インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~ベトナム、2025 年成長率は+8.02%と目標未達も高成長を実現~』(2026年2月号)

西濵 徹

目次

2025年の経済成長率は+8.02%と高水準に

ベトナム経済は、米中摩擦の『漁夫の利』を最も得てきたとされる一方、2025年はトランプ関税に翻弄された。米国は当初、ベトナムへの相互関税を46%としたが、その後の協議を経て20%に引き下げた。一方、中国による迂回輸出を念頭にした関税上乗せに加え、ベトナムは米国からの輸入品への関税をゼロとする不平等な合意となった。相互関税の本格発動を前に輸出が押し上げられたため、一時はその後の反動が懸念されたものの、輸出はその後も堅調に推移している。ベトナム政府はより良い合意の締結に向けた協議を継続しており、その帰趨は先行きの外需を左右すると見込まれる。

このように、輸出が足元の景気をけん引する動きがみられるなか、10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+8.46%と前期(同+8.25%)から加速している。当研究所が試算した季節調整値に基づく前期比年率ベースの成長率も、引き続き堅調に推移している。ベトナム政府は昨年2月に経済成長率目標を8%に引き上げ、その後も米国との合意直後に目標を8.3~8.5%に再び引き上げるなど、経済成長の実現を優先してきた。昨年通年の経済成長率は+8.02%と政府目標には届かなかったが、前年(+7.09%)から加速して3年ぶりの高い伸びとなるなど勢いを増している。生産の動きついても、幅広い分野で拡大の動きが確認されるなど、内・外需双方の堅調さがうかがえる。

図表
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党・政府は高成長志向を強める一方で懸念も

ベトナムでは、1月19~25日の日程で5年に一度の党大会(ベトナム共産党第14回全国代表者大会)の開催が予定されている。昨年12月には、党大会前の重要イベントである中央委員会総会(第13回中央委員会第15回全体会議)が開催され、次期指導部候補が選定されており、2024年に党トップ(党中央執行委員会書記長)に就任したトー・ラム氏の留任に道筋が付けられた模様である。党大会では、2026年から始まる次期5ヵ年計画が承認される。

前5ヵ年計画では、期間中における成長率目標を6.5~7%としたが、6.25%に留まった。これはコロナ禍の影響が色濃く現れた2021年(+2.55%)の低成長が響いた。昨年11月に国会は次期5ヵ年計画の期間中の平均成長率を10%以上とする方針を承認しており、これまで以上に経済成長を志向する姿勢をみせる。ただし、対内直接投資は頭打ちの様相を強めている。足元の輸出は好調に推移しているが、先行きは関税の影響が懸念される。さらに、昨年のベトナムの対米貿易黒字額は過去最高を更新しており、ベトナムと米国の協議が難航すれば、同国への投資環境が変化することも考えられる。ベトナム共産党、及び政府が掲げる高い成長目標のハードルが高まるなか、財政政策への依存を強める可能性も懸念される。足元の動向のみならず、外部環境の改善を図りつつ、身の丈に合う目標設定を行うことが重要になろう。

図表
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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