注目のキーワード『Too Big to Fail』

重原 正明

保険会社に対する国際的な資本規制(International Capital Standard、以下ICS)が、2024年12月に制定され、2025年以降各国の状況に応じて規制ツールとして使用され始めます。対象となるのは、国際的に活動する保険会社として、保険監督者国際機構(IAIS)が指定した会社となりますが、その他の会社の監督や経営にも影響を与えると思われます。

ICSが制定された背景には、2008年に生じた世界金融危機があります。金融危機の当時に言われたことばに”Too Big to Fail”があります。直訳すると「大きすぎて潰せない」という意味です。ある会社を破たんさせた場合に経済・社会に大きな混乱を巻き起こすため、単純に破たんさせることができない状態、あるいはそのような状態にある会社のことをこのように呼びました。ちなみに、このような経済・社会システム全体に大きな混乱が起こる可能性のことをシステミックリスクと呼びます。

実際、世界金融危機ではいくつかの金融機関がToo Big to Failと見なされ、公的資金の投入などが行われました。そして金融危機への短期の対応が終わった後では、金融界全般で、国際的に活動する金融機関(このすべてがシステミックリスクを持つわけではありませんが)への監督体制の強化など、危険なToo Big to Failを生まない体制が整備されました。その一つの成果が、先に述べたICSです。

金融監督としては、Too Big to Failの監視には一定の仕組みができ、そのことば自体もあまり聞かれなくなりました。しかし、一般のリスク管理において、リスクの集中を避ける、Too Big to Failを作らないという点が重要なことは変わりありません。また、気候変動や国際紛争など、システミックリスクを顕在化させる大きな事象が、社会で以前よりも頻繁に起こっているように思われます。不安定さが増す社会の中で、Too Big to Failということばは、今一度注目されてもよいように思われます。

(総合調査部 政策調査グループ 研究理事 重原正明)

重原 正明


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重原 正明

しげはら まさあき

政策調査部 シニア研究員
専⾨分野: 社会保障・保険・年金、リスク管理・保険数理、会計・開示

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