるなか、5月以降の協業減産枠については現状維持との見方が強まるとともに、市場ではサウジによる自主減産の動向に注目が集まった。しかし、最終的には5月以降は段階的に協調減産枠を縮小し、サウジも自主減産を縮小することで7月の協調減産枠は現状の4分の1程度縮小されることが決定した。閣僚会合の直前に行われたサウジと米バイデン政権との協議が影響したとみられる。先行きの国際原油価格は協調減産縮小を受けて頭打ちが予想される一方、米ドル相場の動向など国際市場環境とのせめぎ合いが続く可能性は高いと見込まれる。

足下の世界経済を巡っては、昨年以降の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)による景気減速を受けて、全世界的に財政及び金融政策の総動員による下支えが図られたことに加え、中国や米国といった主要国で感染収束ないし拡大一服により経済活動の正常化が図られていることもあり、景気は底入れの様相を強めている。さらに、全世界的な金融緩和を受けてその後の国際金融市場は『カネ余り』の様相を強めるなか、世界経済の回復も追い風に株式をはじめとする資産価格は上昇傾向を強めるなど活況を呈する展開が続いてきた。また、世界経済の回復が期待される展開が続く一方、OPEC(石油輸出国機構)加盟国やロシアなど一部の非OPEC加盟国による枠組(OPECプラス)は昨年5月に過去最大の協調減産の実施で合意し、その後の減産枠はわずかに縮小するも基本的に減産姿勢が維持されたため、国際原油価格は底入れの動きを強めてきた。なお、年明け以降の協調減産枠については世界経済の動向を細かく反映すべく月次ベースでの協議を経て決定する方針が採られたが 、ロシアなどが国際原油価格の底入れなどを理由に増産実施を主張する一方、原油価格の安定を目指すサウジアラビアは減産拡大を主張するなど平行線を辿る動きもみられた 。ただし、3月の協調減産枠については加盟国間で世界経済の先行きに対する楽観的な見方が共有されるも現行の協調減産が維持されたほか 、今月についてもロシアとカザフスタンに小幅増産を容認するも、サウジアラビアが自主減産を継続することでOPECプラス全体としては協調減産の枠組が強化される展開が続いた 。他方、先月半ば以降の国際金融市場においては米長期金利の上昇をきっかけに新興国への資金流入の動きが先細りする兆候が出ており、米ドル高圧力が強まるなかで『米ドル建資産』としての色合いを有する国際原油価格には一転して頭打ちすることが懸念された。さらに、足下では欧州で感染力の強い変異株の感染が拡大して行動制限が再強化される動きがみられるほか、一部の新興国においても変異株の感染拡大が確認されており、世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が再拡大するなど『第4波』が顕在化している。こうした状況を反映して底入れの動きを強めてきた国際原油価格は一服しており、来月以降の協調減産の行方に少なからず影響を与えるとの見方が強まってきた。

図1
図1

OPECプラスの閣僚会合の前に開催された合同技術委員会(JTC)においては、足下において世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、欧州などで感染封じ込めに向けた都市封鎖(ロックダウン)が再開されるなど行動制限の動きが広がりをみせていることを受けて、世界的な需要の回復に対する不透明感への懸念が共有された模様である。その上で、足下におけるOECD(経済協力開発機構)加盟国の原油商業在庫について「調整が進んでいるものの2015~19年の平均値を引き続き上回り、市場構造面におけるボラティリティが高いことは市場が脆弱な状況にあることを示唆している」との見方を示すなど、過去数ヶ月に比べて世界経済に対する見方が『弱気』に傾いていることが示唆された。事実、事前の報道などにおいてもこれまで増産を主張する場面が多かったロシアが、自国の産油量については季節的な需要拡大を勘案して小幅拡大を求める一方、OPECプラス全体としての協調減産の維持を支持するとの見方が示されるなど、事前には協調減産の維持が既定路線となっていたと考えられる。他方、OPECプラスによる協調減産はサウジアラビアによる追加的な自主減産(日量100万バレル)によって事実上強化されるなど『バッファー役』を果たしてきたことから、今後は自主減産を継続するか否かに注目が集まった。こうしたなか、閣僚会合(ONOMM)を経て5月以降については協調減産枠を段階的に縮小することで合意しており、OPECプラスによる協調減産枠は現状(日量690万バレル)から、5月(日量655万バレル)、6月(日量620万バレル)、7月(日量580万バレル)と縮小される。さらに、サウジアラビアによる追加的な自主減産も5月(日量75万バレル)、6月(日量40万バレル)、7月(ゼロ)に縮小するなど5月以降は全体的にも協調減産の縮小が進められる。結果、7月のOPECプラス全体による協調減産は(日量580万バレル)と現状(日量690万バレル+サウジによる自主減産(日量100万バレル))から4分の1程度が縮小されることになる。今回の決定が最終段階で急転直下の協調減産の段階的縮小となった背景には、このところの国際原油価格の上昇を受けて米国やインドなどがOPECプラスに対して価格抑制に向けて協調減産の縮小を求める姿勢をみせてきたほか、ONOMMの直前にはサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相と米国のグランホルム・エネルギー長官が電話会談を行っており、それにより議論の『潮目』が変わったとみられる。今回の決定については「原油消費国との協議が影響を与えたことはない」との考えを示す一方、今月28日に予定される次回会合について「産油量の水準が調整される可能性がある」としており、国際原油価格の動向をみつつ方針が変更される可能性に含みを持たせた。なお、金融市場においては協調減産の段階的縮小決定にも拘らず市場の活況を追い風に国際原油価格は堅調な推移をみせているものの、今後は世界経済を巡る不透明感による需要鈍化が意識されるなかでの供給拡大を受けて、需給緩和期待が相場の重石となる展開も予想されるなか、米ドル相場の動向を含めた市場環境とのせめぎ合いが続くと見込まれる。

図2
図2

以 上

西濵 徹

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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