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2026.07.16
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FIFAワールドカップ2026出場国の資産形成(6) カーボベルデ
~観光収入と海外居住者の送金を活用したインフラ・社会保障整備~
重原 正明
- 目次
1. アフリカの大西洋側沖合にある島国カーボベルデ
本シリーズでは、FIFAワールドカップ2026出場国における資産形成の制度や現状などを概観する。第6弾となる本稿では、初出場ながら決勝トーナメント進出を果たし、世界の注目を集めたカーボベルデを取り上げる。
カーポベルデは西アフリカの沖合約375kmに位置する、大西洋の中にある、主要な10島などからなる島国である。15世紀にポルトガル人が訪れた際には定住者はいなかったが、その後16世紀には奴隷貿易の基地として栄えた。18世紀に奴隷貿易が衰退したが、その後地理的条件を生かして、大西洋航路における中継地としての重要性を取り戻し、現在も航空機や船舶の中継点として活用されている。
地理的に隔絶されていたことなどから、18世紀以降大きな戦争を経験しておらず、1975年の独立後も、平和裏に政権交代が行われている。
2. 国民皆年金に向かうカーボベルデ
カーボベルデで特筆すべきことは、国民皆年金を実施しようとしていることである。少し前のデータであるが、ILO(2015)によると、正確な時点は不明だが高齢者の9割以上が何らかの年金を受給している。
貧困層の高齢者等に対しては非拠出型(税方式)の年金が支給されている。非拠出型の年金制度は、2006年に社会的年金全国センター(CNPS)が設置されてそこに一本化された。収入が国の公式貧困線を下回る60歳以上の高齢者や障害者、貧困世帯の障害児童が支給対象となる。2015年頃には、60歳以上人口の約46%がこの年金を受給していた。支給額は2022年で月額6,000カーボベルデ・エスクード(2026年の為替換算で約1万円)である。ILO(2015)には、年金で自宅の給水設備の整備費や、海外に住む子どもたちとの電話代が払える、といった喜びの声が紹介されている。支給額は必ずしも大きくないものの、受給者の基礎的な生活を支える役割を果たしていると考えられる。また非拠出型年金の対象者は、少額の拠出で医薬品購入費および葬儀費用に関する保険に加入することもできる。
一方、年金を受けている高齢者の残り、60歳以上人口の半数程度は、企業等の拠出型年金の給付を受けているものと思われる。保険料は被用者負担が収入の4%、雇用者側が8%で、年金額は保険料計算基準の毎年の収入に2%を掛けて合算した額(上限は平均収入額の80%)である。
拠出型の年金と非拠出型の年金を組み合わせたことが、高い年金普及率につながったとカーボベルデの当局はみている。
3. 観光業などのサービス業と海外居住者からの送金が支える経済
カーボベルデは干ばつにたびたび見舞われ、農業に必ずしも適した自然条件を備えていない。漁業は人々の生活を支えているが、主たる産業は観光業を中心としたサービス業である(航空や海運のハブとしての運輸サービス業もこれに加わる)。
そしてカーボベルデの経済を支えるもう一つの要素は、カーボベルデにルーツを持つ海外居住者(ディアスポラ(注1)と呼ばれている)からの国内への送金である。ディアスポラは国内居住人口を優に超える150万人にのぼり、その送金額はGDPの10%を超える。この送金額が、食料品等の輸入による貿易赤字を穴埋めし、国内の生活産業を支えている。
政府も観光業からの税収などをもとに、ポイントを絞って空港や港湾へのインフラ投資を行い、また社会保障の拡充・教育の充実などを進めている。一方で、ディアスポラへの対応として二重国籍を認めるなど、母国と縁が切れないような対策を取っている。
このように、自国の立地や人的ネットワークを生かしながら着実に社会基盤を整備してきた姿は、人口50万人に満たない同国が国際舞台で存在感を示す背景を考える上でも興味深い。。
4. 海外から得られる所得を日本の課題解決にどう生かすか
振返って日本を見ると、訪日外国人旅行者の増加は、一部地域の活性化に寄与しているものの、国の規模が大きいため、その恩恵は限られる。また海外で働く日本人も、今のところは本国の人口を凌駕するほどではない。
一方、日本の企業や機関投資家、家計は海外に多額の資産を保有し、そこから得られる投資収益は日本の所得を支える重要な要素となっている。日本が多くの社会的・経済的課題に直面する中、海外投資から得られる所得やそれに伴う税収を、社会保障やインフラ整備をはじめとする国内課題の解決にどのようにつなげるかを考えることも重要であろう。
【注釈】
- ディアスポラという語は、かつては「ユダヤ人の離散」のみを指す、定冠詞付き・大文字のthe Diasporaとして使われていたが、第二次世界大戦後は旧宗主国・旧植民地間の移動に小文字・複数形のdiasporasが使われ、ディアスポラはより広い意味で使われるようになっている。カーボベルデでもそのような広い意味で、自国にルーツを持つ海外居住者をディアスポラと呼んでおり、本レポートでもその文脈に従っている。
【参考文献】
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ジョセ・ユリウス・コレイア・エ・シルバ(2026)「【特別寄稿】大国は国際社会を生き抜く術を島嶼国から学べ...カーボベルデ首相が語る生存戦略」Newsweek日本語版(サイト)2026年03月19日(木)16時30分版
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早尾貴紀(2015)「ディアスポラ」imidas 時事用語辞典2015/3
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ILO(2015)「国民皆年金への道を進むカーボベルデ」2015年4月17日
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ISSA(2022)“ISSA country profiles: Cabo Verde” Policies as of 1 July 2022.
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Mary Bannerman et al.(2026)”history of Cabo Verde“ Britannica
重原 正明
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。