米国:個人消費・設備投資が上方修正 (26年4-6月期GDP改定値)

~強い内需とインフレ高止まりが同居、FRBの高金利政策の長期化で下振れリスクも~

桂畑 誠治

要旨
  • 実質GDP成長率は前期比年率+1.5%(1次推計と同水準)と、1-3月期の+2.1%から減速した。ただし、純輸出と在庫投資による押し下げ分を除いた実質国内最終需要は+3.3%に上方修正され、内需の強さが鮮明となった。上方修正の主因は、個人消費(+3.4%)と設備投資(+8.5%)である。一方で、住宅投資(+1.3%)や政府支出(▲1.0%)が下方修正され、純輸出・在庫投資のマイナス寄与度も拡大した。

  • 堅調な雇用やW杯特需に支えられたサービス消費、ならびに産業用・輸送用機器の投資拡大が内需を牽引した。一方で、PCEデフレーター関連指標は上方修正され、インフレの根強さが顕著となった。

  • 内需の基調は底堅いものの、インフレ高止まりに伴うFRBの高金利長期化が、今後の消費・投資に対する下振れリスクとして懸念される。

目次

1. 4-6月期の実質民間需要・国内最終需要が上方修正

2026年4-6月期の米国実質GDP成長率(2次推計)は、前期比年率+1.5%(1次推計:同+1.5%)となり、市場予想(Bloomberg集計)と一致した。需要項目別では、住宅投資が同+1.3%(1次推計:同+1.5%)と下方修正された一方、個人消費が同+3.4%(同+3.2%)、設備投資が同+8.5%(同+8.4%)へとそれぞれ上方改定された。この結果、実質民間国内最終需要は同+4.2%(同+3.9%)へと上方修正された。政府支出は同▲1.0%(同▲0.8%)と下方修正されたものの、これらを合わせた実質国内最終需要は同+3.3%(同+3.1%)へと上方改定された。一方で、純輸出の寄与度が同▲1.14%ポイント(1次推計:同▲1.01%ポイント)、在庫投資の寄与度が同▲0.72%ポイント(1次推計:同▲0.67%ポイント)へとそれぞれ下方修正され、成長率全体を押し下げたことで、GDP改定値は1次推計と同水準(改定なし)にとどまった。なお、GDPデフレーターやPCEデフレーターは上方修正され、インフレ圧力の根強さが意識される結果となった。

2. 4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.5%に減速も、国内需要は大幅加速

4-6月期の米国実質GDP成長率(2次推計)は前期比年率+1.5%と、1-3月期の同+2.1%から減速した(前年同期比も+2.1%と1-3月期の+2.7%から鈍化)。しかし、成長の中身をみると、実質民間国内最終需要が前期比年率+4.2%(1-3月期:同+1.7%)、実質国内最終需要が同+3.3%(同+2.2%)と大幅に加速しており、米国経済の国内需要は力強さを増している。

図表
図表

3. 設備投資は高水準を維持、個人消費はサービス主導で加速

需要項目別では、設備投資が前期比年率+8.5%(1-3月期:同+10.6%)へと減速しながらも高い伸びを維持した。内訳をみると、商業ビル・オフィスなどの非住宅構築物投資は高金利に伴う着工遅延により同▲1.8%(同▲4.7%)と減少幅を縮小したもののマイナス圏が続いたほか、知的財産が同+8.8%(同+13.8%)、情報関連機器が同+9.7%(同+30.9%)と前四半期の急増からの反動もありそれぞれ減速した。AI関連投資は高水準を維持しているものの、前四半期からの反動や供給制約等により情報関連機器などの伸び率が鈍化した。一方、製造業の国内回帰や拠点新設に伴って産業用機器が同+27.7%(同+4.7%)と加速し、フリート需要や供給制約の緩和によって輸送用機器も同+27.0%(同▲10.7%)とプラスに転じ、全体を力強く押し上げた。

一方、個人消費は同+3.4%に強まり、1-3月期の同+0.5%から加速した。品目別では、インフレ率の落ち着きや値引き・セール等による実質購買力の維持を背景に、自動車、家具などの耐久財や、食品・衣服などの非耐久財が加速した。さらに、堅調な雇用と実質賃金の増加に支えられ、医療、余暇、飲食・宿泊、輸送、金融・保険などの伸びが寄与してサービス消費が大幅に拡大した。なお、6月中旬に開幕したサッカー北米W杯に伴うチケット販売や外食・宿泊・各種レジャーなどでのW杯特需も、サービス消費を一時的に押し上げる要因となった。

また、住宅投資は長期金利の高止まりや建設業者のマインド悪化などが続くなかでも、前四半期までの急速な落ち込みからの反動や在庫住宅不足により、同+1.3%(1-3月期:同▲7.8%)と6四半期ぶりにプラスに転じた。

これらの結果、実質民間国内最終需要は同+4.2%(1-3月期:同+1.7%)へと大幅な加速を記録した。他方で、歳出予算の執行遅延や政府機関の再開に伴う過剰支出の一巡により政府支出が同▲1.0%(同+4.4%)とマイナスに転じたものの、これらを合わせた実質国内最終需要は同+3.3%(同+2.2%)と大幅に加速した。

一方、成長率の押し下げ要因となったのは純輸出と在庫投資である。純輸出寄与度は、内需の強さを背景とした輸入急増やドル高・海外経済の減速による輸出鈍化から同▲1.14%ポイント(1-3月期:同▲0.37%ポイント)へ悪化した。在庫投資寄与度も同▲0.72%ポイント(同+0.23%ポイント)とマイナス転換し、両者あわせて成長率を1.86%ポイント押し下げた。

図表
図表

4. 労働市場の安定化も根強いインフレ圧力

労働市場では、同期の民間雇用者数が月平均7.7万人増と緩やかな増加にとどまったが、失業率は4.3%と低い水準にとどまっており、労働需給の均衡が続いた。

一方、インフレ環境では、4-6月期のPCE(個人消費支出)デフレーターが前期比年率+5.3%(1次推計より上方修正/前四半期:+4.6%)とエネルギーや食品の動きを映してさらに伸びが拡大した。コアPCEデフレーターも前期比年率+3.6%(1次推計より上方修正/前四半期:+4.4%)と鈍化したものの高止まりしている。前年同期比で見るとPCEデフレーターが+3.9%(1次推計より上方修正)、コアPCEデフレーターが+3.4%(1次推計より上方修正)と、ともに1-3月期(いずれも+3.1%)から加速しており、インフレの粘り強さが顕著である。

図表
図表

5. 経済成長の基調は底堅いものの、FRBの高金利長期化による下振れリスクも

米国の経済成長の基調を3四半期移動平均でとらえると、4-6月期の実質GDPは前期比年率+1.4%(前四半期:同+2.3%)と減速傾向にある。しかし、純輸出や在庫といったボラティリティの大きい要因の影響を除いた実質国内最終需要の移動平均は同+2.0%(同+1.8%)へと加速しており、堅調な個人消費を主因として内需の底堅さは維持されている。ただし、根強いインフレ圧力を受けてFRBが高金利政策を長期化させるとみられ、今後は引き締め政策の累積的効果による個人消費への負荷や民間投資への抑制圧力による下振れリスクを注視する必要がある。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

桂畑 誠治


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ