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- 米国:AI関連投資の名実乖離
- 要旨
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- 米国の4~6月期実質GDPでは個人消費と設備投資が堅調に推移した。設備投資はAI関連が高水準ながら減速した一方、IT以外の機械や輸送機器が回復するなど、幅広い項目で堅調に推移した。
- 設備投資のすそ野拡大の背景として、設備投資減税や関税政策の不確実性後退、金利先高観の浮上による投資意欲の高まりなどを指摘できる。ただ、幅広い設備投資の拡大はFRBの利上げ議論を促す懸念がある。
- AI関連投資は名目ベースで高水準を維持する一方、実質ベースでは価格上昇を背景に伸びが鈍化している。なお、半導体関連銘柄の株価動向を左右するのは、実質投資額ではなく名目の収益環境だ。ただし、実質ベースのAI関連投資の鈍化が続けば、価格低下を通じて名目ベースのAI関連投資や半導体企業の収益にも波及するリスクがある。
米国の2026年4~6月期における実質GDP成長率は前期比年率+1.5%(1~3月期:+2.1%)と前期から減速した。内訳をみると、個人消費は+3.2%(+0.5%)と同期間におけるガソリン高にもかかわらず、減税による税還付やワールドカップ特需が消費を押し上げた。また、設備投資も+8.4%(+10.6%)と底堅く推移した。一方、控除項目である輸入は+11.5%(+11.8%)と資本財や消費財など幅広い品目で増加し、表面上の成長率を抑制した。
AI以外の設備投資に回復の兆し
近年の設備投資をけん引してきたのは情報処理機器やソフトウェア、すなわち「AI関連投資」であった。しかし、2026年4~6月期GDPではハードウェア投資である情報処理機器が減速している。設備投資の寄与度(前期比年率)をみると、情報処理機器は+1.4%pt(1~3月期:+5.7%pt)に留まった一方、これを除く機械・機器投資が+4.5%pt(+0.3%pt)と加速し全体を押し上げた。すなわち、AI以外の生産設備や輸送機器への投資が旺盛であった(図表1)。
AI以外の設備投資が拡大した背景には複数の要因が考えられる。まず、2025年7月に成立した減税法案(OBBBA)では100%ボーナス償却が復活するなど設備投資への支援策が盛り込まれており、26年に入りこうした効果が本格化し始めた可能性がある。また、2025年における貿易政策の不確実性は設備投資マインドへの悪化要因であった一方、26年2月にはIEEPA関税に違憲判決が下されるなど、トランプ関税の過激化に司法の歯止めがかかるとの見方が強まった。加えて、2月末以降の米国とイランの戦争勃発はインフレ高騰懸念と金利の先高観を生じさせ、景気後退のリスクが小さいならば、企業が設備投資に踏み切る動機となったかもしれない(注1)。
こうした設備投資の押上げ要因は当面持続する可能性が高い。機械設備投資に先行する傾向があるコア資本財受注は4~6月期が前期比+4.0%(1~3月期:+2.8%)と加速している(図表2)。

AI関連投資は名実乖離
情報処理機器とソフトウェアから構成されるAI関連投資は前期から減速した。特に4~6月期では情報処理機器の名目投資額が高い伸びを続けたのに対して、実質投資額の伸びが鈍っている(図表3)。こうした名実乖離を生じさせるのは半導体メモリを中心とした価格上昇だ(図表4)。需要急増を背景にデータセンター投資の単価が高騰するなか、サーバー導入台数といった実質ベースの投資は一服しつつある可能性がある。
もちろん、AI関連投資は近年の大幅な伸びにもかかわらずプラス成長を保っている。伸びが鈍っているとはいえ、AI関連投資が高水準にあることに変化はない。また、これは2026年4~6月期における一次速報の結果にすぎず、今後の改定における実質投資額の上方修正、或いは年後半の再加速の可能性は否定できず、4~6月期の傾向が先行きも持続するかが注目される。
金融市場への意味合い
仮にこうした傾向が持続する場合、これは金融市場に二つの意味合いを持つだろう。
まず、AI関連以外の投資が堅調を保つのであれば、FRBの利上げ議論を活発化させる可能性がある。従来ソフトウェアなどの無形資産投資は金利感応度が低く、利上げはAI投資よりも伝統的な投資対象である機械や構造物の投資を抑制する懸念があった(例えばDavid and Gourio[2023])。一方、幅広い設備投資が堅調に推移するのであれば、FRBは利上げによって景気とインフレが過熱するリスクを抑制できる可能性がある。なお、筆者はこうした利上げを求める声が拡がったとしても、労働市場の過熱感が薄く賃金インフレが生じにくいことを踏まえると、年内は政策金利の据え置きを予想する。
次に、半導体やAI関連銘柄の株価動向を巡っては、実質ベースの投資額よりも、あくまで名目ベースの収益状況が重要となる。ただ、実質的な需要(数量ベース)が一服するのであれば、半導体メモリ等の価格上昇も徐々に鎮静化する可能性が高く、将来的には名目ベースの需要も減速するとみられる。筆者は中長期的なAI普及が持続すると考える一方、半導体需要のスーパーサイクル論には慎重であり、従来のシリコンサイクルに基づき、2026年後半から27年にかけて半導体市場が短期的に調整するリスクに警戒が必要と考える(図表5;詳細は2025年11月14日付け「実体経済から見たAIバブルの検証」参照)。

【注釈】
- 輸送機器への設備投資を巡っては、2025年半ばにかけて高関税(自動車関税)による価格上昇を見据えた駆け込み需要、その後に反動減がみられており、こうした関税によるかく乱が一巡した可能性がある。
前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

