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2024.07.18
新興国経済
南アフリカ経済
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~南ア・ラマポーザ政権発足、「同床異夢」で南アランドはどうなる?~』(2024年8月号)
西濵 徹
11政党連立によりラマポーザ政権は3期目へ
南アフリカでは、今年5月末に実施された議会下院(国民議会)総選挙において、1994年の民主化から一貫して単独での政権与党の座を死守してきたANC(アフリカ民族会議)の獲得議席数が初めて半数を下回るなど惨敗を喫した。ANCは第1党の座を守るもラマポーザ政権の維持には他党との連立が必要となり、如何なる政党と連立を組むかに注目が集まるとともに、同国の通貨ランド相場が混乱した。しかし、最終的には金融市場が期待した親欧米色が強い最大野党のDA(民主同盟)などと連立を組むことで合意し、ラマポーザ政権は3期目入りした。
その後は連立与党に新たな政党が加わることで合意しており、計11政党がラマポーザ政権を支える与党連立を構成することとなった。その一方、閣僚人事を巡っては各党間の思惑が交錯する動きがみられたほか、とりわけANCとDAの間で意見の相違が表面化するなど不透明感が高まる動きがみられた。各党協議を経てラマポーザ大統領は6月末に閣僚名簿を公表したが、連立入りした政党からもDAを中心に入閣が実現した。その結果、2019年に発足したANC単独によるラマポーザ政権下では、ズマ前政権で膨張した閣僚数(36)を28に削減するなど公的部門のスリム化が図られたものの、今回は他党との連立を受けてポストが必要になっていることから閣僚数は32に増やされるなど、公的部門の肥大化を招くことに繋がっている。

ランド相場は一旦落ち着きを取り戻したが…
さらに、ANCとDAの間には経済政策や外交政策などを巡って隔たりがあり、両党間でこれらを司る財務相や外相の配分も注目された。最終的には両ポストともにANCが堅持するとともに、財務相にはゴドングワナ氏が留任する一方、国際関係・協力相には前法務・矯正サービス相のラモラ氏が横滑りで就任するなど、政権の骨格維持に向けて安定を重視する姿勢が図られた。ラマポーザ大統領は閣僚名簿の発表に際して「わが国の多様性を反映している」、「連携と協力の精神の下で新政権はともに手を携えて職務に当たる」、「各党は党利党略を超えて国民のために協力すべき」と述べるなど政党間の協調関係の維持に腐心した様子がうかがえる。
上述のように連立与党入りした各党の間には経済政策や外交政策などを巡って意見の相違が少なくないなか、今後も具体的な政策運営に当たっては今回の組閣協議と同様に各政党間での意見調整に手間取る可能性は十分に考えられる。ここ数年のランド相場は慢性的な電力不足による景気低迷が続くなか、政治的な混乱を警戒して調整したものの、足下では底打ちに転じるなど金融市場が期待したDAが加わる形でのラマポーザ政権を好感している様子がうかがえる。しかし、先行きも与党連立内では経済政策や外交政策などで隔たりが大きいなかで政策運営が混乱する可能性がくすぶり、度々調整圧力に直面する可能性には引き続き注意する必要がある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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