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2022.04.01
新興国経済
ロシア経済
為替
ウクライナ問題
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~ロシアに国際金融市場からの「退出」懸念~』(2022年4月号)
西濵 徹
ロシアによるウクライナへの全面侵攻の開始を受け、欧米諸国はロシアの一部銀行を対象とするSWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除に加え、ロシア中銀を制裁対象に加えるなどロシアに対する経済制裁を一段と強化した。欧米諸国による対ロ制裁の強化発表を受けて、S&Pグローバルはロシアの外貨建長期信用格付を1ノッチ引き下げるとともに、制裁に伴う経済への影響が一段と明らかになれば一段の格下げに動く方針を示した。これにより同社の格付けは『投機的水準』となり、国際金融市場におけるロシアの信用力低下が懸念された。事実、国際金融市場においては『SWIFT排除』とロシア中銀の制裁に伴う『外貨準備の凍結』を嫌気して、通貨ルーブル相場が大幅に調整するなど動揺が広がった。
なお、ロシア中銀は外国人投資家によるロシア資産の売却を懸念して事実上の資本規制を科す動きをみせた。さらに、ルーブル相場の動揺を抑えることを目的に、中銀は政策金利を大幅に引き上げる金融引き締めに動くとともに、国内金融市場の安定に向けて金購入の再開やレポ取引による無制限の資金供給、銀行の為替持ち高の制限緩和に動く方針を決定した。また、中銀と政府はルーブル相場の安定を図ることを目的に、企業に対して外貨建て収入の8割を売却する旨の指示を行うなど、なりふり構わぬ形で信用力の維持に取り組む姿勢をみせている。

しかし、その後はウクライナ情勢を巡る不透明感が高まるとともに、欧米諸国は一段の制裁強化も辞さない姿勢をみせるなどロシア経済を巡る状況は厳しさを増している。さらに、フィッチとムーディーズはともに大幅な格下げを実施するなど主要3機関すべてがロシアの外貨建長期信用格付を『投機的水準』とした。また、株価指数を算出するFTSEラッセルとMSCIはともにすべての指数からロシア株を除外することを発表した。外国人投資家によるロシア資産の売却が避けられなくなるなか、外国人及び外国企業に対するロシア証券の支払い及び譲渡権の制限のほか、ロシア企業の外国人投資家向けの配当支払いも禁止される動きもみられる。
国際金融市場においてはロシア向け債権の損失リスクが高まり、欧州や米国、日本などの金融機関に影響が波及する可能性が懸念される。対外準備資産の動向と対外債務残高の動向をみると、欧米諸国による対ロ経済制裁の強化により外貨準備の大宗が凍結されるなど外貨の資金繰りに懸念が生じる可能性は高まる。原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸出が維持されている上、ロシア国内に保蔵する金のほか、中国など制裁を見送っている国が預かる外貨準備を活用する『籠城戦』を続けると予想されるものの、事態が長期化すれば民間部門におけるデフォルトリスクが高まり、最終的には公的部門のデフォルトも避けられなくなるであろう。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

