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2025.07.07
ライフデザイン
キャッシュレス
デジタル化・DX
消費生活
シニアのポイ活事情
~キャッシュレス化が後押しするシニアのポイントサービス利用~
鄭 美沙
1.キャッシュレス化に伴うポイントサービスの普及
2024年の個人消費に占めるキャッシュレス決済比率は42.8%であった(注1)。政府は、2018年に策定した「キャッシュレス・ビジョン」において、その比率を2025年6月までに4割程度にする目標を掲げていたが、この目標は前倒しで達成されたことになる。2018年のキャッシュレス比率は24.1%であり、6年間で1.5倍以上に増加している。
キャッシュレス決済の普及とともに、重要性が増しているのが「ポイント」である。ポイント還元はキャッシュレス決済のメリットであり、キャッシュレス決済事業者は利用者を自社サービスに引き付けるために積極的に導入している。矢野経済研究所によると、2023年度の国内ポイントサービス市場規模は約2.7兆円で(注2)、今後も拡大傾向にある。
ポイントの貯め方も多様化している。キャッシュレス決済の利用やポイントカードの提示だけでなく、広告の閲覧やアンケートへの回答、移動情報や歩数などのヘルスケア情報の連携など、様々な方法が広がっている。このようにポイントを貯めて活用することは「ポイ活」と呼ばれ、キャッシュレス化の進展とともに、幅広い年代に普及しつつある。
当研究所は第一生命カードサービスと共同で、50~79歳の男女2,400人を対象とした「高齢者の生活と意識に関する調査」を2024年に実施した。本稿は、同調査をもとに、ポイ活のシニア層への広がりと、どのようなシニアがポイ活をしているのかを考察する。なお、今後数年でシニア層に加わる人も視野に入れ、本稿では調査対象である50歳以上をシニアと呼ぶ。
2.シニアのキャッシュレス決済とポイ活の状況
まず、50歳以上のシニア層におけるキャッシュレス決済の普及状況をみる。直近3カ月で食品の購入時に最も頻繁に利用した決済方法は、現金(36%)であった(図表1)。一方、クレジットカードも34.7%と同程度であり、交通系ICカードとスマホ決済を合わせたキャッシュレス決済は56%に達している。一般的に、決済金額が高い場合にクレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済が利用される傾向があるが(注3)、食品のような日常的な買い物においても、半数以上が主な決済方法として利用しており、キャッシュレス化が日常生活にも普及していることがうかがえる。

次に、ポイ活について、具体的にどのような方法でポイントを貯めているかをみる(図表2)。「よくする」との回答が最も多かったのは、「買い物の時、ポイントカードを提示してポイントをためる」(44.3%)であり、次いで「ホームページ上のポイントサイトを利用してポイントをためる」(33.8%)であった。

また、図表2で示したポイ活内容の6項目について、いずれか1つでも「よくする」と回答した人は、全体の56.7%にのぼった(図表省略)。シニアの半数以上が、何らかのポイ活を日常的に実践していることがわかる。年代別では、50代が57.8%、60代が57.5%、70代が54.7%と、年代で大きな違いはみられなかった。本稿では、これらの人々を「ポイ活シニア」と定義し、どのような人々がポイ活シニアに該当する傾向にあるのか、次節で確認する。
3.どのようなシニアがポイ活をしているのか
上記図表2のポイ活内容の6項目のなかで、1つでも「よくする」と回答したポイ活シニアは、女性で62.4%、男性は50.9%であり、女性の方がポイ活を実践している割合が高い(図表省略)。中川(2024)は、女性は男性よりもポイントへの知覚価値が高いと指摘している。すなわち、ポイントカードの利用によって金銭的に得をしていると思ったり、そのポイントを欲しいと思うなど、女性の方がポイントの価値を高く感じる傾向にあるようだ。それは、日常生活で買い物を担っていることが女性に多く、日々の生活のなかでポイントのメリットを実感する場面が多いからかもしれない。
次に、金融資産額をみると、資産額が大きいほど、ポイ活シニアの割合も高まる傾向にあるが、100~300万円未満の人でもその割合は高い(図表3)。ただ、資産額にかかわらず、約5割以上の人がポイ活を実践している。多くの人に少しでも節約したいという意向があり、その手段としてポイ活が利用されているのだろう。

ポイ活は、ホームページ上でポイントを貯めたり、店舗でアプリのポイントカードを提示するなど、スマートフォンを活用する場面が多い。本調査では、8つのアプリ・デバイスについて、それぞれの利用状況をたずねた(ヘルスケアアプリ、地図アプリ、ショッピングアプリ、SNS、メッセージアプリ、動画視聴アプリ、ウェアラブルデバイス、家族向け写真・動画共有アプリ)(注4)。その結果、ポイ活シニアは、平均4.24個について「使ったことがあり、今後も使っていきたい」と回答した。一方、非ポイ活シニア(図表2のポイ活内容の6項目のなかで、「よくする」との回答が1つもない人)は平均3.43個と少なかった。アプリを使いこなせる、あるいは使いたいという意欲があるほど、ポイ活にも積極的であることがわかる。
さらに、ポイ活シニアは、スマートフォンで銀行の預金残高の管理やネットバンキングを行っている割合も高かった(図表4)。これらの行動には、金融リテラシーとデジタルリテラシーの両方が求められ、こうしたスキルがポイ活にもつながっていると考えられる(注5)。

4.無理のない自分らしいポイ活に向けて
以上、本稿ではシニアのポイ活の実態を紹介した。ポイ活シニアは、女性やスマートフォンのアプリを使いこなしている人に多くみられた。また、金融資産額については、資産額が大きいほどポイ活シニアの割合は高まる傾向にあるものの、資産額にかかわらず、幅広い人々にポイ活が普及していることがわかった。
ポイ活は、節約になると同時に、歩数に応じてポイントが獲得できるサービスを利用すれば健康増進にもなり、様々なメリットがある。他方、ポイントを貯めること自体に執着するなど、ポイ活は必ずしも経済合理性に基づく行動ではないことも指摘されている(寺地(2013))。ポイントが多く貯まるからと、本来必要のない商品まで購入してしまった人も少なくないだろう。また、ポイントを貯めることに熱中し、頻繁にアプリを起動するなど、過剰な労力を費やしているポイ活実践者もいるようだ。
また、中川(2024)は、実証分析を基にポイントを「貯金箱」に例え、ポイント利用は少額のポイントをコツコツ貯めていき、貯金箱が満杯になった時点で貯金箱を割って買物をするのによく似ていると指摘している。すなわち、ポイントが貯まるまでは、それを使用することに痛みを感じやすいが、ある程度貯まるとそのポイントを利用する際の痛みは軽減される。
本来、金額が同じであれば、支払い時の心理的負担も同じであるはずであるが、ポイントは「貯まったもの」といった感覚で捉えられやすいため、現金での支払いよりも心理的な抵抗が少ないケースがある。そのため、現金では購入を躊躇するような商品でも、ポイントがあれば購入してしまうという非合理な行動につながることがある。
つまり、消費者のポイ活は必ずしも合理的ではない一面がある。ポイ活が無駄な消費やストレスにつながらないよう、自分自身の消費傾向や行動のクセを理解し、何のためにポイ活をするのかを時々振り返ることが必要だろう。無理なく楽しめる範囲でポイ活を続け、結果的に節約や健康増進といったメリットを享受できる状態が、望ましいポイ活のあり方と考えられる。
また、貨幣と同じように使えるものの、その心理的な捉え方は異なる点もある。ポイントサービスは、シニア層にも浸透し、今後もその市場は拡大が予想されている。一方で、貨幣との知覚や効用などの違いはまだ十分に明らかになっていない。人々の生活をより一層豊かにするためのポイ活の普及に向けて、サービス提供者のあり方や消費者のリテラシーについて、さらなる議論と検討が進むことが望まれる。
【注釈】
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キャッシュレス決済比率とは、民間最終消費支出に占めるクレジットカード支払額・デビットカード支払額・電子マネー支払額・コード決済支払額の合計割合を指す。(経済産業省プレスリリース「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2025年3月))
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特定の企業・団体や企業グループが提供するサービスや商品の購入等に対して、発行されるポイントやマイレージ等を対象とし、市場規模は民間企業によるポイント発行額で算出している。
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経済産業省「消費者実態調査の分析結果」(2023年3月)
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各アプリ・デバイスについて「使ったことはありますか?」という設問に対し、「使ったことがあり、今後も使っていきたい」「使ったことはあるが、今後使う予定はない」「使ったことはないが、今後使ってみたい」「使ったことはないし、今後使う予定はない」の4件法で回答を得た。
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本調査はインターネット調査であるため、デジタルリテラシーが比較的高い層が調査対象となっている点は留意が必要だ。
【参考文献】
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第一生命カードサービス・第一生命経済研究所(2024)「高齢者の生活と意識に関する調査」
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寺地一浩(2013)「消費者行動に対するポイントの影響」社会情報学第2巻2号
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中川宏道(2024)「ポイントカードの消費者行動」千倉書房
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(株)矢野経済研究所「ポイントサービス市場に関する調査(2024年)」(2024年8月29日発表)
鄭 美沙
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 鄭 美沙
てい みさ
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ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: ライフデザイン・ライフコース、金融リテラシー
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