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2026.09.15
日本経済
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重要鉱物の対日輸出をほぼ停止する中国
~中国からの製品輸入に頼らざるを得なくなることは回避する必要~
嶌峰 義清
- 要旨
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中国がレアアースなど重要鉱物の軍事品への利用を阻止するとの理由で輸出規制強化策を打ち出したことで、世界的にレアアースの供給が不安定化している。特に対日輸出については今年に入ってからほぼゼロとなるものが目立つ。一方で、レアアースなどを利用した製品の輸出については大きな変化は見られない。
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重要鉱物の輸入が滞れば、今後はこれらの資源を利用した製品の国内生産に支障が生じる恐れが高い。一方で、中国からの輸入に支障が生じていない製品は安価でもあり、今後はそうした製品に需要がシフトする可能性がある。ただし、その場合はより付加価値の高い製品において新たなサプライチェーンリスクが生じると共に、国内生産拠点や生産技術を失うリスクがあり、経済安全保障上看過できない。そうした事態を避けるために、新たな重要鉱物資源供給先の開発や確保、リサイクルシステムの構築、代替資源の開発などに力を注ぐべきだ。
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1. ほぼゼロとなる中国から輸入される重要鉱物
レアアースやレアメタルといった重要鉱物について、中国からの輸入がほぼゼロとなる異常事態が続いている。きっかけの一つは、中国が日本に対して一方的に講じた軍民両用品(デュアルユース)の輸出禁止を打ち出した対日輸出規制強化策だ。これは、個別の企業や団体を対象にして輸出禁止、及び輸出審査の厳格化を打ち出したもので、個別の資源や元素はその対象として明記はされていない。レアアースをはじめとした重要鉱物の多くは軍事用にも民生用にも利用される資源であるため、日本では中国依存度が高い資源については、輸入が大幅に減少するなどして、生産活動に悪影響が出ることが懸念されていた。
それより以前に、中国は世界に向けてこうした輸出規制強化策を打ち出していた。このため、昨年から一部のレアアースなどについては顕著に世界への輸出が抑制され、国際取引価格の急騰を招いていた。そうしたなかで、中国政府は日本に対しては個別に対象企業や団体を明示した形で、輸出規制強化策を“上乗せ”した格好である。
日本よりも細かい分類で資源毎の貿易状況を公開している中国側の貿易統計からは、前述したように一部の資源においては、対日輸出がほぼゼロとなる異常事態が続いていることが確認される(図表1)。

このなかで、すでに昨年から世界向けに輸出が急減している酸化ジスプロシウムは、2025年から対中輸入はほぼゼロとなっている。ジスプロシウムはネオジム磁石に少量添加することで磁石の耐熱性を高め、高温下でも磁力が劣化しないなど性能が飛躍的に向上するため、EV(電気自動車)の駆動モーターや風力発電機などに使用される(その他にも用途は広い)。
このほか、酸化テルビウム、酸化イットリウム、レアメタルである炭化タングステンは、今年に入ってからの対中輸入量がほぼゼロとなった。テルビウムはジスプロシウムと同様に磁石への添加剤としても使用される。また、イットリウムは半導体製造やLEDとして欠かせない。一方、タングステンは切削工具や超硬工具に使用される。日本においては、自動車、半導体製造装置を含めた半導体関連、工作機械関連の業種に欠かせない材料と言える。
中国は、これらの重要鉱物の世界への輸出量を減らしているが、特に日本への輸出減少が目立つ。上記4つの資源について、中国の輸出に占める対日割合を見ると、今年に入ってから対日輸出実績が無い酸化ジスプロシウムと酸化テルビウムはもちろんのこと、酸化イットリウムや炭化タングステンのシェアも急減している(図表2)。このことから、中国はレアアースなどの重要鉱物の輸出規制を強化している中で、特に日本向けには厳しい対応を取っていることが分かる。
中国政府は、民生用途の品目についての輸出は、(規制対象企業以外には)審査を行った上で輸出可能としているが、今年に入ってからの輸出実績が無いことから、審査時間を無制限に取ることで、実質的な輸出停止措置を執っていると言えよう。

2. 製品輸出にはほぼ変化無し
一方で、レアアースなどの重要鉱物を使用した製品については、中国から日本への輸出に大きな変化は確認されていない(図表3)。
例えば、レアアース磁石の対日輸出量は昨年11月をピークに減少傾向を辿っているものの、2024年以降の変動の範囲内にとどまっている。また、EV用の駆動モーター(75kw超)についてはここ数年の平均的な水準での推移が続いている。
いずれも軍事用途での使用も可能な品目ではあるため、民生用利用という証明が必要と考えられる。その点においては、酸化ジスプロシウムなど資源自体と同様だ。しかし、資源と製品とで輸出実績に大きな差が出ているということは、資源輸出については審査に時間がかかる一方で、製品については審査がスムーズに行われていることを意味する。サプライチェーンの川上に位置する資源と、川中に位置する部品などの製品とでは、川下の完成品が民生用か軍事用かを審査する時間に差が生じることは否めないが、資源と製品とでここまでの差が生じるとは考えにくく、中国当局による恣意的なものによる影響と考えざるを得ない。

3. 中間財や完成品の中国依存度が高まることは避けなければならない
こうした状況が続けば、やがてレアアースやレアメタルを使用した製品(部品などの中間財を含む)の国内生産は難しくなる。例えば、EVなどに使用される駆動用モーターの国内生産量は、これまでのところ大きな変化はないものの(図表4)、生産に必要なジスプロシウムなどの在庫がなくなれば、国内生産は困難になる。

原油価格が高止まりしていることもあり、EVなどへの需要は今後一段と高まると見込まれる一方で、資源調達難から国内でモーターの生産が困難になれば、輸入品に切り替えることも検討されるだろう。そうでなくとも、中国がレアアースの世界への供給を絞っているため、中国内外でのレアアース価格には大きな差が生じているとされる。そのため、いずれは中国外から調達したレアアースを使用した製品の生産コストが嵩む一方で、中国産の製品の安さが際立ってくることも考えられる。
原材料の調達難に加え、価格競争における劣後によって国内での生産拠点が淘汰されていけば、レアアースを使用した「製品」においても中国依存度を高める結果となる。一国や一地域への依存度が極端に高くなることは、経済安全保障上のリスクであり、それは今般のイラン問題における原油でも明らかだ。中国については、レアアースの一件でも明らかなように、世界シェアが高いものについては外交上の交渉材料として利用することを厭わない姿勢を見せている。自動車という基幹産業において、サプライチェーンの川中部分で中国依存度が極端に高くなることは、日本にとって重大なリスクであると言えよう。見方を変えれば、川中や川下でのシェアを高めるために、中国政府は資源の輸出を絞る一方で、製品の輸出浸透を図っているとも言える。
こうした事態に陥ることを避けるためには、①南鳥島を含めた新たなレアアース供給拠点の開発・確保、②リサイクルシステムの構築、③代替資源の開発――が必要だ。レアアースやレアメタルといった重要鉱物は、最先端の技術に欠かせない資源であり、中長期的な日本経済の成長維持のカギを握る資源だ。同時に、CO2の削減など環境改善にも必須の資源という側面もある。
昨年4月に中国が重希土類7種への輸出管理強化策を実施して以降、世界はレアアースの確保や代替技術の開発などに躍起になってきた。11月10日には、昨年10月に中国が発表した中国産レアアースのサプライチェーンまでをも含む管理強化策の実行延長期限を迎える。この取り扱い自体は、更なる延長の可否を含め、今後の米中交渉に委ねられることになると予想されるが、レアアースの確保は一段と厳しくなる方向にあると言える。政府は、経済政策の最優先課題の一つとして、関連産業の保護と、中国に依存しないレアアース供給網の確立を進めるべきだ。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

