ここが知りたい『ファイナンシャル・ウェルビーイング向上のための4つのプロセスとは』

村上 隆晃

目次

ファイナンシャル・ウェルビーイングって何?

近ごろ「ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)」という言葉が注目されている。耳慣れないかもしれないが、意味はシンプルで「お金の面で安心できて、将来のことを考えながら自分らしい人生を選べる状態」のことである。

たとえば、「今月も家計が赤字で心配だ」という状態より、「生活費をコントロールできて、将来に向けた貯蓄や子どもの教育費の準備も進められているし、いざという時の準備もある」という状態の方が、毎日の気持ちも前向きになれる。この「安心感」こそがFWBの中身といえる。

アメリカやイギリスでは国をあげて「国民のお金の安心度」を高める取り組みが進んでいる。日本でも2024年に「金融経済教育推進機構(J-FLEC)」が設立され、国民全体のお金の知識や行動を底上げする動きが始まっている。

FWBの4つの柱とは

FWBは単なる「お金持ちかどうか」を測るものではない。収入や資産といった客観的な数値に加え、「安心できているか」「不安が少ないか」「将来に希望が持てるか」といった主観的な感覚も含めて考えるコンセプトだ。

アメリカの金融消費者保護局はFWBを4つの柱で説明している。

1.今の生活費をちゃんとコントロールできていること

2.病気や失業など、将来の“もしも”に備えられていること

3.趣味や旅行など、人生を楽しむためのお金の自由度があること

4.将来の目標(住宅購入、教育費、老後資金など)に向けて計画的に進んでいると感じられること

つまり「経済的な安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態」がFWBというわけである。

お金の安心が人生の満足度を上げる

2025年にウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会が実施した全国調査(11,022人対象)では、独自の「日本版FWB度」を設定し、現在・将来の資産形成や計画に対する満足度を点数化した(資料1)。結果として、FWB度が高い人ほど生活満足度も高いことが確認された。FWBの向上が生活全般のウェルビーイングを高める効果を持つことが示されている。

これは当たり前のようでいて大事な発見といえる。つまり、お金の安心は「生活を支える土台」であり、心の余裕や幸せ実感に直結している。収入や資産を増やすことは大事だが、それ以上に、FWBを高めることは、私たちの暮らし全般を前向きに変える力を持っている。

図表
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FWBを高める4つのプロセス

では、どうすれば自分のお金の安心度を高められるか。研究では「学ぶ・把握・相談・行動」という4つのプロセスが重要だとされている(資料2)。

1.学ぶ:まず金融経済教育や情報で知識を得る。
2.把握:家計簿をつけたりライフプランを立てたりして、自分の現状を理解する。
3.相談:家計に関する悩みや疑問を、専門家や信頼できる人に相談する。
4.行動:実際に貯蓄や投資、保険の利用など具体的な行動を取る。

調査によると、「学ぶ」だけではFWBはあまり上がらない。「把握」や「行動」のプロセスを経て、実際に「行動」に移すことで大きな効果が出ることが確認されている。つまり、知識を知識のままにせず、一歩踏み出すことが大切ということである。

図表
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国や社会のサポートも重要

個人の努力だけでなく、国や社会の仕組みもFWBを後押しする。イギリスでは「2030年までにライフプランを意識する人を500万人増やす、金融経済教育を受ける子供や若者の数を200万人増やす」といった大きな目標を掲げている。日本でも政府の「資産運用立国実現プラン」の一環として、J-FLECを司令塔として「金融経済教育の推進」や「J-FLEC認定アドバイザーによる個別相談、マネープランの提供」が進められている。

国民一人ひとりがライフプランを描き、国や地域が教育や制度でサポートする。こうした両輪で進めることが、社会全体の安心や持続可能性につながっていく。

これからの暮らしに向けて

FWBは「お金の勉強」以上に、「人生をどう楽しみたいか」「どんな未来を描きたいか」を考えるきっかけになる。

  • 今の生活費をきちんと管理しつつ、
  • もしものリスクに備え、
  • 趣味や学びにもしっかりお金を回し、
  • 将来の夢や目標に向けて準備を進める

これらを少しずつ実践することで、お金に対する不安は和らぎ、「自分の人生を自分で選んでいる」という実感が得られる。

FWBは難しい経済理論ではなく、私たちの毎日の安心と幸せを支える実用的な考え方である。国の政策や社会の仕組みも活用しながら、一人ひとりが少しずつ行動を重ねていくことが、豊かで安心できる未来につながっていく。

(引用文献)ウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会編(2025)「よくわかるウェルビーイング&ファイナンシャル・ウェルビーイングQ&A~快適な『お金』との関係を実現するために~」金融財政事情研究会

村上 隆晃


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村上 隆晃

むらかみ たかあき

政策調査部 フェロー
専⾨分野: well-being、生命保険マーケティング

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