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2025.06.11
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新NISA、若者はどう使ったのか?
~「とりあえずインデックスファンド」の次に向けて~
鄭 美沙
- 目次
1. 4人に1人がNISA口座保有
新NISAがスタートしてから1年半が経過した。2022年に政府が掲げた資産所得倍増プランは、NISA口座数を1,700万件(2021年3月末)から5年間で倍の3,400万件まで拡大させることを目標にしている。この目標に対し、2025年3月末時点では2,646万口座(銀行などを含むNISA取扱全金融機関)となっている。
図表1は、証券会社における年代別のNISA口座数と、人口推計をもとに算出した口座保有率の推計を示している。保有率は30代が約4人に1人と最も高い。また、従来は年齢が高いほど投資をする傾向にあったが、新NISAでは20代の保有率が50代以上よりも高い。

SNSや動画サイト上には、新NISAを分かりやすく解説した投稿が多数ある。こうした情報に日常的にアクセスできる環境も、利用促進の一因になっているだろう。また、当研究所の調査によると、30代以下の74.7%が「自分の高齢期には公的年金に期待をしていない」と回答しており、将来不安も自助努力に向かわせる一因と考えられる(注1)。
2025年5月、日本証券業協会は、2024年に新NISAで金融商品を購入した7,610人を対象とする「新NISA開始後の利用動向に関する調査」を公表した。以下、同調査結果を中心に、実際に10~30代が新NISAでどのような投資を行ったのかをみていく。
2. 利用投資枠~半数がつみたて投資枠と成長投資枠を併用~
新NISAには、長期の積立・分散投資に適した投資信託を対象とする「つみたて投資枠」と、上場株式や幅広い投資信託を対象とし一括投資も可能な「成長投資枠」がある。つみたて投資枠は、毎月コツコツ積み立てる長期投資を利点とする。その趣旨のとおり、つみたて投資枠のみ利用している割合は、投資期間を長くとれる20代以下が37.0%と最も高い(図表2)。さらに、成長投資枠と併用する人は20代以下と30代では半数以上いる。たとえば、毎月の積立のほか、ボーナス時期などに一括投資を行う人が一定数いるのだろう。

なお、どちらの投資枠でも、年齢が低いほど1人当たりの年間平均購入金額も小さい(図表3)。特に成長投資枠では、20代以下と70代では倍近い開きがあり、年収や資産額に応じた投資額になっていることがわかる。

3. 投資銘柄~「とりあえずインデックスファンド」の傾向~
つみたて投資枠で購入された銘柄は、全体でみると全世界株式に投資するインデックス型の投資信託が最も多い(図表4左)。インデックス型とは、日経平均や米国のS&P500など、特定の指数と同じ値動きをするよう設計されたものである。長期・分散・積立投資に適していることに加え、メディアやSNS上でも「とりあえずインデックスファンド」を推奨する情報が多く、人気の高い商品になっている。
つみたて投資枠の購入銘柄のうち、「投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を含む)」が占める割合について、年代別でみると、20代以下で39%、30代は42%となり、日本を含まないタイプも合わせた割合はどちらも61%と、最も高い(図表4右)。

成長投資枠では、購入銘柄のうち日本の国内株式が占める割合が最も高く、全体では約48%である(図表5)。年代別にみると、20代以下は27%、30代は38%、70代になると71%で、年代による差が大きい。若い年代ほど、成長投資枠でも、全世界株式のインデックスファンドを購入する傾向にある。従来、投資においては「ホームカントリーバイアス」があるといわれてきた。これは行動経済学の概念で、情報収集のコストや親近感などを背景に、海外投資よりも自国の株式などの資産に偏重することを指す。国内株式の保有理由はバイアスだけではないが、若者は投資において「自国びいき」の感覚が薄いのかもしれない。

4. 銘柄購入理由~企業への応援やESGが購入理由に~
先述のとおり、成長投資枠はつみたて投資枠よりも、国内株式はじめ幅広い銘柄が対象になる。そのため、その購入理由も多岐に渡る。年代別にみると、「中長期的な株価の上昇が見込まれるから」と回答した割合は30代で27.3%だが、20代以下では21.2%となっている(図表6)。20代以下は、「配当金/分配金が魅力的な銘柄だから」(17.1%)も他の年代より低い。一方で、「その企業を応援したいから」(15.3%)、「地元の企業だから」(10.1%)と回答した人は他の年代より高い。

前節で、若者はホームカントリーバイアスが薄い可能性があると指摘したが、自国へのこだわりがなくても、身近に感じられる企業があれば投資する傾向が見受けられる。ただし、これは金融リテラシーの不足ともいえる。企業業績や配当金などの財務状況を十分に理解しないまま、イメージや知名度で企業の株を購入するというケースである。少額の資金であれば、まず試しに投資してみることが金融リテラシー向上につながる経験になる場合もあるが、こうした選び方は資産形成のリスクにもなりうる。
また、多くはないが、「ESG投資」を投資の判断軸としている人もいる。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素に配慮して投資先を選ぶ手法である。図表5は成長投資枠における購入理由だが、つみたて投資枠において「ESG投資を重視しているファンドだから/企業だから」と回答した割合は、20代以下は13%、30代9%、40代以上4.7%であり(図表省略)、若者のESG投資への関心の高さがうかがえる。
5. 今後の展望~お金の話をより身近に~
以上の調査結果を整理すると、若者の投資は確実に拡大しており、まずは全世界株式に投資するインデックスファンドから新NISAを始める傾向がみられた。それを踏まえ、「とりあえずインデックスファンド」の次のステップに向けた、新NISAの今後の展望について3点述べる。
1点目は、ライフデザインに基づく投資促進である。これまで日本では個人の投資が進まなかったため、新NISAをきっかけに投資が広がるのは良い傾向である。実際に始めてみることで、金融リテラシーの向上も期待できる。一方、資産形成は、自身の経済状況やライフデザインに合わせて、貯蓄や投資の配分・方法を柔軟に選択し、必要に応じてその方針を見直すべきものである。当社の調査では、ライフデザインができていて、さらに投資をしている人において、家計と資産への満足度が最も高かった(図表7)。今後、ライフステージの変化に応じて金融商品の追加や見直しを図るためにも、ライフデザインを立て「いつまでに何の資金が必要なのか」を明確にすることが第一歩となる。

2点目は、社会を育てる投資である。日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査」(2024年10月)によると、20代~30代の個人投資家でESG投資を知っている人は47.3%、うち実際に投資したことがある人は8%であった。投資家以外も含めると、認知度はさらに下がるだろう。一般的に、Z世代は社会貢献意識が高いといわれており、ESG投資との親和性は高いと考えられる。ESG投資に限らず、未来社会に役に立つ取り組みを行っている企業を、投資という形で支援する、自分の手元資金とともに社会を育てる、といった考え方を広めていくことが、今後の資産形成と持続可能な社会の発展に寄与するだろう。
3点目は、魅力ある国内企業の創出である。2001年に「貯蓄から投資へ」が政府の方針として初めて打ち出された際、その主な狙いは成長分野への投資資金を拡大し、リスクマネーの供給を促進することであった。現在は、個人の資産形成の側面が強調されているが、従来の目的も我が国の経済発展にとって依然として重要である。今後、若者において昇給などにより余剰資金が増えた際に、国内企業はその資金を呼び込む必要がある。そのためには、企業は、成長性に期待ができる魅力的な事業を立ち上げ、投資をしたいと思ってもらえるように努めるべきであろう。また、わかりやすい情報発信や媒体の多様化など、IR(インベスター・リレーションズ)を工夫し、若者向けのアプローチが求められる。さらに、株式投資は投資信託よりもリスクが高い傾向にあるため、どの程度の資金で始めるべきかや、投資先の選び方などを理解するために、より充実した金融経済教育が必要であろう。
長らく日本では、人前でお金のことを話すことはタブー視される傾向があり、お金儲けに否定的なイメージも根強かった。こうした感覚が、金融教育や金融リテラシーの向上を遅らせたとの見方もある。新NISAの広がりにより、「NISAやってる?」をきっかけに、同僚や友人とお金の話がしやすくなったように思う。もちろん、詐欺や誤情報には注意が必要であるが、お金について話す場が増えることは、自身の知識や考えを整理する機会にもなり、望ましいことである。制度開始から1年半経った新NISAの功績の一つは、これまで敬遠されがちだったお金の話を身近なものにしたことではないだろうか。一過性のブームに終わらせず、持続的な資産形成や経済発展に向けた基盤づくりが進むことを期待する。
【注釈】
- 「自分の高齢期には公的年金に期待をしていない」に対し、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した割合。第一生命経済研究所「第13回ライフデザインに関する調査」2025年3月。
【参考文献】
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総務省(2025)「人口推計」
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日本証券業協会(2025)「新NISA開始後の利用動向に関する調査」
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日本証券業協会(2025)「NISA口座の開設・利用状況」
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日本証券業協会(2024)「個人投資家の証券投資に関する意識調査」
鄭 美沙
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

