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- 難航するフランスの予算協議
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フランスで2027年予算協議が難航している。2026年の財政赤字は政府目標を上回る見通しで、財政再建を計画軌道に復帰させるには、約540億ユーロの財政改善措置が必要とされる。しかし、国民議会で過半数を持たないルコルニュ政権が予算を成立させるには、社会党(PS)や国民連合(RN)など野党の協力が不可欠だ。
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2027年春の大統領選挙を控えて社会党との妥協が難しくなるなか、政府はRNに協力を求めて接近している。RNにとっては、予算危機や政治危機の回避に協力することで、政権担当能力をアピールする機会ともなり得る。
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野党への譲歩を優先すれば財政再建策が弱まりかねない一方、財政規律を優先すれば予算成立や政権存続が危うくなる。大統領選を前に解散総選挙という選択肢も政治的に取りにくい。フランスは政治的に成立可能な予算と金融市場の信認を維持できる財政再建を、いかに両立させるかという難題に直面している。
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フランスでは2027年予算を巡る協議が厳しさを増しており、ルコルニュ首相が率いる政権の存続危機が再び浮上している。背景には、財政状況が政府の想定以上に悪化していることがある。2026年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で5.4%程度と、当初目標の5.0%を上回る見通しで、政府の試算によれば、追加の緊縮改善措置を講じない場合、2027年には6.6%程度に達する可能性がある。財政再建が進んでいないのは、成長率の下振れ、金利上昇による利払い負担の増加、防衛費の拡大、干ばつに伴う農家支援の拡大、燃料費高騰に伴う家計支援の拡充などが影響した。ルコルニュ首相は2027年に財政赤字を5.0%に縮小するため、歳出の自然増を抑制するなどを含め、約540億ユーロの財政改善措置が必要としている。その具体策として、政府歳出や社会保障・医療費の抑制、年金給付の削減などを検討している。
マクロン大統領を支持する中道勢力は、国民議会(下院)の過半数を掌握しておらず、予算成立には野党の協力が必要となる。憲法49条3項に基づく特別な立法手続きを用いれば、議会で予算法案そのものを採決することなく成立させることができるが、その場合、議会は内閣不信任案を提出することができる。不信任案が否決されれば法案は採択されたものと見做され、可決されれば内閣は総辞職する。バルニエ政権(当時)は2024年末、憲法49条3項を用いて社会保障関連予算の成立を目指したが、内閣不信任案が可決され、辞任に追い込まれた。続くバイル―政権(当時)は2025年秋、予算審議を待たず、自らの進退をかけて財政再建の必要性を信任投票に諮る政治的な賭けに出たが、信任を得られずに辞任した。
その後に誕生したルコルニュ政権は当初、49条3項を使わずに予算を成立させる方針を示していたが、野党との合意形成が進まず、予算未成立のまま越年したために方針を転換した。結局、マクロン大統領の目玉政策の1つである年金改革の停止などを条件に、穏健左派の野党・社会党(PS)の協力を取り付け、49条3項を用いた予算成立と政権存続に漕ぎ着けた。
ルコルニュ首相は今回も49条3項を使わずに予算を成立させる方針を示しているが、野党の協力を取り付けることは容易ではない。来年4月に大統領選挙が迫るなか、政権延命につながる予算成立に社会党が協力する政治的なコストが高まっているためだ。フランスは主要先進国の中でも税・社会保障負担が重い国として知られている。富裕層や大企業への課税強化に踏み切れば、社会党との妥協の余地が生まれる一方、企業競争力への影響や国外流出が懸念されるほか、与党勢力が大統領選挙を前にビジネス界の反発を招く可能性がある。
そのため、ルコルニュ首相は予算成立に向けて、極右政党・国民連合(RN)との妥協も模索している。RNは、①国の運営経費や政府機関の歳出を削減する、②外国人に支給される社会給付の一部を制限する、③EU予算へのフランスの拠出を削減する、④再生可能エネルギーへの補助金を削減する―ことを求めている。ルコルニュ首相はこうした要求に部分的にせよ応じる構えをみせている。EU予算への拠出削減そのものには言及していないが、EUが米大手プラットフォーマーに科した制裁金を加盟国に還元するように提案している。
RNにとっては、政府から政策面で一定の譲歩を引き出したうえで予算危機の回避に協力すれば、来年の大統領選挙を前に政権担当能力をアピールする材料となり得る。また、予算未成立やそれに伴う金融市場の混乱を招いたとの批判を避けたいとの政治的な思惑も考えられる。このため、予算案そのものに積極的に賛成しなくても、内閣不信任案に加わらず、ルコルニュ政権の存続を事実上容認する余地がある。但し、RNは政府が年金財政の悪化を食い止めるために検討している年金給付の物価スライド制の停止に強く反対しており、こうした措置が盛り込まれた場合には予算に反対する姿勢を示している。
今後のシナリオとしては、①RNの協力で予算を成立させ、ルコルニュ政権が続投する、②社会党の再協力で予算を成立させ、ルコルニュ政権が続投する、③RNや社会党の協力取り付けに失敗し、内閣不信任案が可決され、ルコルニュ政権が退陣する、④予算が成立しないまま越年し、税金徴収や最低限の政府歳出を可能にする特別法を成立させる―ことが考えられる。①と②の場合、政権の安定性が高まるものの、野党への譲歩内容次第では、5%の赤字目標達成に向けた財政再建の実現可能性が疑われ、財政再建の信頼性が低下する恐れがある。特に①の場合、RNは政府から政策面の譲歩を引き出すだけでなく、予算危機や政治危機を回避するために責任ある対応を取ったとアピールすることができる。RN出身大統領の誕生をためらう有権者の不安を弱め、RNに有利に作用する可能性がある。③の場合、マクロン大統領は新たな首相を任命することになるが、議会の解散・総選挙は回避される公算が大きい。フランスの憲法では、国民議会選挙から1年間は議会を解散することができない。大統領選挙前に解散・総選挙を実施すれば、新大統領が就任直後に国民議会を解散し、大統領選での勝利の勢いを利用して議会基盤を固めることができなくなる。大統領選挙で勝利した政治勢力にとって、新大統領就任後に総選挙を行う選択肢を残しておくことには大きな意味がある。④の場合、特別法によって税収を確保し、政府機能を維持することは可能だが、これはあくまで暫定的な措置であり、新たな歳出削減や税制改正など本格的な財政再建策を実施することは難しい。大統領選挙の日程を考えると、特別法による暫定的な財政運営が選挙後まで続く可能性もある。
フランスの予算問題の根底には、財政再建の必要性が高まる一方、それを実行するための安定した議会の多数派が存在しないという構造的な問題がある。2024年の解散総選挙以降、バルニエ・バイル―政権が財政再建を巡る議会対立によって相次いで退陣し、ルコルニュ政権も社会党への譲歩によって2026年予算をどうにか成立させた。
2027年の予算審議でも同じ問題が繰り返されている。社会党やRNの協力を得るために譲歩すれば財政再建が進まなくなる恐れがある一方、財政再建を優先すれば予算成立や政権存続が難しくなる。しかも、大統領選挙を目前に控え、解散総選挙という選択肢も政治的には取りにくい。予算が成立せず特別法による暫定的な財政運営が長期化すれば、財政再建そのものがさらに先送りされる可能性もある。フランスは政治的に受け入れ可能な予算と、金融市場の信任を確保できる財政再建をいかに両立するかという難題に直面している。
田中 理
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