内外経済ウォッチ『日本~経常赤字国になる条件~』(2022年5月号)

星野 卓也

目次

日本は経常赤字国になるのか?

昨今の原油価格上昇などを受けて、日本の経常赤字国化が懸念されている。日本の経常収支は直接・証券投資から得られる配当金や利子所得を中心とした第一次所得収支が多額の黒字を計上している。2021年の経常収支の内訳をみると、貿易収支が1.8兆円の黒字、サービス収支が▲4.3兆円の赤字、第一次所得収支は20.4兆円の黒字だ。したがって、日本が経常赤字国になるのか?という問いは、原油高や円安による貿易収支の赤字が第一次所得収支の黒字を上回る状態になるのか?という問いに概ね換言することができる。

ドバイ原油120ドルなら経常赤字化に現実味

そこで、経常収支の値が原油価格・為替・インバウンドの3変数の動向によってどう変化するかを検証した。原油価格(ドバイ)が2022年以降それぞれ、80ドル、100ドル、120ドルで推移した場合、ドル円レートが110円、120円、130円で推移した場合でそれぞれ場合分けを行った。また、訪日外客数について「コロナによる渡航制限がない場合の推計値」を求め、それをもとに①2023年以降回復が始まり、2025年に推計値まで達するシナリオ、②2026年の時点でコロナ前(2019年)水準まで回復するシナリオ、③2021年水準のまま回復しないシナリオの3通りの場合分けを行った (資料1)。

訪日外国人数の想定
訪日外国人数の想定

これらを用いて、2022、26年の経常収支をシミュレーションした結果が資料2だ。収支の動向を左右する最も大きな要素は原油価格だ。他方、円安は輸入をはじめ支払額の増加を通じて収支赤字方向に作用する一方、受取額も増加させる。今回の前提のもとでは全体で経常収支の赤字方向に効くとの結果となったが、その影響は輸出や第一次所得収支の増加で幾分相殺され、原油価格の影響ほど大きくはない。

結果に基づくと、原油価格は100ドル程度、為替が120円程度で2022年平均値が収まれば、経常黒字が維持されそうだ。しかし、原油高がもう一段進む―「原油価格120ドル」が定着する場合には、経常収支の赤字も現実味を帯びてくる。先を見据えるとインバウンドの回復も重要だ。回復シナリオでは訪日外客数の増加による旅行収支の黒字拡大が6兆円程度の黒字拡大要因(2026年時点)になる。

エネルギー資源輸入国である日本の経常収支は資源価格の動向に大きく左右される。世界的な地政学リスクの高まりや脱炭素化の流れの中で、資源価格は不安定な状態が続く可能性がある。日本の経常赤字化リスクも金融市場のテーマとしてしばらく注目を集めそうだ。

前提ごとの経常収支のシミュレーション結果
前提ごとの経常収支のシミュレーション結果

星野 卓也

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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