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- ここが知りたい『資産形成の次の焦点~デキュムレーションの重要性』
デキュムレーション(decumulation)とは、資産形成期に積み上げてきた金融資産を、引退後やセカンドライフにおいて計画的に取り崩し、生活費や目的資金として活用していくプロセスを指す(資料)。積立(アキュムレーション)の反対概念であり、「いくら増やすか」ではなく「いつ・どのくらい・どの順番で使うか」が核心となる。具体的には、年金受給と金融資産の取り崩しの組み合わせ、定額・定率の引き出し方法、運用を続けながらの部分的取り崩しなどが含まれる。「退職後、毎月いくら取り崩せば安心して暮らせるのか」、多くの人が直面するこの問いに答える考え方がデキュムレーションである。デキュムレーションは、単なる「資産の消費」ではなく、人生後半の選択肢を支える戦略的マネジメントだといえる。

デキュムレーションが注目される背景
この概念が注目される背景には、いくつかの構造変化がある。第一に、長寿化の進展により、引退後の期間が20年、30年と長期化し、「資産が足りるか」だけでなく「使い切れずに終わる不安」も同時に生まれている。第二に、公的年金だけでは生活水準を維持しにくいという認識が広がり、私的な金融資産への期待が拡大した。第三に、NISAや確定拠出年金の普及により、個人が運用主体となる時代が到来した一方、出口戦略については十分に整理されてこなかった点などがある。さらに、相場変動の大きさやインフレ懸念は、「順序リスク」すなわち運用開始直後に相場が下落すると、その後の回復が難しくなるリスクを浮き彫りにした。こうした状況の中、「殖やす金融教育」に加え、個々人のライフデザインに沿って「取り崩す(使う)金融教育」への着目が求められ、デキュムレーションの重要性が指摘されるようになった。
デキュムレーションはファイナンシャル・ウェルビーイングにとっても重要な要素
今後、デキュムレーションは金融商品・サービスの設計やアドバイスのあり方、金融経済教育、さらにはファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)を巡る政策とも深く結びついていくと考える。FWBとは、「お金の面で安心できて、将来のことを考えながら自分らしい人生を選べる状態」を指す。政策との関りでいえば、政府の資産運用立国実現プランの一環として2024年に設立された金融経済教育推進機構は国民のFWB実現をミッションに掲げていることなどが挙げられる。
デキュムレーションは、老後を切り詰める技術ではなく、蓄えた資産を人生の価値に変換するための知恵である。資産を残すことが目的化しがちな社会において、「上手に使うこと」が、これからの金融リテラシーの核心の一つになっていくだろう。
村上 隆晃
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 村上 隆晃
むらかみ たかあき
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政策調査部 フェロー
専⾨分野: Financial Well-being、資産形成・運用、金融経済教育
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