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2026.03.16
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米国:現状と展望(10-12月期GDP2次推計と26年予測)
~政府機関閉鎖により一時減速も、AI投資と財政政策を背景に景気の基調は堅調~
桂畑 誠治
- 要旨
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- 25年10-12月期の米国実質GDP成長率(2次推計)は、前期比年率+0.7%となり、1次推計の+1.4%から下方改定された。この結果、25年の実質GDP成長率は前年比+2.1%(1次推計:同+2.2%)への下方修正されたものの、潜在成長率(+1.8%)を上回る水準を維持した。
- 25年10-12月期の米国経済を前期からの動きでみると、実質GDP成長率は前期比年率+0.7%(7-9月期:同+4.4%)と大幅に減速した。
- 現在の米国では、トランプ政権による「米国第一主義」に基づいた対外関係の再構築が加速している。関税措置や軍事力の行使、不法移民への厳格な取り締まりが継続されており、国際社会および国内における地政学的・政策的不確実性は極めて高い状態にある。しかし、経済実態は、AI関連投資の急速な拡大などを背景に堅調さを維持し、インフレ率は下げ渋っている。 2月のISM景況指数をみると、製造業は52.4(前月52.6)と2カ月連続で拡大・縮小の分岐点である50を上回った。さらに非製造業(サービス業)は56.1(前月53.8)に達し、2022年7月(56.5)以来の高水準を記録しており、2026年に入ってからも米国の景気が堅調さを維持していることを示している。 労働市場については、2月の非農業部門雇用者数が前月比9.2万人(前月12.6万人増)の減少となった。トランプ政権発足以来、雇用の増減が激しく不安定な推移を見せているが、今回の減少は一時的要因が強い。具体的には、カリフォルニア州での大規模な看護師ストライキ(約3.1万人減)や、記録的な暴風雪・寒波による建設・輸送・外食産業への影響、前月の大幅増に対する反動が重なった結果である。失業率は4.4%(前月4.3%)と僅かに上昇したものの、歴史的な低水準を維持しており、労働需給のタイトさは継続している。 インフレ率は、2月のコアCPI(エネルギー・食品を除く消費者物価)が前月比+0.2%(前月同+0.2%)と伸びが低下したが、前年同月比では+2.5%(同+2.5%)と横這いとなった。ただし、政府機関の閉鎖により、シェアの大きい帰属家賃等のデータ収集が滞った影響で、現在の数値は実態よりも低く算出されている可能性に注意が必要である。 地政学リスクも物価を押し上げている。26年2月末、米国とイスラエルはイランへの軍事作戦を開始し、指導部を殺害した。これに対しイランは、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を強行。さらに、モジタバ・ハメネイ師(殺害された前最高指導者アリー・ハメネイ師の次男)が、専門家会議によって新たな最高指導者に選出された。新たに選ばれたイランの新指導部が前指導部と同様の反米姿勢を継続するとの見方から、戦争の長期化が懸念され、WTI先物は一時1バレル=119.48ドルまで急騰した。足元でも90ドル台で推移している。今後、米軍が制空権を掌握し、海峡の安全航行が早期に回復するとの見方もあるが、不透明感は拭えない。ただし米国にとっては、エネルギー価格高騰が消費を抑制する一方、国内の原油・LNG生産および投資を促進するほか、輸出増加をもたらすため、経済全体には中期的にプラスの効果が若干上回ると試算される。 通商・財政政策に関しては、26年2月、連邦最高裁判所はトランプ政権のIEEPAに基づく関税を違憲と判断。これを受け、政権は通商法122条に基づき10%(将来的に15%)の関税へと切り替えた。この関税措置はGDPを0.2〜0.5%程度押し下げる要因となるが、それを上回る財政政策が継続されている。25年7月に成立した「一つの大きく美しい法律(OBBBA)」は、2017年の減税(TCJA)の延長に加え、さらなる投資減税と歳出削減を組み合わせた大規模な財政調整法である。2026年にはこの減税効果が最大化し、家計の実質所得を押し上げるとともに、設備投資を強力に誘発する。試算では、この財政刺激策が実質GDPを0.4〜0.8ポイント押し上げ、関税によるマイナス影響を相殺すると見込まれる。 以上の要因を勘案すると、26年の米国経済は潜在成長率を上回る成長を遂げ、年間成長率は+2.4%に加速する公算が大きい。個人消費は資産価格の上昇と減税に支えられ、設備投資もIT需要や直接投資の増加により伸びが高まるだろう。輸出面でも、農産物やエネルギーの拡大が期待される。 労働市場では、雇用増こそ月間10万人程度と限定的になるが、失業率は4.5%を下回る水準で安定する。一方、インフレについては、関税の影響が顕在化することで緩やかに上昇する懸念がある。このような成長持続とインフレ下げ渋りの環境下において、FRBは26年を通じて利下げに対して慎重な、タカ派的スタンスを維持すると予想される。
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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