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- 消費減税から給付付き税額控除へのスイッチ問題
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今後、2027年4月から食料品の消費税減税が開始されそうだ。税率は軽減税率8%から1%へと引き下げられる見通しである。これは、レジの改修負担を軽くして迅速な対応ができるようにするためである。
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今までの約束通りであれば、この消費税減税を2年限定で行った後は、その移行期間を経て、2029年4月から給付付き税額控除を実施することになる。しかし、2024年の定額減税が企業に大きな事務負担をかけた教訓もあり、税額控除は行わずに、まずは給付に一本化することになりそうだ。これは極めて賢明な判断だと考えられる。
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8%から1%への消費税減税
政府は、食料品(除く外食)の消費税率を8%から1%へと引き下げる措置を2027年4月からスタートさせることを検討している。もう1つ、給付付き税額控除についても、政府原案では「税額控除+給付金」という組み合わせをやめて、まずは給付金に一本化する方針だという。後述するが、2024年の定額減税の苦い思い出からすれば、企業に多大なる負担をかける点で「税額控除をやめる」という判断を下したのは賢明である。
2024年の混乱をよく知らない人は、税額控除+給付金にこだわっているようだが、このときは企業にとって税額を確定して給与明細に記述する作業が大きな事務負担になった。2024年の帝国データバンクの調査では、73.9%の企業が負担感があると回答していた。税額控除は企業に対して同じような事務負担を強いる可能性がある。特に、中小企業からは相当に大きな不満が噴出するであろう。その場合、与党の政治的求心力を低下させることも懸念される。
実は、当時の定額減税は、給付付き税額控除に極めて似たところがあった。2024年の定額減税は、所得税3万円+住民税1万円の減税を実施するものだった。支払税額が4万円に満たない人には調整給付が加算されて、4万円分の減税が受けられることになった。
おそらく、定額減税の実務をよく知っている政府関係者の多くは、中小企業からの不満が大きかった2024年と同じことを繰り返してはまずいというトラウマが頭をよぎったと思われる。これが給付へ一本化した理由なのだろう。
同様に、消費税減税を実施する際にも、小売事業者にも事務的な混乱が起こることが強く警戒される。消費税減税は家計に恩恵があっても、小売り事業者にはあまりメリットはない。むしろ、改修費用の負担も大きくなる可能性がある。
そうした隠れた声を聞き入れるかたちで、政府は消費税減税を1%分だけ残すことにしたのだろう。この措置でレジの改修負担が軽くなれば、小売事業者からの不満を軽くすることができる。
巷間言われるのは、改修期間を短くすることで、減税実施の機動性を高めることになるという理由だ。仮に、消費税率0%にするのならばレジなどの改修に10か月から1年間の準備期間を要するとされる。もしも、1%であればこれが5~6か月で済むという。おそらく、この措置は単に減税実施のタイミングを早めるだけでなく、1%を先々8%に戻すときにも事業者の負担を軽くすることになる点でも賢明だと考えられる。
筆者の試算では、食料品の消費減税は年間で1世帯当たり4.8万円の減税効果が見込める(2025年の総世帯で計算)。この減税が約束通り2年間で終わるのならば、2年で9.6万円の減税効果となるだろう。
その2年を過ぎた後、2029年4月に再びレジの改修などが必要になるすれば、そのときに、事務負担が大きいから、消費税を引き下げたままでよいではないかという意見が出てくる可能性もある。そうした反論を事前に封じる上でも、レジの改修などの負担感は小さい方がよい。
給付付き税額控除への疑問
そもそも政府が、食料品の消費税減税を実施する理由は、物価上昇に対して家計負担を軽減することが主な目的だとされる。しかし、実際は、衆議院選挙を経て、消費減税への政治的意向が強まったことが主因であり、引くに引けなくなったという事情があると筆者はみている。だから、高市政権は、給付付き税額控除の導入を「本丸」として、その実現までは「つなぎ」として消費税減税で対応すると説明してきた。
この言葉通りならば、2027年4月から2029年3月までの期間では消費税減税が実施されて、2029年4月以降は給付付き税額控除へと切り替わる計画になる。何度も強調するが、消費税減税は時限的な措置なのだ。
ところが、2026年5月に示された給付付き税額控除の政府原案は、消費税減税から移行する段階でいくつかのズレを抱えている。筆者はこの論点を見落としてはいけないと思う。
例えば、給付付き税額控除の対象者は、勤労者に限られる(年収条件はある)。2026年4月の総務省「労働力調査」を使うと、勤労者=就業者数は6,860万人である。ここに勤労収入のない高齢者は含まれていない。すると、消費税減税で恩恵を受けていた勤労者以外の国民(15歳以上人口で4,095万人)は、給付付き税額控除への移行で恩恵がなくなることになる。この点は、落とし穴になると思う。政治的摩擦を生む可能性もある。今後、「給付金を得たいのならば、就労してください」ということを、勤労していない人々に言うことになる。
筆者は、当初はこの給付付き税額控除が、ベーシックインカムの性格を持つと考えていた。しかし、国民会議の議論では、就労制限をしている人がより就労に前向きになるインセンティブに重きが置かれるようになった。海外の給付付き税額控除が就労促進を目的とするので、それに日本も倣えという考え方である。
しかし、そうした視点で給付付き税額控除を実施すると、足切り・除外される人数は膨らんで、消費税減税の打ち切りに不満を抱く可能性がある。
先に勤労者以外の国民は、15歳以上人口で4,095万人と述べたが、実際はもっと多くなる可能性がある。まず、就労している人であっても、就労実績が不安定な一定額以下の所得層は対象には含めなことが、政府の原案からは読み取れる。例えば、勤労収入が年間100万円以下は除外されるのならば、その人数は推定で1,100万人を超える規模になるだろう。
さらに、給付付き税額控除では、一定年収以上の中高所得者を除外する。給付額がゼロになるラインは、年収540万円近辺だと考えられる。例えば、そのラインが年収500万円以上だったと仮定して計算すると、その人数は2,200万人と推定される。
先の足切りされる年収100万円以下1,100万人と合算して3,300万人程度、つまり就業者数6,860万人の約半分にも達すると推計できる。これに非就労者4,095万人(15歳以上の人口のうちの非労働力人口)を合算すると約7,400万人にも膨らむ(3,300万人+4,095万人)。15歳以上人口10,955万人のうち、給付付き税額控除の対象になりそうなのは約3,500万人に対して、対象にならなさそうな人数は約7,400万人になりそうだ。
もしも、2029年4月に消費税減税が2年の期限を終えて、給付付き税額控除に切り替わるとき、給付の恩恵を受けられない約7,500万人は不満を抱く可能性がある。なかなか消費税減税を終了しにくい一因になるのではないだろうか。
経済条件も縛り
筆者は、以前から2年間の消費税減税が、期限で終了できるかどうかが怪しいと考えてきた。やめるにやめられないリスクは付きまとう。
多くの人が考えていない「落とし穴」になりそうなのは、2029年4月の経済状況がわからないのに、2年間で終了する決まりにしている点である。この2年間に世界不況が巡ってこないとは限らない。そのほか、2028年夏には次の参議院選挙が予想される。さらに言えば、今後、2029年4月までの約3年間に、再び衆議院選挙が行われる可能性もゼロではない。そうした国政選挙で、野党が軒並み消費税減税の延長・拡充を公約に掲げれば、与党もその圧力に抗し切れなくなることも考えられる。
そこで最も重要なのは、2029年頃までにインフレ基調が続いているかどうかである。物価上昇率が年3~4%で推移していれば、計画通りに給付付き税額控除への一本化ができず、消費税減税の延長もあり得る。将来、2~3年後に物価安定のシナリオを現実のものにできるかどうかが、隠れた焦点になるだろう。
日銀は、2027・2028年度の物価見通しを2%程度だと予想している。しばしば「予測期間の後半に物価安定の目標を達成する見通し」だと植田総裁も説明している。もしも、これが計画通りに実行されれば、消費税減税を約束通り2029年4月に終了しやすい環境になると考えられる。日銀がきちんと物価安定の目標を守って、インフレ沈静化を果たしてくれないと、財政面でも大きな波乱が生じる可能性がある。
熊野 英生
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

