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2026.06.16
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RBAは4会合ぶりの金利据え置きも、追加利上げを排除せず
~当面は様子見の可能性も「タカ派」姿勢を強調、豪ドル相場はどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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オーストラリア準備銀行(RBA)は6月の定例会合で、政策金利を4.35%に据え置くことを決定した。RBAは2月以降3会合連続で利上げを実施したが、今回は4会合ぶりに据え置きに転じた。直近4月のインフレ率は前年同月比+4.2%と目標レンジ(2〜3%)を依然上回るものの、燃料税引き下げ効果もあり前月(同+4.6%)から鈍化している。一方、コアインフレ率は前月からわずかに加速しており、物価上昇圧力の根強さが示唆されている。
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その一方、利上げの副作用は実体経済に現れはじめており、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+1.10%と前期(同+3.54%)から鈍化した。失業率も4月に4.5%と4年半ぶりの高水準に達しており、大都市部を中心に雇用環境の急速な悪化が懸念される。不動産市況も5月には全土で下落に転じており、先行きの物価押し下げ要因となる可能性がある。こうした状況を受け、金融市場ではRBAが様子見姿勢へ転換するとの見方が強まっていた。
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会合後の声明文では、据え置き決定は全会一致としつつ「インフレ率は依然高過ぎる」との認識を示し、過去3回の利上げ効果や原油供給の混乱による影響を見定めるための措置と位置づけた。また、追加利上げの可能性を排除せず、タカ派姿勢を堅持する意向を明確にした。ブロック総裁も会見で「必要であれば追加引き締めを排除しない」と述べるなど、その発言についても全体としてタカ派的なトーンを維持した。
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RBAのタカ派姿勢の再確認は豪ドルを下支えする要因となる一方、中東情勢の緩和に伴う原油価格の調整、および米国経済の堅調さによるFRBのハト派転換の遅れも見込まれる。当面の豪ドル相場については横ばい圏での推移が続くと予想される。
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【物価は高止まりの一方、断続的な利上げ実施による影響も】
オーストラリア準備銀行(RBA)は、6月15~16日の日程で開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるキャッシュレートを4.35%に据え置くことを決定した(図1)。RBAは、2月の定例会合において2年3ヶ月ぶりの利上げを実施して以降、5月の定例会合まで3会合連続の利上げを実施するなど、引き締め姿勢を強めてきた。
背景には、2025年後半以降のインフレ率が加速しており、RBAが定める目標(2~3%)レンジの上限を上回る伸びで推移するなど、インフレ圧力が高まる状況に直面したことがある。直近4月のインフレ率は前年同月比+4.2%と引き続き目標レンジの上限を上回るものの、前月(同+4.6%)から鈍化した(図1)。中東情勢の緊迫化を受けた原油高などによる物価押し上げの影響を軽減すべく、政府が燃料税の引き下げに動いた効果が現われている。その一方、同国がコアインフレ率とするトリム平均値(刈り込み平均値)は前年同月比+3.4%と前月(同+3.3%)からわずかに伸びが加速しており、財・サービス全般で価格上昇が確認されるなど、インフレ圧力の根強さが示唆される。

足元ではRBAによる断続的な利上げ実施の「副作用」も顕在化しつつある。1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+1.10%と前期(同+3.54%)から拡大ペースが鈍化するなど、景気の勢いに陰りが出ている(注 )。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率は+2.5%と前期(同+2.6%)からわずかに鈍化しており、持ち直しの動きが続いた流れに一服感が出ている。さらに、堅調な景気を支えるとともに、物価上昇圧力の一因となってきた雇用環境にも変化の兆しが出ている。4月の失業率は4.5%と4年半ぶりの高水準になるとともに、非正規雇用のみならず、正規雇用も悪化する動きが確認されている。地域ごとのばらつきはみられるものの、これまで雇用拡大をけん引してきた大都市部で軒並み雇用が減少するなど、雇用環境が急速に悪化している可能性がある。物価上昇の一因である不動産市況も5月は全土レベルで下落に転じており(図2)、先行きの物価動向が変化する可能性も高まっている。よって、金融市場ではRBAが様子見姿勢に転じるとの見方が強まっていた。

【利上げの効果見定めへ様子見姿勢も、基調は「タカ派」を維持】
会合後に公表された声明文では、今回の判断について「全会一致であった」としており、過去3回の断続的な利上げの効果を見定めるべく様子見姿勢に転じた様子がうかがえる。物価動向について「最新データによれば、インフレ率、コアインフレ率ともに高過ぎる」としたうえで、「エネルギーや多くの商品市況は高止まりしており、企業部門のなかにさらなる価格引き上げの兆候がみられ、短期的なインフレ期待も高止まりしている」との認識を示した。
その一方、金融市場について「過去3回の利上げを受けて引き締まっている」との見方を示し、「金利や為替が上昇している」ものの「企業部門の投資の堅調さを反映して、信用供与は円滑に行われている」とした。景気や物価の見通しについて「依然として不確実性が高い」とし、「物価は5月会合時点の予想より高く、景気は下振れする可能性は十分に考えられる」とした。また、「世界的な原油の供給問題は解決に時間を要するため、世界のエネルギー価格とインフレに上昇圧力をかけ続ける」ほか、「不確実な状況が長期化すれば、主要相手国のみならず、オーストラリアの景気に下押し圧力がかかる可能性がある」との見通しを示した。
足元の物価動向について「世界的な原油供給の混乱が物価に影響を与えている」、「燃料価格の上昇がインフレを直接押し上げるとともに、財・サービス物価に波及する兆しがみられる」として、「当面高水準での推移が見込まれる」、「供給能力のひっ迫を反映して今年初旬に確認された高インフレに上乗せされる」との見通しを示した。
政策運営について「原油価格上昇の影響が一巡した後にインフレが定着しないよう注力している」としたうえで、「その実現には需要の抑制や供給能力への圧力緩和を通じてインフレ率を目標に戻す必要がある」との認識を示した。そして、「過去3回の利上げにより金融情勢は引き締まっており、実体経済も想定通り減速の兆しがみられる」としつつ、今回の決定について「インフレ率は依然高過ぎるため、過去の利上げの効果や原油供給の混乱による影響を見定めるべく、金利を据え置くことが適切と評価した」とした。先行きの政策運営については「データと見通し、リスク評価を注視しつつ、世界経済や金融市場の動向、内需、物価、労働市場の見通しに細心の注意を払う」と過去3回と同じ文言を掲載している。そのうえで、政策運営について前回同様に「情勢変化に対応できる態勢は整っている」と述べ、当面は様子見姿勢を継続する可能性を示しつつ、「物価安定と完全雇用の実現に向けて必要な措置を講じる」として、タカ派姿勢を維持する意向を示したと解釈できる。
会合後にオンライン会見に臨んだRBAのブロック総裁は、足元の経済状況について「データは予想通りの状況にある」との認識を示したうえで、「中東和平に関する話は喜ばしい」としつつ「必要であれば追加引き締めの可能性を排除しない」との考えを示した。頭打ちの兆しが出ている不動産市場について「経済にとってプラスになるか否かを判断するには時期尚早」との見方を示している。また、景気動向について「当面は景気後退に陥るとの予想はしていない」としたうえで、「インフレ抑制には需要抑制が必要」、「経済が想定通りの成長を実現するには物価の低位安定が必要」との考えを示した。
今回会合での議論について「利上げは協議しなかった」とし、「インフレに上振れリスクがある」、「月次の物価統計は変動が激しく、さらなる数値が発表されるのを待つ必要がある」とデータ確認を待つ考えを示した。「追加利上げを講じる可能性を排除できない」と追加利上げに含みを持たせるとともに、「現在の原油価格は想定に沿っている」、「4.5%という失業率のもとでも労働市場は依然ややひっ迫していると考えている」と述べるなど、ブロック氏が依然としてタカ派姿勢を堅持している可能性がうかがえる。
【RBAのタカ派堅持で豪ドル相場はどうなる?】
金融市場においては、RBAが3会合連続の利上げ実施を決定するなど、タカ派姿勢を強めていることを追い風に、豪ドル相場は強含んできた。しかし、中東情勢の緊迫化を受けて、その後の金融市場においては「有事の米ドル買い」の動きが強まるとともに、RBAのタカ派姿勢が後退するとの見方を反映して、豪ドル相場は一転してやや下落した(図3)。今回、RBAは市場の事前予想通り、4会合ぶりの金利据え置きを決定した一方、先行きも引き締め姿勢を維持するとともに、追加利上げの可能性を排除しないなど、タカ派姿勢をあらためて示した。

中東情勢を巡っては、米国とイランが和平合意を表明するなど変化の兆しが出ており、原油価格は調整している。しかし、当面は事態悪化以前の状況にはほど遠い展開が続くと見込まれ、米国とイランによる協議の行方も見通せず、再び緊張状態となる可能性も残る。RBAがタカ派姿勢をあらためて強調したことは、先行きの豪ドル相場を下支えすると見込まれる一方、米国経済の堅調さはFRB(米連邦準備制度理事会)のハト派転換を妨げることも予想され、当面は横ばい圏での推移が続くであろう。
注1 6月3日付レポート「オーストラリア、景気減速を確認も実態と乖離の可能性」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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