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2025.09.19
ライフデザイン
人生設計
資産形成・資産運用
ここが知りたい『ファイナンシャル・ウェルビーイング向上のための4つのプロセスとは』
村上 隆晃
ファイナンシャル・ウェルビーイングって何?
近ごろ「ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)」という言葉が注目されている。耳慣れないかもしれないが、意味はシンプルで「お金の面で安心できて、将来のことを考えながら自分らしい人生を選べる状態」のことである。
たとえば、「今月も家計が赤字で心配だ」という状態より、「生活費をコントロールできて、将来に向けた貯蓄や子どもの教育費の準備も進められているし、いざという時の準備もある」という状態の方が、毎日の気持ちも前向きになれる。この「安心感」こそがFWBの中身といえる。
アメリカやイギリスでは国をあげて「国民のお金の安心度」を高める取り組みが進んでいる。日本でも2024年に「金融経済教育推進機構(J-FLEC)」が設立され、国民全体のお金の知識や行動を底上げする動きが始まっている。
FWBの4つの柱とは
FWBは単なる「お金持ちかどうか」を測るものではない。収入や資産といった客観的な数値に加え、「安心できているか」「不安が少ないか」「将来に希望が持てるか」といった主観的な感覚も含めて考えるコンセプトだ。
アメリカの金融消費者保護局はFWBを4つの柱で説明している。
1.今の生活費をちゃんとコントロールできていること
2.病気や失業など、将来の“もしも”に備えられていること
3.趣味や旅行など、人生を楽しむためのお金の自由度があること
4.将来の目標(住宅購入、教育費、老後資金など)に向けて計画的に進んでいると感じられること
つまり「経済的な安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態」がFWBというわけである。
お金の安心が人生の満足度を上げる
2025年にウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会が実施した全国調査(11,022人対象)では、独自の「日本版FWB度」を設定し、現在・将来の資産形成や計画に対する満足度を点数化した(資料1)。結果として、FWB度が高い人ほど生活満足度も高いことが確認された。FWBの向上が生活全般のウェルビーイングを高める効果を持つことが示されている。
これは当たり前のようでいて大事な発見といえる。つまり、お金の安心は「生活を支える土台」であり、心の余裕や幸せ実感に直結している。収入や資産を増やすことは大事だが、それ以上に、FWBを高めることは、私たちの暮らし全般を前向きに変える力を持っている。

FWBを高める4つのプロセス
では、どうすれば自分のお金の安心度を高められるか。研究では「学ぶ・把握・相談・行動」という4つのプロセスが重要だとされている(資料2)。
調査によると、「学ぶ」だけではFWBはあまり上がらない。「把握」や「行動」のプロセスを経て、実際に「行動」に移すことで大きな効果が出ることが確認されている。つまり、知識を知識のままにせず、一歩踏み出すことが大切ということである。

国や社会のサポートも重要
個人の努力だけでなく、国や社会の仕組みもFWBを後押しする。イギリスでは「2030年までにライフプランを意識する人を500万人増やす、金融経済教育を受ける子供や若者の数を200万人増やす」といった大きな目標を掲げている。日本でも政府の「資産運用立国実現プラン」の一環として、J-FLECを司令塔として「金融経済教育の推進」や「J-FLEC認定アドバイザーによる個別相談、マネープランの提供」が進められている。
国民一人ひとりがライフプランを描き、国や地域が教育や制度でサポートする。こうした両輪で進めることが、社会全体の安心や持続可能性につながっていく。
これからの暮らしに向けて
FWBは「お金の勉強」以上に、「人生をどう楽しみたいか」「どんな未来を描きたいか」を考えるきっかけになる。
- 今の生活費をきちんと管理しつつ、
- もしものリスクに備え、
- 趣味や学びにもしっかりお金を回し、
- 将来の夢や目標に向けて準備を進める
これらを少しずつ実践することで、お金に対する不安は和らぎ、「自分の人生を自分で選んでいる」という実感が得られる。
FWBは難しい経済理論ではなく、私たちの毎日の安心と幸せを支える実用的な考え方である。国の政策や社会の仕組みも活用しながら、一人ひとりが少しずつ行動を重ねていくことが、豊かで安心できる未来につながっていく。
(引用文献)ウェルビーイング学会ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会編(2025)「よくわかるウェルビーイング&ファイナンシャル・ウェルビーイングQ&A~快適な『お金』との関係を実現するために~」金融財政事情研究会
村上 隆晃
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。