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2026.09.08
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中国景気は引き続き外需にけん引される展開が続く
~AI・半導体、再エネ、EVのみならず、中国製品に対する需要拡大が影響か~
西濵 徹
- 要旨
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- 中国経済は供給サイド主導の拡大が続く一方、不動産不況の長期化や雇用回復の遅れ、原油高によるエネルギーインフレを背景に、個人消費など内需は力強さを欠く。これを受け、国務院は7月に「消費拡大の5ヵ年計画」を発表した。共産党もインフラ関連財政支出の加速方針を示し、財政部・中銀も合同で内需下支え策を打ち出している。ただし、製造業を中心に雇用環境は厳しく、一連の政策が内需の持続的拡大につながるかは不透明である。
- 8月の輸出は前年比+25.0%と5ヵ月連続で二桁増となり、外需が景気をけん引している。AI・半導体、電気機械、再生可能エネルギー、EVといったハイテク関連などがけん引役となり、ASEAN、インド、アフリカ、中南米、台湾、韓国向け輸出も大幅に増加した。米国向け輸出も高い伸びをみせる。一方で、日本やEU向け輸出は鈍化しており、中国との政治・外交上の「距離感」が輸出の動きに影響している可能性がある。
- 8月の輸入は前年比+28.2%と高い伸びとなったものの、季節調整済み前月比では2ヵ月連続で減少したと試算されるなど頭打ちしている。一般輸入は相対的に弱く、加工組立関連やハイテク、半導体、データ処理機械など輸出・生産活動に関連する輸入が全体を押し上げている。アジア諸国からの部材調達や、ロシア・豪州などからのエネルギー調達も拡大しており、サプライチェーンや資源調達の多様化が進んでいる様子がうかがえる。
- 8月の貿易黒字は1190.9億ドルに拡大し、AI・半導体需要を背景とする輸出好調が対外収支を支えている。これが人民元高圧力となる一方、急速な人民元高は輸出競争力を損なうことが懸念されるため、中銀は基準値設定などを通じて上昇をけん制している。人民元高の動きが加速すれば、中銀のけん制姿勢が強まり、人民元高の動きに一服感が出る可能性もある。
- 目次
【共産党・政府は内需喚起に動くも、一連の対策の効果は依然として未知数】
足元の中国経済は、供給サイドをけん引役にした拡大の動きが続いている。一方で、需要サイドはハイテク関連を中心に外需は堅調に推移しているものの、個人消費をはじめとする内需は力強さを欠く対照的な動きが続いている。背景には、不動産不況の長期化や若年層を中心とする雇用回復の遅れに加え、イラン情勢の悪化を受けた原油高がエネルギーインフレを招いており、実質購買力に下押し圧力をかけていることがある。
こうしたなか、国務院は7月、同国で初めて個人消費に焦点を当てた「消費拡大の5ヵ年計画」を公表した。同計画では、2030年の小売売上高(社会消費品小売総額)の規模を2025年(50.1兆元)に比べて2割増(60兆元前後)に引き上げる方針を掲げた。その実現に向けて、消費構造の高度化や家計所得の引き上げを目指すとした。
さらに、共産党は7月末に開催した中央政治局会議において、景気減速への対応を目的に、インフラ関連を中心とする財政支出の進捗加速を図る方針を示した。これは、足元の内需が力強さを欠く一因に公共投資が低迷していることを踏まえたものである。2026年上半期の国債発行額と歳出は当初計画を下回り、下半期には歳出の拡大余地がある。このため、2026年度予算に計上済みのインフラ投資を対象とする財政支出の加速を通じて景気下支えを図る方針を示したと捉えられる。
財政部・中銀(中国人民銀行)・国家金融監督管理総局は、8月17日付で内需促進を目的とする新たな財政・金融支援策を発表した。具体的には、中小・零細民間企業や消費者向け融資に対する利子補給を拡充する。一連の政策は個人消費を幾分下支えする可能性は見込まれるものの、製造業を中心とする雇用環境は引き続き厳しい状況が続いており(図1)、持続的な内需拡大につながるかは不透明である。

【世界的なAI・半導体需要などが輸出を押し上げる一方、「距離感」が影響する動きも】
前述のように中国景気は外需がけん引役となるなか、8月の輸出額も前年同月比+25.0%と前月(同+23.9%)から伸びが加速しており、5ヵ月連続で二桁%の伸びで推移している。当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も2ヵ月ぶりの拡大に転じるとともに、中期的な基調も拡大基調で推移しており、持ち直しの動きが続くなど景気をけん引している(図2)。このところの金融市場においては、人民元相場の緩やかな上昇が続いており、輸出競争力を阻害することが懸念された。にもかかわらず、輸出は引き続き拡大基調で推移しており、世界的に中国製品に対する需要が旺盛であることを示唆している。

財別では、世界的なAI(人工知能)・半導体関連需要の旺盛さを反映して、ハイテク関連(前年比+56.9%)で高い伸びが続いているほか、電気機械製品関連(同+32.8%)も堅調な推移をみせている。さらに、イラン情勢の悪化を受けた原油・天然ガス価格の上昇が世界的なエネルギーインフレを招くなか、全世界的に再生可能エネルギーに対する需要が高まる動きがみられる。中国メーカーは、太陽光電池や風力発電の分野で世界上位を占めており、これらの需要の旺盛さが関連輸出を押し上げているとみられる。同様に、世界的にEV(電気自動車)の需要が高まるなか、車両のみならず、付属品であるリチウムイオン電池の輸出が拡大していることも、足元のハイテク関連の輸出の旺盛さを下支えしているとみられる。また、世界的にサプライチェーンの混乱が石油製品の需給ひっ迫を招くことが懸念されたなか、石油精製品(前年比+80.5%)の輸出も大幅に上振れする動きがみられる。これら以外でも、玩具(前年比+15.3%)や縫製品(同+12.3%)の輸出額も前年を上回る伸びに転じており、一般的な中国製品に対する需要にも持ち直しの動きがうかがえる。
国・地域別では、米中摩擦の激化のほか、欧州との関係悪化が懸念されるなか、中国当局はこれら以外の新興国向け輸出拡大によりその影響を相殺する姿勢をみせている。ASEAN(東南アジア諸国連合)向け(前年比+30.21%)、インド向け(同+16.89%)のほか、アフリカ向け(同+30.90%)、中南米向け(同+17.49%)は軒並み二桁%を上回る高い伸びで推移している。同様に、台湾向け(前年比+43.74%)や韓国向け(同+49.26%)も高い伸びで推移するなど、世界的なAI・半導体関連需要の旺盛さが輸出を押し上げている。また、ウクライナ戦争も見通しが立たないなか、欧米はロシアへの経済制裁を強化させているが、ロシア向け(前年比+38.66%)は高止まりするなど関係深化が続いている。さらに、米国との関係悪化が懸念されるカナダ向け(前年比+13.52%)も持ち直しの動きが続いている。しかし、米国向け(前年比+34.40%)も高い伸びをみせるなど、9月末の米中首脳会談を前に「管理された米中摩擦」の下で持ち直しの動きをみせている。一方で、関係悪化が懸念される日本向け(前年比+8.24%)やEU(欧州連合)向け(同+6.61%)はともに伸びが鈍化しており、中国との「距離感」が影響している可能性がある。
【ハイテク関連を中心とする中国国内での生産活動が輸入を下支えする展開】
前述のように、足元の内需は力強さを欠く推移をみせているものの、イラン情勢の悪化を受けた原油をはじめとする商品市況の高止まりが輸入額を押し上げる動きがみられる。こうした状況を反映して、8月の輸入額も前年同月比+28.2%と前月(同+27.6%)から加速して輸出額を上回る伸びで推移している。しかし、当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比は2ヵ月連続で減少しており、旺盛に推移する輸出とは対照的な動きをみせている(図3)。米国とイランによる停戦合意を受けて原油高の動きに一服感が出たことを反映して、タイムラグを伴う形で輸入額を下押ししている可能性がある。種類別では、中国国内での需要を反映した一般輸入(前年比+17.1%)は輸入全体を下回る伸びにとどまる一方、加工組立関連の輸入財(同+46.7%)や加工組立分野(同+40.9%)の高止まりが輸入額を押し上げており、輸出の堅調さが輸入を押し上げる構図となっている。

財別では、ハイテク関連輸出の堅調さを反映して、ハイテク関連(前年比+68.7%)の輸入は引き続き旺盛な動きをみせており、電気機械製品関連(同+51.7%)も高い伸びで推移するなど、中国国内における生産活動が活発な動きをみせている様子がうかがえる。また、習近平指導部は半導体やAIチップなどのサプライチェーンで国産化率の引き上げを目指す「自立自強」を目指しており、こうした政策運営を反映して国産化率は着実に向上しているものの、依然として輸入に依存せざるを得ない分野も残り、集積回路関連(前年比+83.6%)やデータ処理機械関連(同+209.1%)も高い伸びで推移している。さらに、これらの生産に必要な銅鉱石(前年比+24.7%)や銅製品(前年比+28.5%)も堅調に推移している。また、エネルギーの安定供給を図るべく石炭火力の稼働率が高まっていることを反映して、石炭(前年比+48.6%)も高い伸びで推移しているほか、価格の高止まりを反映して農薬(同+75.2%)の輸入額も押し上げられている。
国・地域別でも、サプライチェーンの分散化を図っていることを反映して、ASEAN(前年比+35.0%)やインド(同+49.5%)、台湾(同+41.5%)、韓国(同+108.1%)などアジア新興国からの輸入が軒並み高止まりしている。また、イラン情勢の悪化を受けた中東からの供給懸念が高まるなか、エネルギー資源の調達多様化を図っていることを反映して、ロシア(前年比+47.0%)や中南米(同+12.5%)、オーストラリア(同+44.6%)からの輸入も堅調に推移している。さらに、9月末の米中首脳会談を前に一定の関係改善を図っていることを反映して、米国(前年比+17.8%)も底堅い動きをみせている。なお、日本向け輸出額は低迷しているものの、日本からの輸入額(前年比+20.0%)は底堅いなど、中国国内における生産活動が下支え役となる一方、EU(同+0.7%)は鈍化するなど関係悪化の動きが影響している。
【巨額の貿易黒字は人民元高を促すが、中銀による「けん制」が強まる可能性に要注意】
前述のように足元の輸出が旺盛な動きをみせていることを反映して、8月の貿易黒字額は+1190.9億ドルと前月(+1123.4億ドル)から黒字幅が拡大しており、世界的なAI・半導体関連需要の旺盛さが対外収支を下支えしていることが確認された。金融市場においては、米ドル高の動きに一服感が出ていることを反映して、人民元相場は緩やかに上昇する展開が続いており(図4)、巨額の貿易黒字は先行きも人民元高圧力を促す要因となることが予想される。しかし、急速な人民元高は輸出競争力の低下を通じて外需の足を引っ張ることが懸念される。このため、中銀は基準値の設定などを通じて一方向的な人民元高をけん制する姿勢をみせている。このため、人民元高が急激に進行する局面においては、中銀によるけん制の動きが一段と強まる可能性があり、そうした政策対応によって人民元相場が揺さぶられることには注意が必要であろう。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

