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- ハンガリーで急速に進む「脱オルバン」改革
- 要旨
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EUとの対立を繰り返したオルバン政権が倒れ、マジャル首相が率いる親EU政権が誕生したハンガリーでは、新政権の発足から僅か数ヶ月で急速な改革が進められている。議会での圧倒的多数を追い風に、前政権下で進んだ司法やメディアへの国家介入を修正し、法の支配の重視、汚職対策、EUとの関係修復、ロシア依存の縮小などを進めている。7月には、大統領の任期前退任、憲法裁判所判事の定年制、首相や国会議員の任期制限、国家資産の監視強化などを盛り込んだ憲法改正が可決した。これを受け、11日には前政権の司法制度改革に反対し、憲法裁判所の長官を罷免されたバカ氏が新たな大統領に選出された。
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新政権が改革を急ぐのは、年末に新規の財政支援が打ち切られる復興基金の改革条件の達成期限が8月末に、資金要請の期限が9月末に迫っていることがある。前政権が提出した復興計画の下で財政資金を受け取るには、汚職対策、EU資金の保護措置、司法の独立性確保など27項目にわたる「スーパー・マイルストーン」の全てを達成する必要があった。新政権は全27項目の一律達成が必要な形の計画を改め、特に重要な24項目の達成で約100億ユーロの資金を一括で受け取れる新たな復興計画を提出し、EU側がこれを承認した。改革条件の多くは達成が視野に入りつつあり、復興基金の資金を受け取る可能性が高まっている。
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4月の議会選挙で親EU政権が誕生したハンガリーでは、ティサ(尊重と自由)を率いるマジャル首相の下で、議会での圧倒的多数と世論の支持を追い風に、法の支配の重視、汚職対策、EUとの関係修復、ロシア依存の縮小などが急速に進められている。オルバン前首相の治世下で進んだ司法やメディアへの大々的な国家介入の修正が進められており、政権寄りの報道を繰り返していた公共放送の経営・編集体制の刷新、前政権が設置した治安機関の廃止、汚職やEU資金を監視する欧州検察庁への参加を決定した。
また、7月には基本法(憲法に相当)を改正し、①オルバン前政権下で選出されたショヨク大統領の任期終了(大統領は法律の差し戻しや憲法裁判所の審査を求めることが可能)、②憲法裁判所判事の70歳定年制の復活(旧政権で選出されたオルバン派の判事が退任)、③憲法裁判所による予算や税制関連法に対しる審査権限を強化(政府や議会に対する監視機能の強化)、④最高裁判所や司法行政トップの選出方法変更と任期短縮(政治任用の固定化を回避)、⑤首相や国家議員の任期制限(職業政治家の固定化による権力集中を防止、現職議員には適用されないが、旧与党の古参議員を将来的に排除)、⑥国家資産の回収・保護局を創設(前政権に近い企業や財団への資金の流れを検証・改修)、⑦議会の3分の2以上の賛成が必要となる法律の範囲を縮小(前政権時代に特別な立法を通じて固定化された制度の変更を容易に)、などを決めた。
11日の議会では、オルバン政権下で進められた司法制度改革に反対し、最高裁判所の長官を任期途中で罷免されたバカ氏が新たな大統領に選出された(19日に就任)。バカ氏はオルバン政権下で進んだ社会的・政治的な二極化の解消をハンガリーが直面する最大の課題に挙げ、過去の不正行為の追及や民主的な制度の回復が必要としながらも、そうした政治的変革が“報復”を通じて行われるべきではないと発言している。また、検事総長、憲法裁判所の長官、公共放送のトップや幹部、エネルギー関連の国営企業のトップなど、オルバン政権時代に選出された公職や前政権に近い人物が相次いで辞任ないし近く辞任する。
オルバン前首相が率いるフィデスの関係者からは、新政権による一連の改革が「政治的な粛清」や「ティサによる権力集中」であると批判している。前政権に批判的な市民団体の一部からも、「改革が速すぎる」、「新政権が権力を集中させないか」との懸念の声もある。司法制度改革の内容や大統領の人選からは、こうした不安の声に応える形で、司法による監視を強化させ、権力の集中を難しくしようとする姿勢が確認できる。
新政権にとっての喫緊の課題は、オルバン政権時代に停止されたEU補助金の拠出再開だ。停止中の資金の合計は220億ユーロ程度(結束基金の残額が116億ユーロ、復興基金が104億ユーロ)と、ハンガリーのGDPの約10%に達する。EUからの資金は、低迷する経済立て直しの起爆剤となるほか、ティサが掲げる低所得者向けの所得税率引き下げ、生活必需品のVAT減税、教育・医療・年金制度の拡充などの財源としても期待される。補助金再開には、司法の独立性、汚職対策、公共調達の透明性向上、監査制度の強化、不正監視などの改革達成が条件となる。政権が改革を急ぐのは、このうち2026年末に新規の財政支援が打ち切られる復興基金については、8月末までに定性・定量目標の達成が、9月末までに資金提供を申請する必要があるためだ。
オルバン政権時代にハンガリーが提出した復興計画の下で財政資金を受け取るには、EUの基本価値違反を繰り返すハンガリーに対して特別に課した汚職対策、EU資金の保護措置、司法の独立性確保など27項目にわたる「スーパー・マイルストーン」の全てを達成する必要があった。マジャル政権は全27項目の一律達成が必要な形の計画を改め、特に重要な24項目を支払い申請に必要な条件に組み替えた新たな復興計画を欧州委員会に提出し、EUはこれを7月10日に正式承認した。通常、復興基金からの資金拠出は、改革条件を達成する度に当該国が申請し、分割で支払われるが、プログラムの終了期限が迫っていることもあり、新たな復興計画では、一度の申請で約65億ユーロの補助金と約35億ユーロの融資の全額を受け取る形となっている。政権発足後の急ピッチな改革の取り組みにより、新たな復興計画で設定した改革条件の多くは達成が視野に入ってきている。ハンガリーが復興基金の資金を受け取る可能性が高まっている。
田中 理
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