消費者物価指数(東京都区部・2026年6月)

~水道料の攪乱を除けば落ち着いた動きも、夏場以降の食品値上げには警戒~

新家 義貴

図表
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水道基本料金無償化のタイミングのズレが攪乱要因に

本日総務省から発表された26年6月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+1.6%と、前月の+1.3%から上昇率が拡大した。市場予想通りの結果であり意外感はない。

上昇率の拡大幅は0.3%Ptと比較的大きいが、これは東京都で実施された水道基本料金無償化のタイミングが、昨年(CPIへの反映:6~9月)と今年(CPIへの反映:5~8月)で1カ月ずれたことによる影響が大きい。今年は無償化の開始が早かった分、5月は前年比でのマイナス寄与が大きくなった(昨年は5月には実施されていない)が、6月は無償化されたもの同士の比較となるため、前年比でのマイナス寄与が剥落する形となった。水道料の前年比寄与度は5月が▲0.24%Pt、6月がゼロであり、今月のCPIコア上昇率の拡大分の多くがこれで説明可能だ。

なお、水道料以外では、石油製品も押し上げ要因となっているが(前年比寄与度:5月▲0.04% → 6月+0.00%Pt)、これは昨年同時期にガソリン価格の定額引き下げが実施されたことの裏が出た影響が大きい。

水道料を除いたCPIコアを計算すると、5月が前年比+1.6%、6月が+1.7%と、大きな変化はない。また、エネルギー以外のコアコア部分について、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+1.9%(5月:+1.6%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)は前年比+1.1%(5月:+0.7%)とそれぞれ上昇率が明確に拡大したが、これも水道料要因が大きい。水道料の影響を除けば、日銀版コアは5月+1.9%→6月+1.8%、米国型コアは5月+1.0%→6月+1.1%であり、ともにおおむね前月並みという評価でよいだろう。

以上のとおり、5月のCPIコア下振れと6月の上振れは、東京都による水道基本料金無償化のタイミングのズレによるところが大きい。この要因を除けば、概ね横ばい圏で推移しているとみてよいだろう。食料品価格の鈍化を主因として、インフレ率はこのところ落ち着きを見せている。イラン情勢悪化に由来する物価上昇品目も目立っておらず、少なくとも6月段階では物価上昇圧力が明確に強まっているとは言いにくい。

もっとも、これで先行きの上振れリスクが払拭されたわけではない。米国とイランの合意により原油価格が大幅に下落していることは、先行きの物価上昇圧力を弱める材料であるが、これまでの資源価格上昇や調達難の影響は、企業物価段階における価格上昇としてすでに一部で顕在化しており、今後、徐々に川下へ波及してくる可能性がある。7月以降の値上げを表明する食品メーカーも多く、今後は包装資材高等を理由とした食料品値上げの加速に注意が必要だ。また、燃料価格の上昇が電気代、ガス代に遅れて波及することも、先行きの物価上振れ要因となり得る。足元の物価上昇率は落ち着いているものの、先行きについてはなお上方向のリスクを意識しておく必要がある。

水道料要因を除けばコアコアは概ね横ばい圏

電気・ガス代は前月からマイナス寄与が若干縮小した(電気・都市ガス代の前年比寄与度:5月▲0.17%Pt → 6月▲0.13%Pt)。電気・ガス代は前月比では+0.2%と、前月とほぼ同水準だったが、昨年低下していた裏が出たことで前年比でのマイナス寄与が縮小している。なお、政府は7~9月にかけて電気・ガス代補助を復活させることを表明している。これにより8~10月分のCPIは押し下げられることになるだろう((最終版)電気・ガス代補助の物価への影響 ~CPIコアを▲0.5~▲0.6%Pt、前年比で▲0.2~▲0.3%Pt押し下げか~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)。

食料品(生鮮除く)は前年比+3.9%(前年比寄与度:+0.97%Pt)と前月の+4.1%(同寄与度:+1.03%Pt)から鈍化した。食料品(生鮮除く)の前月比は+0.3%と上昇が続いているが、昨年ほどの勢いはみられず、前年比でみれば鈍化傾向にある状況は変わらない。米類が前年比▲6.0%(5月▲1.1%)と2ヵ月連続で低下し、マイナス幅も拡大していることが目につく。また、チョコレートやコーヒー豆・ココアなど、これまで上昇が目立っていた品目も、前年の急上昇の裏が出たことでプラス幅を縮小させている。

エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり日銀版コア、米国型コアとも上昇率が拡大しているが、東京都での水道基本料金無償化の影響が大きく、それを除けばほぼ前月並みである。これまでのトレンドから大きな変化はみられない。品目別では、昨年の値上げの裏が出たことで通信料(携帯電話)のプラス寄与が縮小した一方、診療代などが上昇した。また、食料品価格は鈍化が続いている。

水道料は前年比0.0%、前年比寄与度0.0%Ptと、5月の前年比寄与度:▲0.24%Ptからマイナス寄与が剥落した。前述のとおり、昨年(CPIへの反映:6~9月)と今年(5~8月)で東京都による水道基本料金無償化の実施タイミングが異なっていることで攪乱されている。この先、8月までは前年比ゼロ%が予想されるが、9月にはタイミングのズレが前年比での押し上げに大きく寄与し、10月にはその影響が剥落するとみられる。東京都における水道料要因は、今後も一時的なかく乱要因になる点に注意が必要である。

先行きは上昇率が再び高まる可能性大

先行きについては、物価上昇率が再び高まる可能性が高いとみている。米国とイランの合意を受けて原油価格が大幅に下落していることは、先行きの物価上昇圧力を弱める材料である。コスト上昇圧力が弱まることで価格転嫁が抑制されることに加え、電気・ガス代への将来的な上昇圧力も以前想定されていたよりはかなり抑えられる可能性が高まった。

ただし、これまでの資源価格上昇や調達難の影響は、企業物価段階における価格上昇としてすでに一部で顕在化している。今後、こうしたコスト上昇が徐々に川下へ波及すれば、消費者物価の上振れにつながる可能性がある。特に注意が必要なのは食料品価格であり、包装資材高などを理由とした値上げ表明が足元で増えている状況である。6月までは食料品価格の鈍化が続いているが、7月以降は反転し、その後上昇率を高める可能性があるだろう。夏場の食品値上げラッシュに警戒が必要だ。また、燃料価格の上昇は電気代、ガス代に遅れて波及するため、足元の原油価格下落だけで、秋から冬にかけてのエネルギー価格上昇リスクが消えたとみるのは早計である(電気代はいつ上がるのか ~電気代が秋から冬にかけて大きく上昇する理由。支援延長・拡充が論点に~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)。

こうした点を踏まえると、先行きの物価はなお上方向を意識しておく必要がある。全国ベースのCPIコアは夏~秋にかけて再び前年比+2%を上回り、その後も徐々に上昇率を高める可能性があると予想している。

図表
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新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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