注目のキーワード『歌の祭典』

重原 正明

年末は歌を耳にする機会が増えます。大晦日のTV番組、ベートーベン交響曲第九番(合唱付き)の演奏会、クリスマスの聖歌、果ては忘年会のカラオケに至るまで。年の終わりを歌でしめくくりたい人は多いようです。

年末の「第九」演奏会は、1938年以降毎年12月に新交響楽団(今のNHK交響楽団)が公演を行ったことが、定着した有力な理由の一つとされます。日本とは違い、ヨーロッパでは「第九」はそれほど一般的な楽曲ではなく、それを元にした「欧州の歌」が欧州議会で歌われるなど、式典等特別な時の歌として扱われているようです。

歌は人々の心を一つにまとめる効果があります。各会社の社歌や応援歌の中には、会社が合併等で消滅した後も人々に歌われる曲があります。流行したチャリティーソングもあります。一方そのような歌の効果は差別や弾圧に悪用される場合もあります。谷川俊太郎氏は「生きる」という詩で、歌などの美に隠された悪について記しています。

歌は時には国をも動かします。イタリアの独立運動にはオペラで有名なヴェルディの楽曲が影響を与えたとされます。またバルト三国のソ連からの独立運動は「歌う革命」とも呼ばれています。例えばエストニアでは1869年から「歌の祭典」が何年かおきに開催されていました。ソ連時代も当局指導の下で続けられましたが、1960年の「歌の祭典」で数十万人の参加者により自然発生的にエストニアの愛国歌が歌われ、ソ連当局も止められませんでした。それが継続し、後の独立運動につながっています。

歌の力は偉大です。その力に身を委ねるのもよし、自らその力を発揮するのもよし。この年末も適度に歌を楽しもうではありませんか。

重原 正明


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