注目のキーワード『後発事象』

重原 正明

日本では、多くの株式会社が6月末に株主総会を開催します。これは3月末決算の会社が多いためですが、決算日後に生じた事象は、会計上、主として財務諸表の注記「後発事象」として、(取締役会設置会社においては)株主総会に報告されます。

後発事象の開示は、決算日後に生じた重要な事項について、財務諸表の利用者に情報を提供するために行われます。後発事象は戦争・天災など外部の事象だけではなく、会社の事業再編についての合意、不祥事の発覚など、会社自身の決算日後の事象も含みます。

重要な後発事象は、通常は注記で開示され、決算数値には反映されない「開示後発事象」となります。ただし、財務諸表中の数値、例えば貸倒引当金のような見積もり要素のある数値への影響が見込まれ、その影響を織り込んだ財務諸表の数値を算定できる場合には、財務諸表の数値が修正されます。このような後発事象を「修正後発事象」と呼びます。

例えば2026年3月期決算の会社に関して言うと、2026年のイスラエルと米国によるイランへの攻撃は2月に開始されたので、攻撃により始まった戦闘は後発事象には当たりませんが、その後の4月の停戦合意は後発事象に当たることとなります。

後発事象の取り扱いについては、これまで監査上の取り扱いとして定めが置かれてきましたが、そのうち会計に関する内容を切り出し、2026年1月9日に「後発事象に関する会計基準」などが公表されました。年度決算への適用は原則2028年3月期決算からになります。後発事象の範囲は、国際会計基準との整合性などを踏まえ、原則として会社が財務諸表の公表を承認した日までとされましたが、会計監査人設置会社の場合は、監査報告書日後の後発事象は財務諸表数値を修正せず、すべて開示後発事象としての扱いをすることとされています。

昨今の不安定性を増す世界においては、決算日から財務諸表開示までの間の事項に関する情報を与える後発事象の開示は、重要性を増していると考えられます。財務諸表本体の数値情報だけではなく、開示情報のような質的情報にも留意することが、適切な投資行動を取るためには重要でしょう。

(政策調査部 シニア研究員 重原正明)

重原 正明


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