注目のキーワード『原油』

阿原 健一郎

経済ニュースで連日報道される「原油価格」。3月以降、中東情勢の緊迫化を背景に価格が高止まりしており、大きな注目を集めています。今回は、なぜ原油がそれほどまでに世界経済にとって重要なのか、改めてその仕組みを紐解いてみましょう。

原油はよく「経済の血液」に例えられます。掘り出したばかりの原油はドロドロの液体ですが、製油所で熱を加えて「蒸留」することで、ガソリンや軽油といった車や船を動かす「燃料」になるだけでなく、プラスチック製品や化学繊維、さらには医薬品に至るまで、あらゆるモノの「原料(ナフサ)」へと姿を変えます。つまり原油高とは、社会を動かすエネルギーのコストだけでなく、モノを作るための土台のコストが全面的に押し上げられることを意味しています。

ひとくちに原油と言っても、産地によって価格の基準が異なり、世界には「3大指標」が存在します。米国の高品質な原油で世界的な価格の代表格である「WTI」、世界の海上貿易の基準となる欧州産の「ブレント」、そして日本を含むアジア太平洋地域にとって最も重要な中東産の「ドバイ原油」です。消費する原油の9割以上を中東に依存する日本にとって、私たちの生活や企業活動に最も直接的な影響を及ぼすのは、このドバイ原油の動向です。

これまで、米国とイランの軍事衝突を背景にドバイ原油は高止まりしていました。原油高は電気代や物流費、原材料費の上昇を通じて、スーパーに並ぶ日用品の値上げ(コストプッシュ型インフレ)として家計を直撃します。さらに、米国で原油高によるインフレ再燃が警戒されると、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を高く維持せざるを得なくなります。これが日米の金利差を広げ、日本の輸入物価を一段と押し上げる「円安」の要因になる可能性もあります。

「原油」という一つのキーワードを通して、遠い中東の紛争、米国の金利動向、そして私たちの毎日の生活が、実は一本の線で繋がっていることが分かります。こうした中、4月8日、米国・イスラエルとイランが2週間の停戦に合意したとの一報が入りました。今回の戦争がどのような形で終結に向かうのか、そして原油価格の変動を通じて私たちの生活にどのような影響を与えていくのか、引き続き市場の動向を注視していく必要があります。

(経済調査部 主席エコノミスト 阿原 健一郎)

阿原 健一郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。