インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~ベトナム中銀、「外圧」に対応を迫られる~』(2022年12月号)

西濵 徹

ベトナム経済を巡っては、中国による『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥に加え、商品高による世界的なインフレを受けた米FRBなどのタカ派傾斜により世界経済は頭打ちの様相を強めるなど外需の不透明感が高まっているが、7-9月の実質GDP成長率は前年比+13.67%と四半期ベースで過去最高の伸びとなるなど、一見堅調な景気が続いている。しかし、これは昨年の7-9月の景気がコロナ禍再燃により大きく下振れした反動が影響しており、当研究所が試算した季節調整値に基づく前期比年率ベースの成長率は2四半期ぶりのマイナスに転じるなど、実態は踊り場状態にある。

さらに、世界経済の減速はアジア新興国のなかで経済の輸出依存度が相対的に高い同国経済の『逆風』となることが懸念されるほか、商品高の動きは同国でも生活必需品を中心とするインフレを招いており、内需に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。さらに、国際金融市場では米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜が世界的なマネーフローに影響を与えており、ベトナムは周辺国と比較して金融市場の開放度合いは低いにも拘らず資金流出が活発化して通貨ドンは調整の動きを強めている。ドン安は輸入物価を通じた一段のインフレ昂進を招くことが懸念される上、管理変動相場制を採用するなかで資金流出に伴うドン安圧力に対して介入による相場維持を図る必要があるなど、当局は難しい対応を迫られている。

図表1
図表1

こうしたなか、ベトナム中銀は物価及び為替の安定を目的に9月23日付で政策金利を100bp引き上げる決定を行うなど金融引き締めに舵を切ったものの、その後も資金流出に伴うドン安圧力が強まる展開が続いたことを受けて、10月17日にはドンの対ドル相場の基準値からの変動幅を従来の3%から5%に引き上げるなど事実上の切り下げに動く決定を行った。しかし、その後も国際金融市場では米FRBによる一段のタカ派傾斜が意識される形でドン安が進んで最安値を更新する展開が続いていることを受け、中銀は10月25日付で政策金利を100bp引き上げる決定を行うなど一段の金融引き締めを迫られている。

会合後に公表した声明文では、米FRBの利上げの念頭に「国内の金利及び為替に圧力を掛けている」との認識を示した上で、先行きの政策対応について「適時適切な管理に向けて内外市場を注視し、流動性ニーズに応えるべく短期市場と外為市場に介入する用意がある」との考えを示した。足下の外貨準備高は月平均輸入額の3ヶ月分を上回る水準を維持するも、資金流出に伴うドン安阻止を目的とする為替介入を余儀なくされており、減少ペースが加速するなど国際金融市場の動揺への耐性が損なわれている。今後も米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜が見込まれるなかで同国をはじめとする新興国は『ガマン比べ』、『体力勝負』の状況に追い込まれる可能性は高まっている。

図表2
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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